第5話 祖父の死と心霊現象
母の父、いわゆる私の祖父。
戦争に駆り出され、仕事を奪われ。
なぜか農家になることを強要されてしまったお爺さんはいやいやながら夏場は畑を耕して生計を立てていた。
小さいころの記憶、いんげんとか生産していた。
あとカスミソウ?
あー、それから不味いコメを栽培していたね。
標高の高い我が田舎。
あの当時の技術では美味しい米は作れなかったんだよね。
もう殆ど田んぼはない今だけど。
未だにうちの村ではコシヒカリは作れません。
話がそれた。
コホン。
うちの田舎は信州の東信地方のとある農村。
高校卒業と同時にそこへ引っ越した私は「軽井沢と清里の中間くらいだよ?」とうそぶいていたものだ。
何はともあれ祖父は。
当時のあの村では珍しく、それなりに学があった模様。
長男のくせに家を飛び出し、東信地方では一番の都会、上田市で警察官をやっていたらしい。
しかし第二次世界大戦で徴兵された祖父。
階級とかは知らないが、まあ一般兵なのだろう。
でも祖父は戦艦の乗務員だったようだ。
あの当時。
きっと今とは比べ物にならないほど、衛生面とか問題があったのだろう。
まだ生前、お酒を飲みながら語っていた内容。
「俺は戦艦乗りだった。だけど出航の朝、俺は酷い下痢で…だから見送ったんだ。そしたら目の前で轟沈。…仲間は皆死んだ…俺だけが生き残っちまった」
お爺さんはいわゆる酒乱。
酒癖が悪く、何よりプライドの高い人だったらしい。
だから自分の置かれた状況、納得がいかなかったのだろう。
『あー。和夫さんか。…じゃあ孫のお前も飲めるだろ?』
就職したのちよく言われたものだ。
それほど酒癖の悪さで有名だったじいさんだったけど。
まあ私たち孫には優しいじいさんだったよ。
だから爺さんが私にしたこの話、実は多くの村民が知っていた。
何しろ酔えば際限なく話していたらしいのだから。
何はともあれ終戦を迎え、どうにか生き延びた我が祖父は。
長男と言う縛りで村に戻ることを強要されたらしい。
きっと悔しかったのだろうけどね。
そんなこんなで祖父は脳梗塞になり入院を余儀なくされた。
そしてお見舞いに行く電車の中で母が出会った霊能者。
その人に懇願され、なぜか爺さんと田舎の家の写真を多く持って帰ってきた母。
始まる悍ましい鑑定。
その写真には…
夥しい量の怨霊の姿が映っておりました。
うん。
今思い出しても背筋が凍るよ?
その大先生、おもむろに赤マジックで写真に〇をつけるのよ。
そしたらびっくり。
家の写真にはなんと約100か所、そしてお爺さんのアップの写真…
額のところにそれはそれは恐ろしい、まるで落ち武者のような人物が額を中心に数名映し出されておりました。
リアル心霊写真数十点。
勘弁してください。
もちろん処分済みです。
何はともあれ。
結果お爺さんは闘病生活もむなしく亡くなるのだけれど。
最期には壊死した両足を切断され、左腕も肘から切断。
火葬場で焼いた後、何故か頭蓋骨はほとんど残らず。
霊能者の大先生いわく…
『お爺さんは怨霊につかれていた。だから骨が、額のところが溶けて無くなったの』
だそうだ。
子供心にマジで怖かったのを覚えている。
そして通夜の日。
私は生まれて初めて心霊現象に遭遇したのでした。
※※※※※
私の母親は6人兄弟。
母が長女で女が4人、男が2人だった。
母曰く、
「おじいちゃん、酒乱でしょ?だから娘はみんな家を飛び出したの。絶対地元は嫌だって。それにあなたの叔父さん…二人ともに身体障害者。…きっとおじいちゃん、辛かったのでしょうね」
だそうだ。
まあね。
せっかく居た、頼りになる娘は全員関東へ嫁ぎ。
息子二人は障害者で満足に働けない。
おまけに自分は警察官だったのに無理やり農家にさせられた。
きっと心が弱かったお爺さん。
お酒に逃げたのだろう。
何はともあれお爺さんが亡くなって、私は母に連れられ田舎へと来ていた。
新しく建てた田舎の家。
確か新築と同時に倒れたお爺さん。
家で暮らせたのは確か数か月だったはずだ。
それもまた可哀そうではあるよね?
