第4話 報告するものと会いに行く相棒
キャロが、宇宙戦艦ネヴィスローズに搭載されている宇宙戦艦『トレミー』で、地球に向けて出発した頃、功太を殴って気絶させた男、神宮寺隼太と付き添いの杉山亨は、盟邦高校の1年2組の教室に戻ってきた……。
Side 杉山亨
「いや~、あのデブを殴って、少しだけスッキリしたぜぇ~」
俺の隣で、満面の笑みで感想を言っているのは、クラスメイトの神宮寺隼太だ。
ケンカ早い男で、すぐに手を出すことで有名だ。
だがそれも、誰かを守るために手を出すので怒るに怒れないところがある。
が、今回の件はそれとは違う。
「隼太、いきなり手を出してどうするんだよ……」
「まだ言うのかよ亨。
あのデブは、俺の女に言い寄って怯えさせたんだぞ?
そんな奴には、一発ガツンとしておかねぇといけないんだよ!」
……これだ。
自分の彼女の事となると、正義感だのなんだのが外れて見境がなくなるみたいだ。
今回の件も、隼太の彼女が泣きついたことで起きたことだ。
でもまあ、気持ちは分からないでもない。
俺も、自分の彼女が被害を受けたなら、同じではないが動いていただろう。
ただ、隼太の彼女というのが問題なんだよな……。
「隼太!」
「夕夏!」
俺たちの教室に入ると、制服を着た一人の女子が、隼太の正面から抱き着いた。
長い髪を後ろでまとめた女子高生、服部夕夏だ。
「隼太、話はついた?」
「おう! ガツンと言っておいたぜ!?」
「ありがとう! 隼太!」
不安そうに聞き、隼太がガツンとしたと聞くと、満面の笑みでまた抱きつく。
抱きつかれた隼太も、抱き着いた服部の頭を撫でながら満足そうだ……。
「隼太、明日から夏休みだ。二人で出かける予定はあるのか?」
「当たり前だろ、亨。
夕夏は、俺の大事な恋人なんだぜ?
いろんな所に連れて行かないとな~」
「フフフ、楽しみだね!」
はぁ~、爆発しねぇかな? このバカップル。
終業式が終わり、あとは帰るだけというところで隼太に付き添いを頼まれた。
何でも、恋人の服部に言い寄る男に怯えているとか。で、服部の彼氏でもある隼太が話をつけるとかで、付き添いをというわけだ。
これもクラス委員の俺の仕事かと、諦めて付き添ったわけだが……。
結果は、末森を一発殴って気絶させて終わりだ。
話し合いの、はの字もなかった。
それで、俺が止めて終わり。
「んじゃ~な~、亨」
「バイバイ、委員長~」
「おう、またな」
教室を出て廊下を歩き、階段の男で別れる。
隼太と服部はそのまま帰れるが、俺は職員室によらないといけない。
末森のことを知らせておかないとな……。
職員室へ向かう廊下を歩きながら考える。
末森が、服部に言い寄っていたという話だが、俺にはどうしても信じられない。
何故なら、末森は人見知りだからだ。
それに、県外から来た学生だから、中学からの友達もいない。
そんな奴が、隼太という彼氏がいる服部に言い寄る?
ありえないだろう……。
おそらく、服部の勘違いなんだろうけど、恋人に泣きつかれて頭に血の上った隼太に、それを見分けることはできないよな……。
考え事をしながら歩いると、目的の職員室の扉が開き、俺のクラスの担任の志藤先生がタイミングよく出てきた。
「志藤先生」
「あ、杉山さん。どうしたの?」
「あの、報告したいことがあるのですが……」
「それは、緊急なこと? 先生、これから会議があるんだけど……。
今、聞いておいた方がいい話かな?」
本当に急いでいるようで、他の先生方が志藤先生の後ろを通るたびに焦ってチラチラ見ている。
これは、伝えるだけ伝えておこう。
「急いでいる時にすみません。
実は体育館裏で、男子生徒が倒れていたみたいだったようなので、どうしたらいいか聞きにきただけなんです」
「男子生徒が倒れていた?
……分かりました。後で、確認してみるわ。
でも一応、保健の先生にも知らせておいて」
「はい、分かりました」
「志藤先生? 会議、始まりますよ!?」
「はい! 今行きます。
それじゃあ、先生急がないといけないから」
「はい、失礼します」
俺がそう言うと、急いで職員室前にある会議室に駆けていった。
……取りあえず、保健室へ行くか。
俺は、職員室から後にして、一階にある保健室へ向かった。
▽ ▽ ▽
Side キャロ
宇宙戦艦『トレミー』で、月と地球の間にあるラグランジュポイントに到着すると、船体を光学迷彩で隠して、搭載していた戦闘艇『オルカ』に乗り換えて地球に降りていく。
トレミーで地球に向かっている時に、コータの生体情報を頼りに調べて、居場所を探し出していたのだ。
「大気圏突入!
目標、日本の○○県の○○市にある盟邦高校の体育館裏!」
戦闘艇内には私しかいないけど、名乗りは必要です!
気分の問題ですから。
ゆっくりと大気圏内へ降りていくと、操縦室の窓から見える景色が変わっていき、眼下には日本列島が大きくなっていきます。
目的の場所へゆっくり降りていくと、だんだんと高校の建物がハッキリと分かるようになり、さらに近づくと、校舎の近くに体育館と思われる建物も見えてきた。
「……確かコータの生体反応は、あの赤い屋根の建物の近くだと……いたッ!」
キャロは、操縦席のモニターに映し出された男の姿を見た。
上から見ているのにもかかわらず、全身が確認できる。倒れていたのだ……。
「コータッ!!」
キャロは、モニターに向かって叫んでいた。
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