第79話 正論(79)スピード測定
真由美です!
セイロンさんが大勢の人を引き連れて……って4人だけど、体育館に、じゃなかったトレーニングアリーナにやって来ましたぁ。手を振ったら振り返してくれたんですよ!恥ずかしそうに……えへへ。
えーと、セイロンさん、憂響叔父さん、あのヒーロースーツ着たピンクの髪の人は知らないなぁ。可愛い人だけど、誰なんだろう?
「トゥエルブお姉さん、あのピンクの髪の人、知ってますか?」
「はい、あの人はホワイトピーチ・マリン先輩ですね。2個上だったかな? 激戦区の東東京で、バリバリ活躍しているヒーローですよ」
「お姉さんの先輩なんですね……。凄く可愛らしいけど、強いんですか?」
トゥエルブお姉さんの方がカッコかわいい美人さんだけどね!
「エグいですよ。女性ヒーローではトップクラスじゃないでしょうか。正直、テスト相手にあの人が選ばれて驚いていますが、それだけセイロンガーさんが評価されているってことなんでしょうね」
凄い凄い、セイロンさん! そんな人が毎日送り迎えしてくれてるなんて、いいのかなぁ?
「うふふ、嬉しそうですねーー、真由美お嬢様」
「えっ、顔に出てました!?」
「はい、思いっ切り。ちょっと鼻がふくらんで、笑顔をこらえてお口がモニョモニョしてましたよ?」
トゥエルブお姉さん、セイロンさんのことになるとすごい揶揄ってくるなぁ。鼻がふくらんでってもう、やだなぁ……。
「えーーっと!あと知らないツンツン白髪のおじさんと、……うわぁっ、あの人!」
なんか、白目むいて変顔してるから一瞬分からなかったけど、あの人、私を攫ったVVEIの女の人で、セイロンさんのマンションの住人だ……。なんでIHAの施設にいるんだろう。
「ん? あぁ、後ろの2人は……ちょっと極秘事項なんでこれで」
お姉さんは口に人差し指を当てて、言っちゃ駄目って仕草をします。んーー、まぁいいやっ、良くないけど、大人の事情ってやつかな?
◇
アリーナに入ったセイロンガーは短距離用トラックに案内された。
「マリン、50mを測定する。スピード設定で準備してくれ」
五百旗頭憂響が指示を出した。
「了解」
マリンは一度ヒーローマスクを脱いで、ピンク色の長髪を邪魔にならないように纏める。次に腕に付いたコンソールを開き操作する。直立し瞑想するように目を瞑り深呼吸しながらスーツの設定変更を行った。
スピード設定にすることにより、下記の筋力を重点的にサポートする。
・下半身(推進力増強)
大臀筋、ハムストリング、大腿四頭筋、下腿三頭筋
・上半身(腕振り)
三角筋、広背筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋
・体幹(パワーの伝達、姿勢の制御)
腹直筋、腹斜筋、脊柱起立筋
大曲博士がテスト手順を説明していく。
「セイロンガー、まずは君がノーマル設定で50mを測定し、次にマリンがスピード設定で測定する。本場のアメフトでランニングバックだった君だ、同じ条件では勝負にならないだろう。しかし、ヒーロースーツがサポートすることにより、どれほど能力が上がるのか実感してもらいたい」
「了解だ。ちなみに今はリラクゼーションモードだが、ノーマルに戻した方が良いか?」
セイロンガーのヒーロースーツは振動で全身マッサージ中だった。
「なに、あれからずっとか? 明日あたり揉み返しがくるぞ」
「そうか、あまりに気持ちが良かったものでな。では、ノーマル設定に戻そう」
セイロンガーはリラクゼーションモードがいたく気に入ったようだ。お陰で身体は完全にリフレッシュされている。
マリンはストレッチを終え、ヒーローマスクを装着、バイザーを下ろして完全なホワイトピーチ・マリンとなった。
「五百旗頭センター長、こちらは準備OKです!」
五百旗頭憂響は周りを見回し、計測員を探していたが、トゥエルブと真由美を見て、手を振り2人を呼んだ。
呼ばれたトゥエルブはすぐさま走ってくる。
その後ろに体操着の真由美。その走り方は最初の頃とは大違いの、手を前後に大きく振り、膝を高く上げたフォームだった。
「真由美さん、どうやら真面目に運動していたようだな」
セイロンガーは満足げに頷いた。
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