第15話 ヅラ

 木更津での戦いを終えたユウトたちは、千葉軍の撤退を見届け、その将軍の正体について話し合っていた。

「あの将軍…、一体何者だったんだろうか…」

 ユウトが呟くと、義宣が答えた。

「確かに、ただの人間ではなかったな。あの力、只者ではない」

「それに、あの将軍、どこかで見たことがあるような…」

 アスカが、顎に手を当てて考え込んだ。

 その時、八千代が、驚いたように言った。

「まさか…!あれは、千葉県の伝説に登場する『房総の鬼』…!」

「房総の鬼…?」

 ユウトが尋ねると、八千代は頷いた。

「房総の鬼は、かつて千葉県を支配していたと言われる、強大な力を持つ存在です。しかし、その正体は謎に包まれており、伝説上の存在だと考えられていました」

「まさか、それが現代に…!」

 秀吉が、扇子で口元を隠しながら言った。

「しかし、なぜ房総の鬼が、千葉軍を率いていたのだろうか…」

 ユウトが疑問を投げかけると、八千代は答えた。

「恐らく、房総の鬼は、千葉軍を利用して、再び千葉県を支配しようとしているのでしょう」

「そんなことを…!許さない…!」

ユウトは、刀を手に取り、立ち上がった。

「皆さん、行きましょう。房総の鬼を倒し、人々を守るために!」

 一行は、千葉軍の拠点へと向かった。そこは、巨大な軍事施設であり、最新の兵器が配備されていた。

「しかし、これほどの軍事力…、一体どこから…」

 ユウトが呟くと、義宣が答えた。

「恐らく、房総の鬼が、異次元の技術を持ち込んだのだろう」

 その時、巨大な影が、ユウトたちの前に現れた。

「よく来たな、ユウトたち」

 影の中から現れたのは、千葉軍の将軍、つまり房総の鬼だった。

「貴様が、房総の鬼…!」

 ユウトが叫ぶと、房総の鬼は、不気味な笑みを浮かべた。

「そうだ。そして、私は、千葉県を再び支配する」

 房総の鬼は、そう言うと、背後から、巨大な人型兵器を出現させた。

「あれは…!」

 ユウトは、その異様な姿に息を呑んだ。

 人型兵器は、ピーナッツのような形をした、奇妙なデザインだった。

「あれは、ヴァンツァー…!」

 ユウトは、思わず呟いた。

「ヴァンツァー…?それは、一体何ですか?」

 アスカが尋ねると、ユウトは答えた。

「ヴァンツァーとは、かつて存在した、人型兵器の名称だ。私が、かつてプレイしていたゲーム、『フロントミッション』に登場した」

「ゲーム…?」

 アスカが不思議そうに首を傾げると、房総の鬼が言った。

「そうだ。あれは、私が異次元から持ち込んだ、最新のヴァンツァーだ。その力は、貴様たちの想像をはるかに超えている」

 房総の鬼は、そう言うと、ヴァンツァーを操縦し、ユウトたちに攻撃を仕掛けた。

 ヴァンツァーは、強力なビーム砲やミサイルを発射し、ユウトたちを追い詰めていく。

「くっ…!何て力だ…!」

 ユウトは、刀を手に、ヴァンツァーに立ち向かった。

 しかし、ヴァンツァーの攻撃は、あまりにも強力で、ユウトたちは、徐々に追い詰められていく。

 その時、巨大な影が、ユウトたちの背後に現れた。

「ユウト!危ない!」

 アスカが叫ぶと同時に、巨大なロボットが、ヴァンツァーの攻撃を遮った。

「ダッペロボ…!」

 ユウトは、驚きの声を上げた。

 ダッペロボは、かつてユウトたちが戦った、茨城県の守護神だった。

「ダッペロボ…!なぜ、ここに…!」

 ユウトが尋ねると、ダッペロボの中から、声が聞こえてきた。

「ユウト、久しぶりだな」

 声の主は、かつてユウトたちが倒したはずの、茨城県の宿敵、イバラキングだった。

「イバラキング…!貴様、生きていたのか…!」

 ユウトが叫ぶと、イバラキングは、不敵な笑みを浮かべた。

「ああ、私は、ダッペロボと一体化し、新たな力を得たのだ」

「しかし、なぜ貴様が、我々を助ける…?」

 ユウトが尋ねると、イバラキングは答えた。

「房総の鬼は、茨城県にも侵攻しようとしている。それは、私にとっても、許しがたいことだ」

「貴様が…!人々を守るだと…!」

 ユウトは、信じられない思いで、イバラキングを見つめた。

「ふん、信じるか信じないかは、貴様の自由だ。だが、今は、房総の鬼を倒すことが先決だ」

 イバラキングは、そう言うと、ダッペロボを操縦し、ヴァンツァーに攻撃を仕掛けた。

 ダッペロボとヴァンツァーの戦いは、激しさを極めた。二体の巨大ロボットがぶつかり合うたびに、  周囲の地面が揺れ、轟音が響き渡った。

 その時、房総の鬼の頭から、カツラが外れ落ちた。

「あ…!私のヅラ…!」

 房総の鬼は、慌ててカツラを拾い上げようとしたが、その隙を突いて、ダッペロボが、ヴァンツァーに強力な一撃を叩き込んだ。

 ヴァンツァーは、爆発し、房総の鬼は、地面に叩きつけられた。

「くっ…!こんな…!こんなはずでは…!」

 房総の鬼は、悔しそうに叫んだ。

「貴様の野望は、ここまでだ」

 ユウトは、刀を構え、房総の鬼に斬りかかった。

 ユウトの刀が、房総の鬼の体を切り裂くと、房総の鬼は、光を放ち、消滅した。

「やった…!勝ったぞ…!」

 ユウトは、喜びを爆発させた。

「ユウト、礼を言う。貴様たちのおかげで、房総の鬼を倒すことができた」

 イバラキングが言った。

「いや、礼には及ばない。貴様も、ダッペロボで、我々を助けてくれた」

 ユウトが答えた。

「ふん、勘違いするな。私は、ただ、自分の目的のために、貴様たちを利用しただけだ」

 イバラキングは、そう言うと、ダッペロボを操縦し、飛び去っていった。

「イバラキング…」

 ユウトは、その背中を見つめながら、呟いた。

「しかし、今回の戦いで、異次元の脅威が、どれほど危険であるかがわかりました」

 秀吉が言った。

「私たちは、これからも、様々な困難に立ち向かい、人間と自然が、共存できる世界を目指して、旅を続けなければなりません」

 八千代が言った。

「はい。私たちは、これからも、共に、力を合わせて、この世界を守っていきましょう」

ユウトは、仲間たちを見渡し、力強く言った。

こうして、ユウトたちは、木更津での戦いを終え、新たな一歩を踏み出した。彼らは、これからも、様々な困難に立ち向かい、人間と自然が、共存できる世界を目指して、旅を続けるだろう。

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