和洋折衷、巫女の道!~狐の神様の巫女ですが外国の妖怪たちに狙われるそうです~
早乙女ハテナ
一章 巫女さんの務め
第1話 お狐様の帰還
シャッ、シャッ…
人気のない、それでいて落ち葉一つなく綺麗な景観を保ち続けている境内に竹箒の音が響く。
稀に鳴る草履が砂利を踏みしめる音と共に規則正しく振るわれる竹箒は使い込まれていながらも、しっかりと手入れが行き届いており、『古き良き』といった表現が似合う。
神社に乾いた音が響く度にシンと静まり返ったことが強調されているが、真っ赤な鳥居を潜った空間にはどこか神聖な気配が満ちていて、冬の夕方特有の薄暗さと寂しさが払拭されている。
シャッ、シャッ…
そんな中で、音の主は時折手を止めて辺りを見回しながらも掃除を続けていた。
人によっては幻想的だと感じるであろう、腰まで届こうかという程の白の長髪。
涼しげで理知的な煌めきを放つ両眼は、神社に慣れ親しみ位置をすべて把握しているのか、今は閉じられている。
巫女服…朱と白で染められた衣を身体に、周辺一帯に生えた木々の葉を揺らす風を受け、青々とした葉と同じテンポで揺れるお祓い帽がくびれた腰元で存在を主張している。
歳の頃は14、15だろうか。華奢で線の細い外見に儚げな雰囲気を醸し出している。
地面に敷き詰められた砂利が擦れる音がら鳴り続けること、数刻。
日がさらに傾き、空がオレンジ色に染まった頃。唐突に強い風が吹いた。
急な出来事に驚いた白髪の巫女は思わず眼を閉じて手で顔を覆って砂塵から眼を守る。
巻き上げられた砂塵と木の葉が舞いながらも風は吹き続く。幾許かの時間が経ち砂埃が収まると、白髪の巫女は眼を開いて顔の前から手を退けた。
そこには、男好きのするであろう肉付きの良い肢体を持つ、輝かんばかりの金髪を持つ女性がしゃらりと佇んでいた。
白髪の巫女が着る巫女服とは対象的に、白と藍色の二色が織りなす上品な模様があしらわれた和服を着ており、稲穂を思わせる金髪には狐の耳がぴょこんと生えている。
腰からは髪と同じ黄金色の九つの狐の尻尾がふわりと揺れ、狐耳の女性がどこからか降り立った瞬間より清い空気が境内を満たしていた。狐耳の女性は眼前にて控える白髪の巫女を見るなり、にんまりと笑った。
「人の子か。我の
「お久しぶりですね、お
「相も変わらず、お主は真面目よな…」
「性分、というかお役目ですから」
古風な話し方で白髪の巫女を労った後、呆れたようにぼやくお狐様と呼ばれた狐耳の女性。それに鈴を転がしたかのような、それでいて芯の通った声で堂々と返す。
何の兆候も見せずに次の瞬間には眼前に立っていた
てきぱきと茶と和菓子を用意し始める姿を見てお狐様は嬉しそうに笑った。
「気が利くな」
「姉に仕込まれた一芸ですが、良い茶葉が手に入りましたもので。お口に合えば宜しいのですが…」
縁側にどっこらせと腰掛けたお狐様に
巫女はそれに「恐縮です」と返して、おもむろに口を開いた。
「つかぬことをお聞きしますがお狐様。今日は一段とご機嫌麗しいご様子。なにか良いことでもありましたでしょうか?」
「わかるか? うむ、今日はとても良いことがあった」
お狐様は鷹揚に頷く。
「失礼ながらお聞きしても?」
「我の住み慣れた家に尽くしてくれる巫女が
口説き文句のようなことを口にしてけらけらと子どもの様に笑うお狐様。
稀に飛び出る主の茶目っ気のある言葉に少し詰まりながらも、巫女は微笑ましく思いながら言葉を返す。
「…お戯れを…と申したいところですが。仕える主君の帰りし場所を
くすっと口元を袖で隠しながら上品に笑う巫女に向けて、噛み殺した笑い声を漏らしながら狐耳の女性は続ける。
「これでもお主ら…
「…今代の巫女、
「ふふっ、あやつもか…のう、我はお主の
巫女…風に“初代様“と呼ばれている割にはぞんざいな扱いを受ける友人に苦笑してから、神狐は思い出したかのように問うた。
