第62話 面談、イヴの戦闘スタイル
「本日は、私どもにお時間をいただき、ありがとうございます」
「いえいえ、とんでもない」
うやうやしくお辞儀をした執事はこちらに向き直り、感謝の意を伝えた。隣の少年も続けて頭を下げている。
「どうぞ、お座りください」
「「失礼致します」」
俺が先に座り、そして隣にイヴが座る。執事のあと、その少年もソファに座り、少し緊張した面持ちでいた。
「今回お呼びしたのは、私が新しく家を購入し、その執事を探していたところ、あなたたちをギルドから紹介させて頂いた次第です」
「数ある執事達の中から、私どもを選んでいただき大変感謝致します」
全てにスキが無い執事と、子どもっぽさが無い少年に意識を向けつつ、おれは頂いた書類に目を落とした。
執事の名前はマクスウェル。年齢は64歳。どこかの辺境伯爵の執事を任されていたようだ。そして……この”イケオジ”はおそらく戦闘に関してかなり手練れのようだ。隣の少年に関しても、何かしらの手解きは受けているように思える。
その少年の名前はライアン。年齢は10歳。”イケオジ”の髪色に近いシルバーの髪色で、瞳の色が紫色で目を惹く。辺境伯爵家の門の前で捨てられていた子どものようで、このマクスウェルさんがここまで育てたようだ。……大したもんだよ。
「書類には目を通しました。私たちには勿体ない人材のようですが……よろしいのですか?」
「もちろんでございます。この子は私がしっかりと管理致します。ご迷惑をおかけすることは一切ございません」
「精一杯働かせていただきますので、何卒よろしくお願い致します」
ライアンの目がとても真剣で、そしてそう言うと立ち上がり深くお辞儀をした。
「座ってください。私はこの間Bランク冒険者になったばかりの若輩者です。以前に働かれていた貴族の方とは立場も考え方も違います」
「承知しました。失礼致します」
ライアンがぴしっとした姿勢でソファに浅く座る。二人をしばらく見て、しばし考える。
(……。……良さそうだな。ほぼ第一印象で決めた形になったけど……。直感はこの二人は良いと言っている)
すると、後ろの扉が開いたかと思うと、まさかのエミリアが入ってきた。受付嬢は一瞬驚いた表情を見せ、すぐさまお辞儀をした。
「マサキ様、お話の途中ですが、失礼致します」
「先日は、Bランク昇格試験ではお世話になりました」
「いえいえ。改めてBランク昇格、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「執事の件については、こちらからもしよろしければという事で、ご準備させていただきました」
「ちょうど探していたところでしたので、配慮くださりとても助かりました」
「別の所で探して頂いても結構ですし、こちらで契約をしている執事も別におりますので、遠慮なくおっしゃってください」
「ありがとうございます。ですが、もう決めました。こちらのお二人を雇いたいと思います」
「そうですか、それはそれは……ありがとうございます。では今後の契約内容について、お話させていただきます」
「よろしくお願い致します」
そういって、エミリアは直々に執事の契約内容について説明をしてくれた。給与制であること、守秘義務のことなど、一通り説明を聞き、納得をしたのでそのまま契約を行った。これはまた頑張って稼がないといけない。
「それでは契約成立ですね」
「私も良い執事が見つかって良かったです」
「それは良かった」
「俺たちはこれからダンジョンに行きますので、準備ができたらもう家に行っててください。入ってもらってて大丈夫ですよ」
「承知致しました。あとの手続きをこちらで進めておきます」
「よろしくお願いします」
そういうと、俺とイヴは立ち上がると続けてマクスウェルとライアンも立ち上がった。
「この度はご契約いただき、誠にありがとうございます」
「ありがとうございます」
「誠心誠意勤めますので、今後ともよろしくお願い致します」
「ええ、これからよろしくお願いします。」
俺とマクスウェルさんは互いに握手をすると、俺たちは部屋を出た。部屋を出る際も彼らは深いお辞儀をしていた。バギンズとエミリアからの紹介だしな……。信用して、良いと思う。
***
「良い執事の方が見つかって良かったね!あの小さい子も、凄いしっかりしててびっくりした」
「ああ、そうだな。俺たちにはほんと勿体ない人たちだよ」
そう話しつつ冒険者ギルドを出た俺たちは、これからの予定について再確認をした。
「まずは……防具屋だな」
「うん……マサキが言ってたやつだよね?」
「そうだ。まぁダメなら使わなくていいから」
「うん……」
俺が考えたのは、イヴに盾を持たせることだった。この間買ったイヴの杖はかなりコンパクトで、片手でも楽に持つことができる。そして、パーティの構成として、俺が魔法剣士でイヴが魔法使いなので、重戦士がいない。そうなると、万が一イヴが襲われたときに、守れるものがあればと思い、盾を持つのはどうかと考えてみた。
一般的に魔法使いが盾を持つことはないようだが、元々イヴは運動神経が良いということと、無属性魔法を素早く打てる利点もあって、割と前衛寄りになるんじゃないかと考えている。前衛にいた方が、逆に後ろにいるよりすぐフォローにいけるし、悪くはないんじゃないかと……思っている。
防具屋に行き、イヴが持てそうな盾を見せてもらう。軽量で、かつ素材もしっかりとしたものが良いだろう。……一通り見せてもらい、最終的に魔獣の革を使った硬革の盾を買うことにした。
それから武器屋に行き、前々から試したいと思っていた、短剣を買うことにした。そのまま剣を使い続けていてもいいんだが、イヴの成長に合わせて他のスキルも伸ばすのは面白そうだと思って、試しに買ってみることにした。剣を使うときに、短剣術の経験が何かの役に立つかもしれない。
……ということで、準備が済んだので、Eランクの『パーゴダンジョン』へ向かった。
***
大きな入り口には何組かパーティがいて、突入前に話し合いが行われていた。俺は堂々と入り口の前に行く。もう俺はソロじゃない、『二人組パーティ』なんだ……!
「ついに、来ちゃったね……」
「Eランクだな。イヴにとっては初めてだと思うけど、俺が隣にいるから、安心してくれ」
「心強いね、マサキは……」
「今日は様子見だから少し潜ったらすぐ帰る。イヴは特訓の成果をここで試すんだ。大丈夫だ、きっと上手くいく」
「うん……」
イヴは心配そうな様子で入り口をじっと見つめている。俺はテリトリーを発動しており、一旦装備は剣にしている。イヴが問題ないようであれば短剣に替えよう。
「よし、入ろうか。まずは俺の後ろについてきてくれ」
「うん」
俺たちの、初めてのダンジョン攻略が始まった。
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