現世の夢。幽世の現。

卯崎 兎妓之

序章

 幽世(かくりよ)。

 現世(うつしよ)と天界をつなぐ、魂(たましい)が交差する世界(せかい)。

 そして、天帝に仕える神々と様々なあやかしが住まう世界。


 ひとは、現世での命を終えると幽世へ向かう。

 幽世での7週間ののちに、『光の湖(うみ)』に架かる『虹の橋』を一人ずつで渡っていく。

 その後、その先の天界に住まう者もいれば、天界で魂の洗浄を受け、新たな魂として現世で次の人生を歩み出す者もいる。なかには、幽世に下りて幽世の住人として暮らす者も…。


 いまでこそ死に際して行く場所=幽世となっているが、その昔、幽世と現世には垣根がなく、自由に行き来ができた。

 生者と天界へ行く前の亡者が行き合うことはできなかったが、ひととあやかしが交流することはできた。

 繁農期には、あやかしたちはそのひとならざるものの力を使って手伝いをし、ひとは収穫物などの食料や衣類などをあやかしに与えた。

 あやかしたちの案内で、幽世にしか育たない薬草を採りにひとが幽世の山へ入ることもできた。

 互いの祭にも招きあうなど、なんの隔たりもなく共存できていた。


 しかしある事件を境に、幽世との間に大きな隔たりができてしまった。

 両方の世から自由に行き来することが叶わなくなってしまった。


 以来、ひとにとって幽世は、『死』に際して行くだけの場所となった。

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