コホン。
で。
茅ケ崎でぼろ屋にいた私には大層いい家に見えたが…
実は安普請だった田舎の家。
だからきっとこれは心霊現象ではなくて、『木造住宅あるある』の只の軋み。
きっとそう。
まだ小学生だった私の勘違い。
そうだよね?
そうだと言ってください!!
実は私、幼少のころ小児喘息を患っておりまして。
なぜか通夜の夜、突然発作に襲われた私は皆がタバコを吸うリビングにいるのがつらく、一人2階の洋間で布団を背に、座っていた。
喘息の人は分かると思うけど、横になると咳が止まらなくなるんだよね。
だから私は確か部屋の電気をつけたままウトウトしていた。
実はめっちゃ怖かったんだけど。
うん。
その洋間、実は窓の下の壁、まるで人の顔のような模様があったんだよね。
例の心霊写真を見た後の私。
でも皆お通夜が終わりくつろいでいる状況。
翌日にはお葬式、なのでガキのくせにいろいろ気を回せてしまった私は一人、おとなしくしていたんだ。
「ぐはあああああああっっっっ!!!!!」
「っ!?ひいっっっ?!!うあ、うあああああああああーーーーー?!!」
突然大音量で叫ぶ壁。
ウトウトしていた私、大泣きして1階へと走っていた。
「か、母さんっ!!」
「っ!?ど、どうしたの?…誰かいたの?…凄い叫び声が…」
「か、壁が…ごほっ…げほっ…ごほっ…ひゅー…ヒュー…げほっ!?」
突然始まる発作。
まさに泣きっ面に蜂状態の私。
皆の心配した表情が脳裏に焼き付いた瞬間だったんだ。
※※※※※
壁が叫ぶって。
あり得ないよね?
そしてそのあと、おばさんの夫を伴い2階の洋間へと行った時。
全員が絶句した。
顔のような模様のあった壁。
長女である母の言葉を訝しく思っていた皆だったが、確かに視認していたその壁。
きれいさっぱりその模様無くなっていました。
えっと。
あれはやっぱり心霊現象なのでしょうか?
詳しい人、是非教えてください。
※※※※※
平塚の大先生曰く――
「お爺さん、怨霊を連れて行ってくれたのね。きっとこれから先、あなたの田舎には幸せが訪れる。ちゃんと供養してあげてください」
との事でした。
葬儀終了後、新たに撮った写真。
マジで顔に見えていたような模様、ほとんどなくなっておりました。
えー?
マジですか?
そういう世界、本当なのかな?
でもさ。
大先生、言ったよね?
もう安心って。
私が18で引っ越ししばらくしたとき。
さらなる怪現象が私を襲う。
きっと夢。
絶対にそう。
だってさ…
金縛りにあい、周りに突如現れた数名の人が立ち尽くし私を見下ろすなんて…
さらには私の体の上を歩くなんて…
夢ですよね?
あー。
マジで怖かった。
因みにその時には私は違う宗教の信者でして…
その宗教の人「お題目を唱えなさい。それで解決だよ?!」
だって。
もう訳が分かりませんよ!!
※※※※※
あー、後ね。
結婚して暫く過ぎた時に、叔母の一人ががんで亡くなったんだけど。
千葉に嫁いだおばさんなんだけどね。
その亡くなった時間、夜中の3時。
たまたまトイレに起きた私の奥さん。
泣きながら私にしがみついてきました。
「ど、どうしたの?」
「げ、玄関の外…『ただいま…開けて…開けてよう…』…声がしたの…怖い。ドアをガチャガチャして…」
あー。
恐る恐る確認したし、外も見てみたよ?
だから夢ですよ?
うん。
あの家、呪われてんじゃねえか?!
まあ今現在は農家であるわたくしの資材置き場ですけどね。
お化けってマジでいるのか?
永遠のテーマだね。
ハハハ。
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