潮時か。

ノーネーム

第1話 終わりの刻

「200曲目でこのクオリティは流石にセンス無さすぎだろ」

──私の動画サイトにおける、ボーカロイド曲(ほぼ)通算200曲目の記念曲に、

そんなコメントが届いた。動画の合計再生回数は5回。

そこに来た唯一のコメントだった。

──確かに、自分でもあまり出来がいいとは思えない曲だった。

薄々とは、勘付いていた。

──遡れば二年ほど前の冬、それまで打ち込みを用いてインストミュージックを

作っていた私は、初めて、「ボーカロイド」(音声合成)というものに出会った。

そして彼女らの歌声に熱中し、制作した。曲を錬成した。

そして、一度は自ら活動終了を告げたはずのチャンネルに、

「ボーカロイド」の曲を投稿していった。サムネイルに自作の絵を添えて。

すると、それまで多くて平均50にも満たない再生数が、

100~200と増えていった。それでも少ない方ではあるが、

私にはある種の衝撃だった。

「私には音楽のセンスがある」──そう、錯覚させるほどに。

チャンネル登録者もボカロを始めることで明らかに増えていった。

「ボーカロイドこそ私がやるべきことだったんだ‼」

嗚呼。作った。キーボードを用いない私は日々ひたすらに、

マウスで一音一音、音符を入力し続けた…‼

あの憧れの「初音ミク」さんにだって歌ってもらった。

やった、すごい再生数だ…‼

──だが。聴かれない曲は10にも満たず、コメントも段々となくなり、

やがて高評価数も再生数も完全に地に落ちた。

──再生時間のアナリティクス。あれは残酷な仕組みだ。

ほとんどの人が、冒頭の30秒すら聴いてくれていないことが解ってしまった。

やがて私は、リミックスというものに手を出した。

もう、才気が枯渇して、新しいものを作れないからだ。

だが、そんな中、自分を奮起させようと、新しい「声」を得た。

これから100曲でも作ってやろう。

積もりに積もった約200曲から300曲への開幕の狼煙─‼

──そう、意気込んで投稿したその動画についたのが、冒頭のコメントだった。

「200曲目でこのクオリティは流石にセンス無さすぎだろ」

はい。そうですね。──後半につづく


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