第12話 最初のクエストに挑むようだ
「先生、すごい」
「お、お、おぅ、そ、そうか?」
「うん、すごい。とてもすごい。剣に関係したスキルないのが信じられないくらい」
「それは流石に言いすぎだと思うけど」
「ううん。先生の剣に比べたら、わたしの剣はゴミ」
「え、そこまで言う……?」
ラヴァンはちらりとしか見ていないが、そんなでもないと思う。
リチェルカの剣はラヴァンとは違って骨ごと一撃で断ち切っている。
スキルレベルも高く、【人体強化手術】で強化された分もあるだろうが、純粋に剣に関するスキル持ちだろうことがわかる剣だった。
剣に関するスキル持ちは、高レベルになれば、物理法則を無視したような斬撃すら放てる。
ルーガなど、飛ぶ斬撃から時間差で発動する斬撃だとか、空間に斬撃を残すなどという意味不明なこともやっていた。
ラヴァンの剣などお遊戯に等しいと何度も刻まれたくらいだ。
訓練と称して本当に刻まれたのでそのすごさは嫌というほど知っている。
いや、あれはだたの嫌がらせだな。
訓練とか言いながらも嫌がらせしてきていただけだな、絶対にこの分も復讐してやると心の奥底で決める。
話を戻して、スキルのないラヴァンが彼女のように腕を断とうとすれば。骨と骨の隙間を正確に狙うしかない、ただの曲芸や軽業みたいなものなのだ。
そんなことでは剣士とは呼べない。
「全然、ゴミじゃないでしょ。どっちかというと俺の方がゴミだよ」
「先生がゴミなら、わたしはもう存在もできない……」
「えっ、どうしてそうなるの???」
じわりと涙を浮かべるリチェルカに慌てるラヴァン。
どうしてリチェルカがそんな風にいうのかまるで分らずに頭にハテナが浮かぶばかりだ。
「と、とにかく、こいつらを処理してクエスト行こう。クエストでは期待してるから!」
「うん、頑張る」
なんとか泣き止んでくれて安堵する。
泣く理由がわからないが、とりあえず年ごろの娘さんなので色々あるのだろうと片付けることにした。
「さて、あまり期待できないけど……」
死体から使えるものをはぎ取る。
今は城壁の外であるし、襲ってきた連中なのだ。
心も痛まない。
「ロクなもんもってないな」
ギルド金貨なんて望むべくもなく、ギルド銅貨が数枚革袋の底に転がっているくらいであった。
この財布の中身よりも、ナイフとか剣を売った方が金になるのではなかとすら思えるくらいだ。
「いや、こんな量産品売られても困るか」
とりあえず使えそうなものだけ剝ぎ取って後は魔法薬を使って骨まで全部溶かしてしまう。
下手に放置してモンスターが人の肉や血の味を覚えられても困るために、人が死んでいたら魔法薬で溶かすのが冒険者の決まり事の1つだ。
「でも夕食分くらいにはなったか。帰ったらご飯だな」
「ん、美味しいの食べたい」
「安くて美味い店を探しておくよ」
処理を終えたら後は予定通り巨大森林へと向かう。
雲に覆われた森は薄暗く、陰鬱とした雰囲気が漂っている。
その中で、ラヴァンは努めて明るく切り出した。
「それじゃあクエスト開始だ」
「狩るのは?」
「ウッド・ゴーレムだよ」
ウッド・ゴーレムは脅威度ランクDに認定されているモンスターの一種だ。
古代の人造魔法生物と呼ばれるもので、特別なコアを中心にして動く人型兵器ゴーレムの木造版である。
「今回、そいつらが群れを作ってるって調査班から報告があって、このまま群れが大きくなると他のモンスターの脅威となり、人里に他のモンスターが降りてくる可能性があるからその前に数を減らすのが役目だ」
「ゴーレムはそれほど実入りが良いわけじゃないけど、どうしてこの依頼を選んだの?」
「群れ、だからな。群れなら当然、リーダーがいるだろ? このクエストは数を減らすのが目的だけど、クエスト中に偶然リーダーと遭遇、倒した場合はそのリーダー分の貢献度と経験値も加算してもらえるんだ」
「なるほど。リーダー・ゴーレムはDランクの依頼じゃなくてもっとCとか場合によってはBくらいの高ランククエストになるから」
「そう。このクエストはより高位のモンスターも狩れる可能性がある。だから、このクエストを選んだんだ」
もっとも脅威度が1つか2つ上がり、必要冒険者ランクも上昇するであろう群れのリーダー・モンスターを相手にして倒せるだけの実力があるという前提がなければ、このクエストは選べない。
想定通りのランクの冒険者であれば、リーダーからは逃げることが推奨されるし、それで死ねばそこまで。
死なずともクエスト失敗の違約金を支払うことになる。
さらにゴーレムは素材が売れない。
特にウッド・ゴーレムなど木だからその素材に使い道はなく安い。
売れるのはコアくらいのものであるが、ゴーレムを倒すにはこのコアを破壊するしかないのだから売り物にならない。
実入りが悪いとはそういうことだ。
「元はDランクだけど俺のスキルで強化されたリチェルカならできると判断した。あまりもたもたしてはいられないぞ。高ランク冒険者がリーダーを倒しに来るかもしれないから、それまでの勝負だ」
「大丈夫。だけど群れとなると数が多い。わたしあまり群れとは戦ったことないんだけど、大丈夫かな?」
「俺がサポートする。といってもEランク冒険者のサポートだから、そんなに期待しないでほしいんだが」
「わかった。先生を信じる」
「なら頑張らないとな。っといたぞ」
茂みの向こう、木と木の間の開けた空間に、木の端材を無秩序かつ粗雑に組み合わせたかのような人型人形がいる
ウッド・ゴーレム。それが10数体がそこにいた。
「報告より多いな。この群れの規模だとリーダーも相当な強さかもしれない」
「大丈夫。やれる。油断しない」
「ああ。油断せずに確実にやっていこう」
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