1分間の怖い話

るえりあ

ドアの隙間

引っ越したアパートは築三十年で、古い割に家賃が安かった。


理由は知らない。気にもしなかった。

夜中の二時。ふと目を覚ますと、部屋のドアが僅かに開いている。

寝る前には確かに閉めたはずだ。


気味が悪くなり、ドアを閉めようと立ち上がった。

すると、隙間から白い何かがゆっくりと現れ、ドアを押さえる。

息が止まった。


「誰か、いるの?」


声が震える。

それは白い指だった。


指は静止したままだ。

数秒後、ドアがゆっくりと開き始める。


廊下は暗闇。

しかし目を凝らすと、そこには自分と全く同じ顔をした何かが立っていた。


そいつは無表情でこちらを見つめ、口元だけが奇妙に歪んでいる。

恐怖で動けない。


するとそれは低く笑い声を漏らした。


「やっと、交代できる」


一瞬で目の前が真っ暗になり、意識が途切れた。

目が覚めると朝だった。


すべて夢かとホッとしたのも束の間、鏡に映った自分の顔が歪んで笑っていた。


そして自分は


無表情のまま、鏡の中からそれを見つめていた。

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