第12話 知らなかった?しっかり愛人がいるんだよ。
「せ、聖女様。」
会見が終わり、頭を深々と下げた二人は、しずしずとその場を後にした。謁見の間を出て長い廊下を腕を組んで歩く2人に、宰相のヒスタ・ミンは、追ってきて、声をかけた。
「わ、私が常に民の笑顔のために、政治に努めていたことは聖女様が一番ご存じであったはずです。王太子を陥れたなどとは・・・王太子が野心を抱き、浪費をして民の恨みを買ったため、反省を求めていただけのことです。」
二人はその言葉を受けて立ち止まった。しかし、振り返って口を開いたのは、彼の期待とは異なり、マクロ・ファジ王太子だった。
「ならばこそ、逆心がないことを示すために、一時、全ての職を辞し、謹慎されるがよかろう。ティ王太子殿下は、聡明で寛大な方、直ぐに貴公の逆心がないことを理解して、復帰を許されるであろう。ところで、疑いのある者については、ティ王太子殿下が指示されることで、我々夫婦の知るところではない。」
「聖女さま。私は、聖女様に聞いておるのだ。割り込まないでいただきたい。」
「無礼だはないかな?私と私の妻に対して。これが知るところになれば、逆心ありと判断されるのが当然となるが、それでいいのか?」
ミンの後方に従う男女から、微かに金属音がした。ふん、と息を吐くと、
「言っておくが、我々2人は盟約を結んだ上で結婚している。私を殺して、彼女を拉致すれば加護を得られると思っているのであれば大間違いだ。彼女は、私の敵に捕らわれる前に死に、君達が得た加護は反転して呪いとなるよ。それで自滅したのであれば、いつでもかかってくればいい。」
「そ、そのとおりです。ミン様。」
「う・・・。」
マクロは、カイナを促して歩き出した。ミンは、二人の襲撃を命じることができなかった。
「君は、彼が君をどう思っているか知らないんじゃないか?彼には、寵愛している愛人がいるよ。ああ、ハアも同様だよ。」
「へ?」
マクロがカイナを裸にして、ベッドの上でしみじみと鑑賞しているのは、その夜、そして、駐アトピ王国デビド王国大使館の貴賓室だった。ここが、一番安全そうだったからだし、その夜を・・・というのには一番近かったからである。
「小柄で金髪、胸が不自然なくらい大きい女。女官長のようなたたずまいで、今日も彼の傍らに、少し離れていたけど、いただろう?3つ年上の。君もよく見かけていたはずだよ。」
「え、うっソー。嘘よね、冗談でしょう?」
彼女は、胸るを隠していた手を、胸から外して彼の肩を掴んで、懇願、それを事実でないと言ってくれというように、揺さぶった。
「今頃さ。」
と彼女の気持ちがわかっていながら、はぐらかすように彼は続けた。
「あの女に、君を奪われた悔しさをぶつけているよ、ベットの上で、全裸になってね。そして、彼女が君よりずっといいと言って口にしているよ。」
彼女は、呆然としていた。
「それに比べて僕は、君しか見ていないよ。君のために、君を助けているんだよ、僕は。彼は、君を利用したい。そんな彼とは、僕は全く違うんだよ、わかるだろ?」
と彼は肩をつかむ彼女の手の手首をつかむと、肩から手を外した。彼女を引き寄せると、唇を重ねた。そのまま抵抗できずに、彼の差し入れられた舌に自分の舌を絡ませて、唾液をすいあうことになってしまった。
「ふあー。」
と長い口付けを一旦終わらせて、息継ぎをした2人。
見つめ合い、にらみ合って、
「君は、人間・亜人そして魔族の平和、共存を願っているんだろ?」
「そ、そうよ。あの2人は願っているわ。」
「親友のジョアには不幸になってほしくない。でも、ナイーブと引き離されても、ヘルと結ばれればジョアは幸せになる、それがすぐわかる、直ぐナイーブのことは忘れる。ナイーブには、辺境のゴブリンとでも結ばれれば十分だ、とおもっているんだろ?」
「そ、そこまでは思っていないわ。」
「それに近いことになってもいいというわけか。それで、両国は幸せになる、皆が共存して平和になる、ジョアも幸福になる。最小限の犠牲で、他全てが幸福になる。そう思っていたのなら、僕に助けを求める必要はなかったろう?君も分かっていたんだ。あの2人が、何時かは対立するってね。両国の、人間と魔族の共存も、2人は望んでいない、いや、自分の統治下でしか望んでいない。そして、ナイーブをヒスタは絶対生かしてはおかないということも。そこまでは、優しい君は許容できない。」
「・・・」
「でも、君は君を好きな二人を見捨てられない。これを何とかしたい、だから僕にたのみこんたんだ。他のこともあるけどね。」
「・・・。」
「でも、もう大丈夫さ。2人は、もう君のことを好きではないからね。まあ、君より好きな愛人のおばさんがいたけどね、少し前までは君を好きだった。でも、明日中にはそうではなくなるよ。」
「はあー?どういうことよ?」
彼女は素っ頓狂な声を上げた。
「これをね、広くばら撒いたんだよ。ここでも、あたらにも、今日あたりには届いていると思うよ。」と言って傍らのカバンから紙束を取り出して、彼女に手渡した。
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