史上最強の極悪貴族に転生後、モブとして生活するため、「あえて原作通り」の悪役ムーブ&超絶無双 かくして世界は救われ、俺は目立つことなく平穏な人生を……って、なんでヒロイン達がこっちに来てんの!?
第一話 破滅フラグをブチ折るために悪役ムーブします
史上最強の極悪貴族に転生後、モブとして生活するため、「あえて原作通り」の悪役ムーブ&超絶無双 かくして世界は救われ、俺は目立つことなく平穏な人生を……って、なんでヒロイン達がこっちに来てんの!?
下等妙人
第一話 破滅フラグをブチ折るために悪役ムーブします
ありえないほどの最強。
しかしながら、その人格はあまりも傍若無人。
そんな彼はまさしく恐怖の象徴であり、ラスボスよりもよほどラスボス感が強い。
ある日の朝。
俺はそんな悪役貴族に転生していたことを自覚したわけだが。
「……どうしたもんかなぁ」
ベッドに腰掛けながら、思考を巡らせていく。
「時系列的には本編の一年前、ではあるけど」
必要な準備というものが思い至らない。
なぜならば。
俺が転生したキャラクター、ゼノス・オールヴェインは既に、ぶっちぎりで強いからだ。
そこに加え、人格は完全にゼノスから俺に変換されているため、慢心から来る油断などは皆無。
まさに隙も弱点もない、完璧な最強キャラクターとして仕上がっている。
「今の俺なら、原作通りの展開には絶対にならない」
原作において、ゼノスは学園生活の最中、主人公を徹底的にイジメ抜いていた。
そんな主人公は紆余曲折の末にチートパワーを覚醒させ、ゼノスを打倒。
その屈辱感からゼノスは精神を暴走させ……
最終的には悪の組織の親玉にまんまと利用され、魔王の器となってしまう。
そして主人公との最終決戦で当たり前の如く敗北し、この世を去る……と、そんなシナリオになっているわけだけど。
「実力で破滅フラグをブチ折るのは容易い。覚醒した主人公に敗北したのは相性が悪いってだけじゃなくて、最後まで舐めプをかましまくったのが主な原因だし」
今の俺が主人公に敗北するということは、決してない。
もしも戦うことがあったなら、初手で全力を出し、一気呵成に潰すといった戦術を選ぶ。
舐めプも慢心も性分じゃないからな。
「あと……敵対組織の
原作において、主人公に敗れたゼノスは彼への執着を極め、それゆえに魔王になることを自ら求めてさえいた。
よって、ゼノスは奸計にハマったというよりかは、実のところ、自分からハマりにいったと見るべきだ。
「俺は魔王になんてなりたくない。だからラスボスの計画に乗っかるようなこともない」
主人公に敗北する要素がなく、魔王にされてしまうという展開も余裕で潰せる。
そういう意味においては、原作における破滅フラグなど取るに足らないわけだが、しかし。
「俺が魔王になることを拒絶した場合……ラスボスが魔王の器になるって形で、シナリオが修正されるよな、絶対」
それを防ぐことは現状、不可能だと思われる。
無論、そのようなことになる前の段階で相手方を暗殺、ということも可能だが……
そんなことをしたなら、俺は謀反人と見なされ、国家そのものを敵に回すことになる。
何せラスボスは、この国の実質的な支配者……宰相、ガイウス・レグナント。
彼をなんの咎もなく殺害したとなれば、我が身の平穏は一瞬にして瓦解するだろう。
「……俺は悪役にもなりたくないし、主人公にもなりたくない。今の立場をある程度維持しつつ、モブみたいに目立たず、平穏で幸せな人生を謳歌出来れば、それが一番いい」
そのためには、どうすべきか?