余談だが、先程登場した『百目鬼の一族』とは。この神狐が住まう社を代々管理し、占術から幻術まで様々な力を使い熟す巫女を輩出してきた、この神狐の配下筆頭の一族のことだ。
人の身でありながらもこの神狐に付き従う一族として巫女界隈では有名である。
「何を世迷言を。私共の主はお狐様唯一人にありますれば、他の者に仕えるなど有り得ません」
「…そうか? 嬉しいことを言ってくれるな」
「それは重畳。して、急にこのような質問をされるとなると、会合にて何か問題でもありましたか? 敵とあれば、私のお祓い棒で…」
その瞳に
「いや、なに。お主の言う通り我は『会合』に出席しておっただろう?その時にお主も会ったことのある
「あぁ、
「そう。あの酒飲みだ。お主の実力もさることながら、お主の容姿をいたく気に入った様でな」
幼少の頃から神事にて、清酒や神酒を飲む機会は多々あったものの、強い酒を苦手とする風は以前に
僅かに眉を顰める風。対して神狐は珍しく泥酔した風の姿を見ることが出来て満足だったが、寝取られるとなっては話は別。
話題を変えるため、少し遠い目をした風に声を掛けた。
「時にお主。寺小屋…今は学び舎? 学校? だったか。それは良いのか?」
「お狐様のご帰宅の瞬間に不在など私が許せませんので。病で熱を出したと偽り、休ませて頂きました」
「お、おう…そうだったか…」
にっこりととても良い顔で満面の笑みを浮かべながら堂々と
自分を優先してくれた事を喜べば良いのか、自らの事情を投げ捨ててまで無茶を通す必要は無いと諌めるべきか、迷った神狐は考えるのを諦めて羊羹を口に運ぶ。
「あむっ…これも美味いな。何処の者が作ったのだ?」
「この社から西へと暫く歩いた所に『
「ほう…意外と近場にあるのだな」
近場にそんな店があることを知り、気分が良いまま今度の昼にでも見に行こうと考えつつも、次々と羊羹を口に運ぶ。
どうやら羊羹を気に入ったらしい神狐を見ながら風は説明を続ける。
「はい。その店の看板商品がそちらの羊羹…『甘雪』です。粉雪のように滑らかな口溶けと、小豆の風味を前に押し出したしつこくない上品な甘さが老いも若いも問わず人気ですね。大抵、昼前には売り切れてしまうそうです」
「うむ、確かに舌触りが癖になる羊羹だな。どれ、お主も一つ食べてみるか?」
何を思いついたか神狐は悪戯っぽく笑いながら羊羹を風の口元まで持っていき、まるで餌付けをするかのように食べさせようとする。
所謂、「あーん」の体勢である。
風は口を開き羊羹を頬張りそうになったが、そのことを表に出さないように気をつけながらきっぱりと断る。
「お狐様の
「釣れんなぁ。我に少しは甘えても良いのだぞ?全く」
「申し訳ございませんが、これもお役目ですので」
「むう…ん?客か。対応を頼んだぞ」
「承知しました」
少し不満そうだった神狐は神社に人が入って来たことを察知し風に告げる。
風も神狐が参拝者の気配に気づくことは慣れたもので、立ち上がり草履を履いて参拝に来たと思わしき人物に目を向けた。
そこに立っていたのは黒髪を肩口まで伸ばし、制服…ブレザーを着た少女だった。
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どうも、あとがきの代入方法が思いつかず数分固まったハテナです。
新作、いかがでしたでしょうか。
神狐と風は私が大分気に入ってるキャラクターですので長く続かせたいな、と思っております。生暖かい目で見守ってくだされば幸いです!
風 「☆評価、フォロー、コメントお待ちしております。(ペコっとお辞儀)」
神狐 「そうだ、『こめんと』とやらを我の神社に絵馬として飾るのはどうだ?
(『甘雪』モグモグ)」
風 「良きお考えかと。ではちょっと伐採へ出かけて参ります!(立ち上がる)」
ハテナ 「まだ続くから行かんといてもろて。(^O^)/(作者の強制力執行)」
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