二章 あたしが肉食獣になるなんて……
月が輝き、星たちが踊る夜の空。
草木も眠り、虫たちも鳴くのをやめる丑三つ時。
ナイトランプの柔らかい灯りが室内を静かに包むなか、
そんな
――また、食われてしまった。
あはは、と、力なく笑ってしまう。
おかげで、一年前に自分用に買ったベッドなどほとんど使っていない。そもそも、自分の部屋にいること自体が少ない。家事と学業に追われて自分の時間などほとんどないので当然、自分の部屋にいる理由もない。そして、夜はと言えばこの通り、
愛してる、
愛してる、
愛してる!
と、ばかりにロックのごとく愛情をぶつけられる。
そんな毎日。
自分の部屋にいるより、
いや、別にそれがいやなのではない。
――だって、しかたないでしょおっ!
控えめなナイトランプだけが照らし出す夜の世界でよかった。そうでなければ茹でダコのように真っ赤になった顔が光のなかにはっきり示されているところだ。
――
果たして誰に向かって言い訳しているのか。必死にそう叫ぶ
この世界で目覚めるまで、男女及びそれ以外を含めて恋愛経験は一切なし。食い食われるの関係はおろか、キスの経験もなし。せいぜい、女友だち相手のハグが身体接触経験の頂点。まして、男子相手ともなれば肌と肌をふれあわせたのは中学時代のフォークダンスが最後。それ以外は手を握ったこともない。
そんな自分がまさかいきなり、食い食われるの関係になってしまうとは。しかも、相手に食われるだけならともかく、自分の方まで負けず劣らずの肉食獣になってしまうとは……。
それも、七つも年上のおとな女子相手に。
それもそれも、ネットに水着姿をあげるだけでいくらでも稼げる美女子相手に。
それもそれもそれも、妹の
これも『近親相姦』というやつになるのだろうか? だとすると、問題。まあ、さすがに、妹の
「……でも」
安心しきった赤ん坊のようなその表情。一〇〇年前、人工冬眠に入る前の自分のベッドによくもぐり込んできていた
――ずっと、さわっていたい。
誰であれ、そう思うような心地良さ。
才能だけではない。努力だけでもない。持って生まれた才能を不断の努力によって磨きあげた。その結果のこの美貌。この心地良さ。
――全部、あたしのためなのよね。
最高の姿で自分を出迎えるために、自分と一緒に暮らしていくために、
――この一年、
一年の間、
そうこうしているうちに膨大な量の時が圧縮されて心のなかを通り過ぎ、気づかないうちにすっかりこの世界に馴染んでしまった。いまではもう、昔のことを思い出しても寂しいとは感じない。ただただ懐かしさと暖かい気持ちが込みあげてくるだけ。
――もう、この時代の人間になったんだなあ。
自分でも、そう思う。
――
その程度の想像ができないほど、
――まあ、八割六分九厘ぐらいは本人の趣味でやっていたことだろうけど。
とは思うのだけど。
――でも、
「わたしにはわかるわ。感じるの。わたしのなかの
そう語るときの
そんな
ごろっ、と、音を立てて
美しく、愛らしいその顔。
妹そっくりの顔。
妹が一〇年、成長した姿にしか見えない顔。
「……ありがとう。
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