第17話 夏の終わり、恋人のふりをした
恋人がいると、世界が変わると思っていた。
でも、そんなことはなかった。
「彼氏」というものを手に入れても、私の生活は相変わらずで、劇的に何かが変わるわけでもなかった。
幸せでも、不幸でもない。
ただ、そこに「恋人」という肩書が加わっただけ。
智也も、たぶん同じだったんじゃない?
少なくとも、彼の目に強い感情の色を見たことはない。
それでも、私たちはうまくやっていたと思う。
適度な距離感で、適当に愛し合っていた。
お互いに深入りしないまま、それを「大人な関係」とでも思い込んで。
私は、試し始めた
でも、ある日ふと気づいた。
——智也は、私を本気で好きになったわけじゃない。
——私も、智也を本気で好きになったわけじゃない。
だったら、私たちが「恋人」でいる意味って何?
それを確かめたくなった。
もし、私がいなくなったら、智也はどうする?
この関係が壊れそうになったとき、彼は何を思う?
私は、試し始めた。
ほんの些細なことから。
他の男の話をしてみる。
LINEを既読スルーする。
わざと待ち合わせに遅れてみる。
——何かが変わるだろうか?
結果、何も変わらなかった。
智也は、少しだけ不満そうな顔をすることがあったけど、
怒るわけでも、問い詰めるわけでも、しがみつくわけでもなかった。
そのとき、私は確信した。
ああ、これは終わるんだ
ちゃんとした恋人の、最後の鎌倉
鎌倉でのデートは、その「予感」を確認するためのものだった。
最後に、私は「ちゃんとした恋人」のふりをしてみた。
楽しそうに笑い、彼の隣を歩く。
カフェでは「ここ、いい感じじゃない?」と目を輝かせ、
江ノ電に揺られながら、「また来ようね」と言ってみる。
でも、本当はわかっていた。
——智也は、すでに別の場所にいる。
そして、私はそれを知っていて、知らないふりをしている。
夏が終わる。私は、どうする?
学校が始まる。
夏が終わる。
私は、これからどうするんだろう?
智也との関係が終わったとき、私は「ひとり」に戻るのだろうか?
それとも——
新しい物語が始まるのだろうか?
まだ、答えはわからない。
でも、もうすぐ、この季節が終わることだけは、はっきりしている。
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