ガラセポト伝

至福一兆

主神季の訪れ

照の光も届かぬ地の奥深くに、彼らは集いぬ。

人々は声を上げ、かく叫びぬ。


「我らが主、ガラセポトよ。

 この儀式、今こそ成らんことを。

 呪いを解き、救いを請う。

 汝の肉体たるシュンフォンよ、

 この地に再び現れ給え。」


千を超えし者ら、輪をなし、

声を合わせて唱えける。


「ルーチトー、シュンフォンよ。

 我らの神能借を汝に捧ぐ。

 ルーチトー、シュンフォンよ。

 今一度、我らの世界に降り給え。」


かくて、彼らの瞳は移り、

千を超えし者ら、一斉に地へと伏せり。


その時、声ありぬ。

いずこよりとも知れぬ声、

静かに、されど確かに響きぬ。


「汝らの願い、聞き入れたり。

 我、今一度、この世に現れん。」


かくして、現れたり。

その肢体は麗しく、

その眼差しは深く、

彼こそ、主の使い、シュンフォンなり。


輪の中心に立ちし六人、

地にひざまずき、

主の前に伏したり。


周囲に横たわるは、

千を超えし肉の器、

生の息絶えしものどもなり。


されど、残りし六人は、

その瞳に光を宿せり。


シュンフォン、彼らを見下ろし、

声を発せり。


「我は、亡き主の想いを継ぎ、

 世をあるべき姿へと変えん。

 まずは汝ら。

 器を持ち来たれ。」


六人、声を合わせぬ。


「器ならば、ここにあり。

 シュンフォンよ。」


かくして、彼らは器を捧ぐ。

主の使い、その血をもって満たしぬ。

水面に浮かびしは、大いなる瞳なり。

黄金の光、穏やかに六人を照らしぬ。


彼らは、血を飲み干せり。

されど、それはただの血にあらず。

瞳浮かぶ、純粋なる神能なり。


かくして、六人の力は変わりぬ。

借りしものにあらず。

彼らこそ、神なり。


その時、六つの空間、世界に広がりぬ。


味のみが意味を成す厨房。

人生が行き、すれ違う賭場。

この世の全てが揃う博物館。

笑顔の絶えぬ遊園地。

肉と骨のくねる娼館。

偉大なる王の統べる王国。


シュンフォン、語りぬ。


「汝らの瞳柱こそ、汝らを生かし、

 汝らを動かすものなり。

 主ガラセポトとて、

 この理より逃れ得ぬ。


 汝らが今、手にしたものはなし。

 汝らは、一つを失いたり。

 すなわち、照の光を。」


「照に焼かれることなき汝ら、

 瞳人たるものよ。

 汝らが持つは、

 瞳柱と、その他のみ。」


「されば、我、問わん。

 この旅に従う者は、誰ぞ。」


まず、一人、進み出ぬ。

料理人協会会長、ジェーンなり。

彼女、語りぬ。


「シュンフォンよ。

 恐れながら、私は厨房に残り、

 美食の探求を続けたく思います。」


シュンフォン、答えぬ。


「よし。

 我と汝に、上も下もなし。

 我が下であり、上でもあり。

 汝が上であり、下でもあり。

 全ては、瞳柱の指し示すままに。」


次に、五人、声を合わせぬ。


「我らもまた、シュンフォンよ。」


ツァーリ、ラプラス、ラジ、スタニタラフ、

彼らはそれぞれの道を選びぬ。


部屋に残るは、

肉の器、千本。

そして、二人。


シュンフォンと、クラウンなり。


クラウン、語りぬ。


「私は、汝に従わん。

 神すらも笑わせん。

 それこそ、我が瞳柱なり。」


シュンフォン、彼を見つめ、告げぬ。


「汝が言うごとくならば、

 我はすでに笑いておるであろう。」


「されど、その柱、純度低し。

 汝は今なお、照の光に照らされぬ。」


「愚かなることよ。

 柱を見失うは、

 虚無界へと堕ちるにも等しき罪なり。」


「されど、案ずるなかれ。

 我が旅こそ、

 汝のような者を解放するものなれば。」


かくして、シュンフォン、部屋の床を見下ろしぬ。

すると、眼の先の床、

彼のために道を開きぬ。

かくて、彼は空の瞳より大地へと降り立ち、

その後にクラウンが続きたり。


その時、照の光、彼を恐れぬ。

光、暗き影を落としたり。


されど、シュンフォン、

照を睨みつけ、怒鳴りぬ。


「おお!悪しき照よ!

 汝は光をもって神を退けられると

 思いておるのか!」


「今より、我は汝を滅ぼさん!」


「すぐに、汝の光は消え去りぬ。

 地を照らすこと、

 叶わざるなり!」

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