結論はすぐに出た。
「原作通りの展開。結局のところ、これが一番丸く収まるんじゃないか?」
主人公を追い詰めることで、チートパワーを覚醒させる。
その後、紆余曲折の末に魔王と化したラスボス、ガイウスと主人公達で最終決戦。
俺はそんな展開を端役として傍観し、事が終わったなら、公爵家次期当主としての人生を楽しむ。
うん、いいな。
この方向性で進めていこう。
「となると、俺がすべきことといえば……さっきの発言とは矛盾しているけど……悪役ムーブ、ってことになるよな」
原作において主人公が覚醒したのは、ゼノスが様々な意味で彼を追い詰めたからだ。
つまり、悪役として振る舞わない限り、主人公を覚醒に導くことは出来ない。
さっき口にした通り、俺は主人公にも悪役にもなりたくはないのだけど。
でもまぁ、一時的なものであれば、我慢は出来る。
何もかもが終わった後、悪役ムーブを辞めてしまえば、万事解決ということになるだろう。
何せゼノスはぶっちぎりの最強キャラ。
悪役ムーブによって被るであろうマイナスなど、なんの意味もなさない。
追放されるような展開になろうとも、知ったことかと居座り続けられるし、立場を剥奪されたとしても、自由気ままに振る舞うことが出来る。
ゆえに今、俺にとっての破滅とは、即ちモブとしての将来が脅かされることを指す。
「だからこそ……魔王になったガイウスを打倒するのは、主人公でなくちゃいけない」
もし俺がそんな立場をかっ攫い、魔王との戦いになってしまったなら……
まず以て、掠り傷を負うことになるだろう。
もしかしたら、軽い打撲まで負うハメになるかもしれない。
そんな痛い目を見た後に得られるのは、英雄としての主人公ライフ。
それは表面上、華やかなものだろうけど、しかし、本質的には奴隷の生活となんら変わりがない。
何せ主人公ってのは、負いたくもない責任を背負わされ、やりたくもない仕事を押し付けられるといった、ブラック企業の社畜みたいなモンだからな。
そんなのは前世で間に合っている。
俺は端役として、好き放題に生活したいのだ。
ゆえにこそ、我が身の破滅=主人公化を防ぐために、極悪非道な悪役貴族で在らねばならない。
「そうとなれば……本編開始までの一年間、しっかりと予行演習をしておかないとな」
今日から俺はゼノス・オールヴェインとして、原作通りに悪役ムーブをかましていく。
さしあたり、その初陣となるのは……朝の食事であろう。
「ゼ、ゼノス様、お食事の用意が出来ました」
ちょうどいいことに、メイドが初陣の開幕を告げてきた。
その後、食堂にて親兄弟が揃い、朝食の時間となったわけだが……
誰も、言葉を発しようとはしない。
それも無理からぬことだろう。
俺が転生を自覚するまでの間、ゼノスは家の中で暴君の如く振る舞っていた。
ちょっとでも気に障るような発言をしたなら、親兄弟が相手だろうと暴力を振るう。
もし気に障らなくても、暴力を振るいたいと思ったら、無条件でそうする。
そんなゼノス……つまり、俺のことを畏れて、皆、口を閉ざしているというわけだ。
ゆえに食卓は静寂に包まれていて。
広い室内に響くのは、ナイフとスプーンが食器に当たる音、それだけという状態、だったのだけど……
そのとき。
小さいながらも、確実に。
ぐぅ~、と、腹の虫が音を響かせた。
無論、それは今、食事をしている我々が発したものではない。
壁面にて控えているメイド達。その一人が鳴らしたものだ。
よし。
ここで一つ、最初の悪役ムーブと行くか。
「……おい」
努めて冷ややかな声を放ち、相手方へと目をやる。
俺と同年代の、美しい少女。
頭頂部から猫耳が伸びているので、彼女は亜人種ということになる。
この国では亜人種=被差別民族であり、人権というものがない。
つまり、どんな扱いをされても文句は言えないということだ。
「っ……! は、はい……! な、なんで、ございましょうか……?」
怯えに怯えまくる猫耳メイド。
しかしそれは、彼女だけではない。
従僕達は全員が顔を青くさせ、戦慄いている。
家族一同もまた、これから起こるであろう凄惨な事態を覚悟しているような面立ちとなっていた。
そんな中、俺は。
「この食事……お前はどう思う?」
「え、あ……?」
あまりの恐怖に声も出ないか。
いいぞ、今の俺はまさに、悪役って感じだ。
「俺は……好ましくない。いくら栄養があろうとも、豆は嫌いだ」
「あっ、えっ」
シェフがせっかく作ってくれた料理を拒絶するなど、まさに鬼畜の所業であろう。
我ながら、反吐が出るような発言だが……今の俺は悪役なので、仕方がない。
「こんなクソマズいメシなど、口に入れる価値はない。ゆえに……コレは、お前が食え」
嫌いな食事を他人に押し付ける。
こんな極悪ムーブ、よくも出来るなと、我ながら感心するところだ。
もちろん悪い意味で。
「え、あ、う……」
「どうした? さっさとこちらに来て、席へ就き、食らうがいい。それとも……お前は俺の言うことが聞けないのか?」
「い、いえ、そんな、ことは」
おそるおそるやって来て、言われた通りにする猫耳メイド。
彼女は一口、二口と食事を咀嚼し、そして。
「うっ、うぅ……」
ポロポロと、泣き始めた。
いや、まぁ、狙い通りではあるんだけど。
でもやっぱ、心苦しいな。
他人を傷付けるというのは。
しかしながら、俺はどこまでいっても利己的な男だ。
自らの将来を薔薇色に染め尽くすためにも、彼女にはムチを打たせてもらう。
「クハハハハハハ! どうだ! マズいだろう! こっちの料理はもっと酷いぞ! まるでドブでも食ってるような感覚だ!」
再びシェフの仕事を侮辱したうえ、相手に嫌いなものを押し付ける。
まさに外道。
まさにクズ。
まさに、悪役。
「うっ、うぅ……」
「クハッ! クハハハハハハハッ! もっと食え! そして泣け! 喚け!」
かくして。
ゼノスとしての悪役ムーブ、その初陣は見事に、成功を収めたのだった――
~~~~あとがき~~~~
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