海の王国と予言の水晶
まさか からだ
第1話 霧の向こうの王国
海はどこまでも広がり、どこまでも深い。
それは、どこにも行けず、どこへでも行ける場所だった。
主人公・レンは、小さな舟に乗っていた。
夜の海に霧が立ち込め、星も見えない暗闇の中、彼はただ波に揺られながら漂っていた。
どこへ向かうとも知れず、ただ風と潮の流れに身を任せるだけ。
それがどれほどの時間続いたのかは分からない。
しかし、ふと、前方にぼんやりと光が浮かんでいることに気がついた。
――海の向こうに、何かがある。
レンはオールを握りしめ、その光を目指して漕ぎ出した。
光の先にあったのは、霧に包まれた島だった。
白い霧が海から湧き立ち、島全体を覆い隠している。
それでも、波間に浮かぶ建物の影が見えた。高い塔、赤い屋根の家々、そして、中央にそびえ立つ巨大な水晶。
レンは島に上陸した。
人の気配はあった。けれど、誰もいない。
まるで時間が止まったかのような静寂。
「ここは……どこなんだ?」
呟いた声は、霧の中に吸い込まれるだけだった。
島を歩いていると、レンはふいに誰かの視線を感じた。
振り向くと、霧の奥から一人の女性が現れた。
長い銀の髪、深い青の瞳、そして手には小さな水晶を持っている。
「あなたは……?」
レンが尋ねると、彼女は静かに微笑んだ。
「私は『水晶の預言者』。この島の未来を見通す者」
「未来を……?」
「ええ。そして、あなたはこの島の運命を変えるために来た人」
レンは息をのんだ。
この島は何なのか。
自分はなぜここに流れ着いたのか。
そして、「運命を変える」とはどういうことなのか。
答えを知るために、レンは預言者の言葉に耳を傾けることにした。
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