第22話 良い依頼を受けるようだ
何はともあれ無事にCランク冒険者となったのだ。
ここからBランク冒険者に上がるには、スキルレベルを10まで上げることが必須条件。
となれば、クエストだ。
残りの負債はギルド金貨8万3000枚。
これを半年で返済しなければ、ラヴァンは破滅である。
「オマエら、マジかよ」
「あなたも一蓮托生」
「クソ、オレは抜けさせてもらうぜ!」
「逃がさない。先生に手術されたのなら戦力になる。だよね、先生」
「ああ、それに小遣いやってるだろ」
「使い切った!」
「結構な額渡したのに、金遣い荒すぎるだろ……」
「あんなもんはした金よ」
こいつやっぱりいいとこの跡取りとかだったのでは? という疑念が湧いたが、ひとまずとして3人になるならもっと高難易度のクエストに出られる。
前回の冒険後の7日の休暇と鍛錬の期間を終えたラヴァンたちは、3人パーティーになって初めてのクエストを探しに、クエストボードを見に来ていた。
もちろん探しているのはCランク冒険者が受けられるBランククエストだ。
めぼしいのがないなと思っていた所、スキルテストの試験官だったフィルマがやってくる。
「クエストをお探しですか?」
ルチアーノがさっと隠れたのを目の端で追いながら、ラヴァンはその視線からルチアーノを逃がすように位置を調整しフィルマに応対する。
「ああ、フィルマさん。ええ、その通りで」
「でしたら、こちらなんていかがでしょうか」
フィルマが今、クエストボードに張り出す為に持ってきたのだろう依頼書を見せてくる。
「シーヴルラルジャン商会からの依頼です」
「へぇ、良さそうですね」
「受けますか? それなら受注処理をいたしますが」
「お願いします」
すぐに受注をしてもらえるように頼んで、彼女がカウンターの方に行ったところでルチアーノが戻ってきた。
「お、依頼決めたのか?」
「ああ」
ラミナーリアの北方地域に販路を持つシーヴルラルジャン商会からの依頼。
数日前から彼らが有する販路や周辺の村々を氷系のモンスターたちが襲い始めたので、販路の安全の確保と原因の特定、排除を頼むという旨が記載されている。
「基本報酬はギルド金貨2500枚。シーヴルラルジャン商会の販路の付近には氷原の魔法使いが封印した白霜遺跡があったはずだし。おそらく原因はここだな」
「詳しいな、兄弟。で、その遺跡が原因だと何が良いんだ?」
「ルチアはわからないの?」
「考えるのはリーダー任せにしてたんでね。あとルチアーノな」
「わかったわ、ルチア」
「……まあいいか。そう言うお嬢ちゃんはなんでかわかんのかぁ?」
「舐めないでほしい。わたしにわかるわけがない」
「そんな自信満々に言うことかよ」
「わたしは先生の奴隷だから、先生がわかっていればいい。その方が流石先生って言えるから。それで先生、何が良いの?」
「本来は立ち入り禁止の遺跡なんだが、ここが原因だとすれば中に入る許可をとれる。中には手つかずの宝があるはずだ。そいつを売ればそこそこの額になると見ている」
「なるほど、良いじゃねえか」
白霜遺跡は、冒険者ギルドにおいてダンジョンにカテゴライズされている。
ダンジョン内のものは見つけた冒険者が持ち帰っていいという決まりになっているため、手つかずのダンジョンとなれば相応の財宝が期待できると言うものだった。
「問題はこんなことになってる原因なんだがな」
氷原の魔法使いはSランクに認定されているラミナーリアでもトップの冒険者だ。
その封印は完璧だったはずで早々何か起こるともラヴァンには思えない。
「用心するに越したことはないわな。とりあえず、シーヴルラルジャン商会で話を聞いてからだ」
クエストを受注して3人はシーヴルラルジャン商会へと向かった。
シーヴルラルジャン商会は冒険者ギルドから2つほど街区を横切ったところにある立派な門構えの商会だった。
貴族とも懇意にしているというらしくそこかしこから金の匂いがしている。
冒険者でしかない3人は場違い感が凄まじいが、依頼書を門番に見せれば歓迎ムードで奥へと通された。
「歓迎されてる」
「たっかい酒まで出してくれてるからな」
「クエスト前に飲むなよ……」
「この身体ならよゆーだぁよっとぉ」
ルチアーノはさっそくお待ちの間、どうぞと出されたワインをがぶ飲みしている。
やれやれと思っているうちにシーヴルラルジャン商会の担当者がやってきた。
壮年の男性だ。
シーヴルラルジャン商会の幹部だろう。
「依頼を受けた冒険者さんたちですね」
「ブルーウイングです。さっそくですけど、依頼内容の確認をさせてください」
「依頼書に書いてある通りです。ただ原因はわかっているのです」
「わかっている?」
「ええ、白霜遺跡の封印が解けています。ギルドとしても依頼書に載せるわけにはいかなかったので」
「原因に心当たりは?」
「ありません。最近、イエロウルスの群れが出ていましたが、アズールキングフィッシャーに討伐してもらったので」
「…………」
嫌な予感がラヴァンの脳裏をかすめて行った。
(あいつら余計なことしてないだろうな……)
「そのため、本当の依頼内容は白霜遺跡に赴き、状況を確認し門を閉じることです。こちらをお預けいたします」
冷気を放つ卵型の魔道具を彼は取り出す。
ラヴァンは一目でこれが封印の魔道具であることを見抜いた。
「これを遺跡奥にある台座に載せれば封印が施されるとのこと」
「わかりました」
魔道具を受け取りインベントリに入れると名前が表示される。
氷原の封印珠。
氷原の魔法使いが作ったものであることがわかる。
少なくとも偽物を渡されたということはない。
シーヴルラルジャン商会は評判の良い商会であるから疑っていたわけではないが、不測の事態に備えて念には念を入れて警戒していた。
「確かに。では、今すぐ行きます」
「お気をつけて。遺跡にはガーディアンもいると言います。おそらく襲って来るでしょう」
「わかってます。倒した場合は?」
「その分の追加報酬、素材や財宝はこちらで買い取らせていただきますよ。もちろん、相場以上をお約束いたします」
「ありがたい」
話もまとまったのでラヴァンはリチェルカとルチアーノを引き連れて商会を後にする。
「良い依頼主だな。いつもあんな依頼主だぁと良いんだけどなぁ」
「そうもいかないことは多い。せっかくの当たりだ、しっかりとリピートしてもらえるように気合いを入れて行こう。ルチアーノの力、見せてもらうぞ」
「おう。せっかく復帰できた上に、スケベしまくってもおとがめなしな身体にしてくれた礼の分は働かせてもらうぜ」
「そう言われるとなんか微妙だな……」
「先生、わたしも頑張る」
「ああ、期待してる。行くぞ」
目的の白霜遺跡へ向けてラヴァンたちはラミナーリアを出発する。
冒険の始まりだ。
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