カードゲームが世界的に人気な話⇒『プロジェクト・エース』
projectPOTETO
第1話 トレーディングカードゲーム
トレーディングカードゲーム。
ルールに則って組み合わせたカードの束、デッキを持ち合わせ二人以上で対戦を行うカードゲーム。通称TCGと呼ばれるものだ。
その中でもこの世界で一番有名なのが『プロジェクト・エース』
このカードゲームにはプロが存在し、野球やサッカーなどのスポーツのように人気が高く、テレビ中継も行われることもある。
最もまともにプレイした経験などないのだが。
世界大会の中継を端末で眺めながら廊下を歩く。
映っている男女二人はこの世界のトッププレイヤーで、今は世界最強を決めている最中だ。
学校の昼休みに終わるような戦いではないが、どうせ一人で過ごす時間なのでそれを見ていた。
「きゃっ」
「うわっ」
すると曲がり角から出てきた女子生徒とぶつかってしまった。
その衝撃でイツカは端末を、女子生徒は持っていたノートを落とす。
「ご、ごめんなさい!」
「いえ、私もよそ見していたから……でも歩きながら端末をいじるのはあまり良くないわね」
「ははっ、おっしゃる通りで」
イツカは自分の足元に落ちたノートを拾い、女子生徒はイツカの端末を拾った。
「はい、これを……」
ノートを渡そうとすると、女子生徒はイツカの端末をじっと見つめていた。
「あの……?」
「あ、あぁごめんなさい。
返すわね。次は気を付けて」
「はい、すいませんでした」
「えぇ、それじゃ」
女子生徒はそう言ってその場を離れる。
イツカは何となくその背中をじっと見つめていた。
「今の
とても整った容姿に物静かな印象。
この校内でも最も有名な女子生徒、水紋ウタウ。
生徒からも教師からも評判が良いと聞く。
そんな彼女の背中が見えなくなり、自分も歩き始めようとしたところで足に何かが当たった。
「これって先輩の生徒手帳か……ってこれは!?」
拾い上げた生徒手帳には名前が記載されており、中を開くとそこには一枚のカードが入れられていた。
見るとそれはプロジェクト・エースの大会の優勝でもらえるプロモーションカードだった。
イツカは振り返り、追いかけようとするがどこに行ったのかわからなかった。
「放課後に教室を回るかな」
イツカは生徒手帳をポケットに入れ、自分の用を済ますことにした。
■
放課後。
イツカはウタウを探しに2年生の教室を回っていた。
「今なら旧校舎の方じゃないかな」
「旧校舎に?なんかやってるんですか?」
「同好会入ってるみたいよ。
ところでウタウに何か用?告白?」
「いや、そういうわけでは」
「今月3人撃墜されてるからなぁ……君が4人目かぁ」
「だから違いますって!」
彼女の友人と思わしき生徒に揶揄われたあと、イツカは旧校舎に向かった。
この学校の旧校舎は特に授業に使われることは無い。
とはいえ人の手が入っており、物置代わりに使用されていると聞く。
そんな校舎で一体何をしているというのか?
不思議に思いながらイツカは昇降口へ入る。
見たところ土足で入っているようで上履きなどに履き替える必要はなさそうだ。
目的に人物を探すためにうろうろと探索する。
不気味な、言い方を変えれば趣のある木造の校舎にちょっと冷や汗が流れる。
1階は誰もおらず、2階へと上がる。
すると一つの教室に明かりが灯っていた。
ゆっくりと近づくと、中からブツブツと声が聞こえてきた。
イツカは教室の窓からこっそりと中を覗く。
そこにはホワイトボードに何かを書き込みながら独り言を呟くウタウの姿があった。
「あのターンであれを使ったのはあの先を予想してた?
でも返して落とされてたら逆に危なかったはず……あそこでアレを引かなきゃ、いやそれはあの展開で……」
(な、なんだろあれ……)
ホワイトボードにはキュッキュと音を立てながら文字と矢印が書き込まれていく。
ブツブツと呟くウタウの姿は少々不気味に見えるが、実に楽しそうだった。
楽しそうな様子にイツカは目を奪われていると、不意にポケットの端末に通知音が鳴る。
普通なら小さく、誰も気にしない程度の音量。
だが、静かな旧校舎に響き渡るには十分だった。
ウタウはぎゅんと顔を振り向かせ、近くに置いてあったカードを手に取って手裏剣のように投げる。
そのカードは窓の木造部分にトッと突き刺さった。
「ひっ!?」
驚いて尻もちをつくと教室のドアが勢いよく開かれる。
そこには鋭い目つきをしたウタウの姿があった。
ウタウはイツカに手を伸ばし、胸倉を掴み上げて顔をグイッと寄せる。
「あなた誰?なんでここにいるの?」
「待って待って待ってください!怖い怖い!!」
「質問に答えて」
「先輩が落とした生徒手帳を返しに来たんですよ!ほら、昼休みにぶつかりましたよね!?」
「昼休み……?あぁ、あのときの」
ウタウは手を放して、少し離れる。
イツカはホッとしながら立ち上がり、ポケットに入れていた生徒手帳を取り出して渡し、乱れた制服を直しながらイツカは言葉をかける。
「それにしてもびっくりしましたよ。
この学校にもプロジェクト・エースのプレイヤーがいるなんて、しかも大会優勝できるレベルの」
その言葉に教室に戻ろうとしたウタウは足を止め、再びズンズンとイツカに詰め寄って壁際に追い込んだ。続けて手をドンッと突き出す。
所謂、壁ドンという状態だ。
「それ、誰かに話した?」
「えっ?」
「誰かに話したかって聞いているの」
先程とは比べ物にならない剣幕でウタウは問い掛けてくる。
その顔にイツカは汗をかきながら首を全力で横に振った。
「そう……でも口止めは必要ね」
「えっ?」
「あなたもプレイヤーでしょ?
昼休みにも大会の中継を見ていたし」
「いや、それは」
「デッキは?」
「い、一応持っていますけれど……」
「あるのね、じゃあ」
ウタウは制服のブレザーを捲り、腰につけているケースのスイッチを押す。
するとケースはスライドして展開し、一つのデッキが取り出された。
「私と勝負して。
私が勝ったら私のことを口外しない事。いいわね?」
「は、はぁ……!?」
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