春と再見
にゃんしー
第1話
気ままなツァイチェンのばんごはんは空気だった。おいしくて、それよりもっとおいしくて、あくびをあぶくみたいに浮かべて目をこすった。ツァイチェンは慎重にせのびをして、地面をぷにぷにの手のひらで叩き、地球は丸くないんじゃないかとかんちがいした。
きみはそれを高いところから見てる。わらって、だきしめて、あたたかくしてやる。片手にあまる季節のなかで、きみがいちばんやさしい。やさしいということは、友だちということ。誰もいなくなった土地なのにまだ(そう、まだ、なんだ。ごめんね)ツァイチェンは友だちで、きみはうれしいと思った。
ぐずぐずの道じゃない道を、ツァイチェンが歩く。泥だらけのお人形、笛のささった赤いランドセル、持ち主不明のおさいふ、プリクラ、それから友だち。ぜんぶ、ぐずぐずだけど、ちゃんとあったもの。あったということは、いまはないということ。それを探して見つけるたび思い出と呼んでやる。そうツァイチェンは決めて、かわいらしいお尻をふると、しっぽに結ばれたピンクのリボンが手をふるみたいに揺れた。どこかで見たようなピンクのリボン。いまはいない友だちのことを呼ばれたみたいに振り返って、きみは、かなしいふりをする。コーヒー冷めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます