第32話 再会
不目根田町の住民たちはアラタのダンジョンと化した家の前で、集まっていたところだった。
座り込んでいるものも何人かおり、塔の扉は開けっぱなしのままで扉に二人くっついて扉が閉まらないように抑えているのが見える。
「あ、アラタくん・・・どうしてここに─」
アラタの存在に気づいた町民たちアラタを見つめる中、その中の一人──食堂のおじさんが最初にアラタに声をかけた。
一人座り込んでいたようで声を掛けられるまでおじさんの存在にアラタは気がつかなかった。
「な、なんだこの街にいたのか──?
それともまさか、もう戻ってきて、自らここに入ったのか・・・?
・・・・妹さんが・・・ミナちゃんが心配してたぞ・・・」
何から言おうと色々と頭の中で考えていたアラタだったが、ミナという言葉を聞いてそれらは吹き飛んでいってしまった。
「み、ミナ──ミナは無事なんですよね!?」
アラタは食い気味でおじさんに問いかける。
アラタはつい圧を出してしまい、おじさんはそれによってか後ろへ少しよろけた。
必死すぎてその様子は側から見れば問いかけるというよりは問い詰めているように見えたのだろう。
辺りから話し声が消えていく。
なんだなんだと町民たちの視線がアラタとおじさんの方へ集まっていった。
「お、落ち着け。ミナちゃんは無事だよ・・・今、塔へ入った100人の町の男たちの帰りを待っているところだったんだ。ミナちゃんはその間、暇つぶしと経験値稼ぎのために神社の方へ行ってる・・・・無事だって。」
どうやら100人の町民たちはすでに塔の中へとへいって言ってしまったようだ。
聞かずとも町民たちが待ちくたびれている様子から、だいぶ時間が経ってしまっているのが分かる。
しかし、アラタはミナが無事であることを確認できて安堵してしまった。
神社の方へモンスターを狩りにいってしまったというのは若干気がかりだが、前回のミナの死因が塔の中だったことから、まだ大丈夫だろうとアラタは胸を撫で下ろす。
が、バタフライエフェクトというものがあるように、アラタが前回と違った行動をしてしまったがゆえに、ミナの行動が──死因が変化してしまっている可能性がある。
アラタは足に力を込めるとすぐに神社の方へと駆け出した。
「ちょっ─おいっ」
おじさんが後ろで何か言いたげそうにしており、それは当然だとアラタも思ったが、そんなことより今はミナの無事の確認が最優先事項だった。
アラタは神社へと続く山道を駆け上がっていく。
今朝ぶりのはずだが、何回もリセットしているため、ここに戻ってきたのがひどく久しぶりに感じられる。
「ゲーム化」以前は息を切らしながら歩いていたこの道も今は駆け上がるのが楽しいくらいだった。
近くで音が聞こえるとアラタは向きを変えてそちらへ向かう。
するとアラタの目の前に朝戦った獣型のモンスターと──それに臆せず魔法を放つミナの姿があった。
ここまで特に物音を気にせず全速力でアラタは走ってきたので流石にミナもアラタの方を向く。
「ミナ!!!!」
アラタはミナの前に着地すると勢いを殺しきれずミナと衝突しそうになった。
アラタはミナの方を掴んで持ち上げ、そのままくるくると二人は回転すると、やがて動きをとめ、アラタは掴んでいたミナの体を話す。
「あ、アラタ──なんでここに」
「話はあとだ。さっさとあの獣、倒しちまおうぜ」
アラタは剣を引き抜くと二人は獣と対峙した。
・
「お、戻ってきたみたいだぞ、セニムさんちの双子。」
町民たちが誰かが発した言葉を聞くと神社の方角を見た。
するとそこには双子の姿が──現在この町民たちの中で一番レベルが高いであろう唯一の希望たちの姿があった。
町民たちが静かにアラタとミナを見ている中、アラタはこの状況が自分のスキルについて説明する絶好の機会だと思って、話を始めることにした。
町民たちはアラタから少しだが圧を感じているおかげか思ったより話はスムーズに進んだ。
アラタは自分のステータス画面を広げ町民たちに見せる。
全ての町民たちが見ることができないため、町民の中でも塔の攻略に熱心な人間だけがアラタの周りに集まって話を聞いていた。
「リセット能力か。そりゃすごいな」
「・・・てことはもう塔の中の100人は死んでるってことかよ」
「一応、俺たちの中でも道の駅に集合した段階でスキルの見せ合いっこみたいのはしたんだが、オンリースキルなんてのを持ってる奴はいなかったな。間違いなくレアだぜ」
「え・・・私たち一回死んでるってことですか──?」
アラタの話を聞き、ただ反応するものや、現在の状況を説明する声があたりから聞こえた。
アラタは今自分のステータス画面を見ている町民たちに一旦退くようにいうと、塔の前にいる町民全員に聞こえるように声を張り上げる。
「皆さん、もうすぐダンジョンリミットとやらがきて、巨大なモンスターが出現、塔の中へ入らざるをえなくなります。
塔を攻略するにはここの人たち皆で力を合わせる必要があるんです。
どうか話を聞いてください!」
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