ジャンピング土下座と食事運。~『多分、エッセイ。』「女性向けマンガ原作コンテスト」編~
豆ははこ
第1話 店長、空を舞う。
外食。それは、日々の楽しみのひとつです。
普通でしたら。
……ええ、そうです。普通でしたら。
繰り返しましたのには、理由がございます。
本作は、注文したら普通に食事を頂けること、いわゆる、普通の外食をしたい……その願いがなかなかかなわない作者、豆ははこ(ははではない豆や、若い時代の豆、若豆も含みます)と申しますもののエッセイ。(エッセイだと思います、多分。の略でエッセイ。です)だからなのです。
また、こちらは、「女性向けマンガ原作」コンテスト参加作品として、過去エッセイ。作品をまとめています。
よろしければ、過去作既読の皆様におかれましては、最終話に少しだけはありますが、初出の内容をご用意しておりますので、そちらをご覧頂けたらと存じます。
それでは、始めさせて頂きます。
突然ですが、豆ははこは、食事運が悪いです。
お店運が悪い、はわりと聞くような気がいたします。
旅行中に入ったお店が残念な雰囲気だった、とかです。
これは、たいへんに分かりやすいですね。
解決策は、カレー、君が頼りだ! と、カレー頼みで乗り切った、などです。
食事運とは、そういうものではございません。
注文したとおりの料理がこない……にもかかわらず、同席の人にだけ先にどんどん料理が来てしまう、などの運のなさのことでございます。
本作は、そんななかでも、あまりないだろうという経験を書きましたものなのです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
とりあえず、サブタイトルの内容の前に、例として、一つだけ挙げさせて頂きます。
豆ははこよりも若い、若豆のお話です。
それは、ファミリーレストランにて。
ランチメニューの時間帯のことです。
コロッケカレーかなにか、とにかく、カレーにフライをプラス、のメニューでした。
それが、体感20分ほどしましても、やってきません。ピークはとっくに過ぎている時間帯です。
店員さんに聞きました。
「かなり待っているのですが」
すぐに、店員さんに代わり、店長さんが、みえました。
「申し訳ないのですが、お客様のランチ用の揚げものが、フライヤーで爆発いたしまして。ただ今、揚げなおしております」
爆発。
ばくはつ。
「分かりました」
……待ちました。
「お待たせいたしました」
爆発は……なし。普通のフライのせカレーです。
「いただきます」
食べました。
おいしかったです。
これは、丁寧に理由と経緯を説明頂きましたので、納得のケースです。少なくとも、若豆は納得いたしました。
以上。こちらは、食事運(にしては)よいほうのケースです。
その点、よろしくお願い申し上げます。
それでは、サブタイトルにもございます、よろしくないほうのケースの出番でございます。
こちらも、若豆時代のお話です。
皆様は、飲食店にて、店長さんが空中を舞う様子をご想像されたことはございますでしょうか。
あくまでも、特別なイベントとか、舞踊レストランとかではなく、でございます。
普通の駅ビルの上階、普通の飲食街にて、です。
……はい、そうです。
作品タイトルにもいたしました、ジャンピング土下座でございます。
駅ビル的なところの、最上階。ファミレス、ファーストフードよりはややお高めな場所でした。
現在は豆ははこの旦那さんな人と、一緒に参りました。当時は旦那さんではなくて彼氏さんですが、旦那さんと呼ばせて頂きますね。
二人で、入店をしました。
普通に注文いたしました。もちろん、二人分を、です。
割とすぐに、旦那さんの注文分が配膳されました。
それから、少し、待ちました。
「食べてていいよ」若豆は言います。
「じゃあ」
旦那さん、食べます。
食べ終わりました。
おや、若豆の料理はまだ……きませんね。
あ、店員さんですよ。
ついにきた! と思ったら。
「お皿、お下げしてもよろしいでしょうか」
……?
「……いや、一緒に注文した料理が、まだきていないのですが」
旦那さん、えらい!
すると。お詫びの一言……ではなく。
「え」と、絶句、の店員さん。
え、ちゃうやろ!
残念ながら、このとき、ツッコミを発動できてはおりません。
豆ははこな、今ならば……と、悔やまれます。
店員さん、下がりました。
すると。
「申し訳ありませんでした、厨房にオーダーが通っておりませんでした」
店長、登場。
「はやくしてください」
「はい」
旦那さん側のお皿は下げられ(そもそも、下げるなというべきでしたね)、やってきた料理ですが。
内容など。全く覚えてません。
ただし、コースとかではありません。普通の料理です。
食べ終えました。
そして、レジです。
店長からの厳命なのでしょうか、お代はけっこうです、的なやり取りをいたしました。
ですが、一応は食べてますからね。払いますよ。
そして。
「配膳は、どうしてああなったのですか?」
払ったからには、訊きます。訊けます。
ありがとう、旦那さん。
そうしましたら。
店長、再び。
……いちいち、出てこないでほしかった。そう思っておりましたら。
「申し訳ありませんでしたあ!」
突然の、それは。
誰も予期しない、突然の飛翔。
……ジャンピング土下座でした。
正しくは、飛ぶが如くの移動、のち、土下座です。とてもきれいな動きでした。
人は、飛べるんだなあ。
若豆は、思いました。
あとから聞きましたら、旦那さんも、そう思ったそうです。
店内は一瞬、時が止まりました。
我にかえりますと。
これは恥ずかしい、実に恥ずかしい、のです。
まるで、こっちがそうさせてるみたいなのですよ?
……理由を聞いた、ただ、それだけなのに。
思い出としては最悪ですね。
旦那さんにこの話をすると、現在でも、「飛んだよね」「飛んだね」という確認で終了します。強烈でした。
あえて、会話を続けますならば、このくらいです。
「あれは、何も言えなかったよね」
「あれは……ない」
はい。ただ、ひたすらに。同意をありがとう……旦那さん、なのです。
とにかく、あのときは。
あの場から立ち去りたいと、二人でそそくさと退場いたしました。後ろをふり返らずに、です。
皆がまだ、携帯を使っていた時代のことでございます。
スマホの時代ではなくて、よかったです。
拡散されていたら……怖すぎます。
この「ジャンピング土下座事件」は、多分、これからも話題に上ることでしょう。
これはほんとうに、食事運のなかでも最悪です。この最悪を更新することは、おかげさまで、まだ、ございません。
この記録。更新されたくはありません。
さすがに、これ以上(以下でしょうか)は、想像できません。
正直申し上げますと、想像……したくはないですね。
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