第12話

矢野は寧々の浮かれようを心配していた。

主役になるのが早すぎると思った。

このままでは役者というものを舐めてしまうのではないか。

「寧々、もう少しそこは感情を込めて…… 」

「でもいっちゃん、監督は今のままでいいって言ったよ。私のフレッシュな感じがいいんだって。いっちゃんが厳しすぎるんじゃない?」

夜のスタジオで寧々は言った。

「それとも私があんまり早く主役になったんで妬いてるの?いっちゃんは何歳の時だった?主役になったの」

「25歳の時だ」

「母は19歳の時に朝ドラのヒロインに選ばれたよ。いっちゃんが遅いんじゃない?」

「寧々、役者を甘く見るな」

矢野は心配そのものの目で寧々を見ている。

「それにしても主役になるのがこんなに簡単とは思わなかった」

寧々は含み笑いをしている。

「寧々」

「心配しないでよ。いっちゃん。練習はちゃんとするから」

「間の取り方を忘れるな」

矢野はそれだけ言うと、スタジオを出て行っ

た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る