第8話 子育ての不安

人見知りをしない瑠奈は、ここの看護師さんたちからも可愛がられていた。



ナースステーション横の休憩室ではしゃいで遊ぶ瑠奈を見つめながら、日頃の不安を高木に打ち明けた。



「お勉強もバイオリンの練習もちっともしてくれなくて……。才能ある子なはずなのに、わたしの育て方が悪いからでしょうか? なんだか自信なくしちゃって」



「バイオリニストの子だからって、必ずバイオリンが好きになるってわけもないでしょう。本人が興味のあることをさせてあげたらいいんじゃないかな。だけど不思議なほど紗良さんに似てるね」



「一緒に暮らしていると性格まで似るものでしょうか? まるで子供の頃の自分を見ているみたいで、歯痒くて嫌になります」



「紗良さんはステキな女性ですよ。もっと自信を持たなきゃ。あまり子供に理想を押し付けないで。瑠奈ちゃんが幸せになれたらそれでいいじゃないですか。幸せになるために生まれて来たんだから」



幸せになるために………



高木はそんな風に慰めてくれたけれど。



素晴らしいDNAを持つ瑠奈を、平凡な娘には育てたくなかった。



何の取り柄もない、ありきたりな人生を送るなんて。



クリニックの帰り道、手をつなぎながら瑠奈に聞いてみた。



「ねぇ、瑠奈、バイオリンはやめてピアノを習ってみようか?」



本人に決めさせたら頑張れるかも知れない。



「うん! ピアノがいい!! 瑠奈、ずっとピアノが弾きたかったの!」



飽きっぽく、新しいもの好きの瑠奈は、この提案にすぐに飛びついた。



高額なピアノを購入して、瑠奈が本当にやる気を出してくれるのかは、はなはだ疑問だった。



だけど、なにに向いてるのかなんて、やってみなければ分からないのだ。



瑠奈はまだ五歳だ。諦めるなんて早過ぎる。



そんな風に思いなおしては、希望を捨てずに沢山の習い事に挑戦させてみたけれど。



瑠奈が夢中になれるものはひとつもなかった。



興味を持ち続けられたのは、アニメとお洒落だけ。


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