第53話
「あの……ごめんなさ……あたし……」瑞野さんは目を開いたまま一歩後退した。
俺は慌てて起き上がり、瑠華の上から退いた。
「瑞野さん……これは…」と流石の瑠華も体を起こしながら何と言い訳していいのか分からないと言った感じで言葉を呑みこんだ。
「あの…あたし……」瑞野さんがもう一歩下がった所で
「モバイルバッテリーやっと見つかりました~、すみません練習の途中だったのに~」と事態を何も知らない佐々木がのんびり舞台袖から姿を現し、固まった俺と瑠華二人と驚きすぎて顔を白くしている瑞野さんを見比べ
「どうしたんですか?」と異常を悟ったのだろう、こちらに走ってきた。
「……いえ、練習中にちょっと落ちてしまって…」
瑠華が何とか言い、彼女も起き上がろうとしたが、
「……っ…」
小さな声をあげて足首を押さえた。
瑠華―――さっきはきっと驚きすぎて痛みを忘れてたのかもしれないが、落ちたときに怪我をしたのかもしれない。
「佐々木、柏木さんを病院に連れて行ってくれ」
「え、でもこの時間病院なんて…」
「私は大丈夫です、練習の続きを…」と瑠華は言ったが
「救急病院でも何でもあるだろ!骨に異常があったら大変だ、今すぐ連れてってくれ!」
俺は佐々木に対して滅多に怒鳴らない。だからこそ俺の怒鳴り声はここぞと言うときに佐々木に刺さる。瑞野さんの肩もびくりと揺れた。
「わ、分かりました!柏木さん、立てますか…?」と佐々木が瑠華の手を差し出したが
「………大丈夫です。立てます。ではご厚意に甘えさせていただきまして病院へ…」瑠華の声も少しばかり震えていた。
瑠華の怪我は勿論心配だったが、今は瑞野さんと二人きりになる必要がある。
どう口留めすればいい―――?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます