原発復旧酔夢譚2
@syllable31
第1話まえがき・・・1・2号排気筒遠隔ロボット解体
まえがき
福島原発過酷事故の後始末は復旧工事と言って放射能に汚染したがれきの撤去から始まって、4号原子炉のカバーと使用済み燃料撤去が最初に工事完了した。つぎに3号原子炉建屋の使用済み燃料を撤去するための大型ドームカバー設置。そして1号原子炉の使用済み燃料を撤去するために、1号と2号の間にそびえる130mの排気筒の撤去があった。内部はSv単位高線量の汚染である。だから通常のように地上からやぐらを組んでゆき頂部から人力で撤去しようなどとはいかなかった。そんなことしていたら被ばくのために作業員の入れ替えが沢山必要で作業者の数が足りない。そこで遠隔操作でロボット駆使して輪切りにして解体してゆく計画だった。
その計画に瓢タンが放射線管理者として参加していた。
私は瓢タンを飲み屋に誘っては彼の酔夢譚を聞くのが面白かった。
工事スタートのための会議の模様を瓢タンから聞いたところでは次のようだった。
1・2号排気筒解体の計画を所長承認してもらうための安全審査会議が必要だった。
東電担当部課長と関係者15人くらいと元請け企業の計画担当部課長5人が会議にいた。
そして所長が中央に座って聞いている。二時間くらいしてすべて話終わってあとは所長の承認だけだった。すると所長は言った。
「計画はわかった。ところでこの切断中に排気筒が倒れたらどうするの?」
会議は倒れないように切断することを前提としていた。
所長の一言で会議の全員の呼吸が止まった。会議室の空気も瞬間凍結した。
排気筒解体の担当は排気筒を解体すればいい。しかし所長は発電所全体を見ている。当然見ている範囲の広さが異なる。
所長は続けた。
「もし倒れるようなことがあったら、北の1号側に倒れてしまうと次の大掛かりな1号カバー工事ができなくなる。そこで倒れるならば既に工事の終わった南の2号の鉄骨の方に倒れてほしいんだよ。敢えて爆破してでも2号のほうに倒すようなことはできるかな?」
すると室内の空気が溶けた。
みんなは息を再スタートして、できますよと言わんばかりに頭を垂れた。
「できるな、うん、じゃあわかった。承認しましょう。」
そうして1・2号排気筒解体は工事スタートすることになった。
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