琉球神女伝
MacBee
第一章 神威高の子
第1話 灼熱の島
水平線をはなれた朝日が、今日もまた、
あきれるほど青い空に、雲は、ひとつも見あたらない。
空を見あげて、村人たちは、つくづくとため息をついた。
「……、今日も、いい天気じゃのう」
「ほんにのぅ……」
「まだ、
「そうじゃのぅ……」
朝の光に、ジーワ、ジーワと鳴きだした
一四八一年。
雨乞いの式がおこなわれた。
白衣装に身を包んだノロ(祝女・神女)たちが、天を
雨乞いは、めずらしいことではない。夏のあいだに二度や三度は、あたりまえにあることだった。
神をたたえて、歌い踊ったそのあとは、つどうた村人酒を酌みかわし、また歌い、また踊る。
厳粛な儀式というよりも、なかば夏の行事のようでもあって、いつもなら、しきたりのとおり雨をたのめば、天はすぐに聞きとどけてくれていた。
それが、この夏はちがった。
黒々した雨雲がときどき湧き出てはいたが、まるで村を
それでも、
だが、
やがて、ふた月。
まあ、そのうちに降る――。
そう云う者は、もういなかった。
雨乞いが
もう儀式に祭りの気分はない。
やがて、田畑はひび割れ、砂ほこりを黄色くまきあげた。
伸び盛るはずの二期目の稲がしおれだした。
底をさらしはじめた川では、
「下の村では、とっくに干上がったそうじゃ。死ぬ牛馬もでておるそうな」
「このままだと、ワシらの井戸も
「そうなったら、また
神は、我々のことをすっかり忘れている――。
また、
状況は、首里の王府に報告された。
琉球のどこもかしこも同じであった。
人々の訴えをうけて、王府は、雨乞いの
王府にとって、雨乞いは、村祭りのように
すでに琉球は統一されていたとはいえ、まだ
しかも時の国王は、まだ若年の
儀式を先送りすればいずれ雨は降ろう。だがそのあいだにも、民の声は日ごとに大きくなる。民衆の不安が、王府への不信に達っすることもあってはならない。
ようよう、王府は
王府の雨乞いは、国家の一大祭祀である。およそすべての者たちが動員される。
その実施が決まった府内は、にわかにあわただしさを増した。
儀式は三日間。
暦を
琉球全土には、
魚は
民衆の家々からは、一人づつ、あるいは各村から数十人つづが徴用されて、 聖所や道程をととのえるなどの、
そして、雨乞い当日。
最高神女である
一方、王族・高級官僚の一行は、久米や泊村、豊見城にある拝所を、泊りがけで祈り歩いた。
儀式を終えても、空はあい変わらず燃えつづける。
幾日かあけて、もう一度。
それでも降らずに、もう一度。
回を重ねるごとに、儀式は盛大に、厳粛に、深刻になってゆく。それでも、陽は白く燃えて、神女たちの影を、地に焼きつけるだけだった。
――霊力が、足りない。
いよいよ、国王による
国王から
国王は、格式高い神々おわす、知念や
男子禁制の聖地に、国王が
琉球国王じきじきの巡礼に、
巡幸の日に先立って、神女たちは手分けして、首里や那覇の
とくに、首里崎山の
そして、その日。
国王の聖地巡礼の日。
王府の
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