第7話 悪霊巣喰う、何かをすくう
「はあっ、はあっ、見えた!」
なんなんですかこの森はァァァ!!シチューの香りが無かったら絶対迷ってた。
そして魔物の家の前に。扉は、まだ僕が鍵を壊した時のまんまだった。
しかし、この時の僕は分からなかった。壊した鍵に〝何か〟が付与されていた事に。
…そして、戻って来た後の僕でなら、気付けた筈のものだったという事にも。
扉を開け、中に入る。
「っ、んだ、コレ…!!?」
目の前には、ぎゅうぎゅう詰めのお化け…いや、悪霊がひしめき合っていた。
そしてその悪霊たちは、僕になんて眼中に無いという事も一目見て分かった。
「何やってるんだこの悪霊たち…シチューに群がってるの!???」
んなわきゃ無い。どう見てもあの魔物に目掛けて悪霊が押し寄せているとしか考えられない。
しかし白外套のような見た目でうじゃうじゃ密集しているため、家の奥の様子が全然見えない。
どう考えても、この状況はあの魔物にとって緊急事態だろう。
「勘弁してくれ、ここであの〝人〟に何かあったら他に頼れそうな人見つかるか分からないんだ!」
僕は身勝手だ。あの魔物を〝人〟と言いながらも魔物として利用する。
ただそれだけ、そう、それだけ。
僕は僕のために────────────
「とりまこの邪魔くさい悪霊を祓い退ける!!
えーーっと確か…ッッ!」
かの安倍晴明は感情に流されず、状況を分析して最適な方法を選んだ。彼の祓いは力技だけでなく、知略に裏打ちされていた。まぁ僕は知略なんて言えるほど頭良く無いんだけどさァ!!
目の前の悪霊から狙う!猪突猛進と言われたらそれまでだけども!でも感情には流されてない。そう、あくまで自分のためだから!
「北辰妙見、陰陽調和、五行帰一、穢れし霊よ速やかに去れ、急急如律令!」
『(マスターによる明確なプロンプトの入力を確認。
スキル《レイス・サイト》が発揮されます。
霊感と浄化に+30%の熟練度増加補正。)』
次の瞬間、目の前の悪霊たちが次々と霧散するように消えてゆく。結界の展開と共に。
「これは…いやそれよりも魔物さっ、うわ!?」
勢い余って前のめりにズッコケた後そのまま転がってしまい、そのまま魔物の前に。
そして魔物は僕の目の前で悪霊に襲われている…いや、取り巻くように周囲を旋回している。
「痛っ…こりゃとんでもない事に…くっ!ひとまずこの悪霊を止めるしか!」
『(マスターの気概の向上は意志と信念を補強し、
伝統的な専門家の訓練との有利性と同期し、
《レイス・サイト》は咒文を機能させます。
霊感と浄化に+30%の熟練度増加補正。)』
ネクストさんの声は、さっきから僕には聴こえてはいない。
「北辰鎮坐、陰陽縛理、五行定形、穢れし霊よ鎖に封ず、急急如律令!」
知識はアレでも、この時の僕は本気だった。
たちまち鎖が伸び、旋回する悪霊を捕らえ、動きを封じてゆく。結界の展開と共に。
「魔物さんっ!!大丈夫ですか!?」
耳が聞こえないのは分かっているけど、そう叫ばずにはいられなかった。
こういう時にこんな風に叫ぶなんて二次元の中での演出的なリアクションだと思ってたけど…
そうか、安否確認からくるものだったんだね…
「さっきの方、そこに居るのですね?
ここは危険です、私の巣を悪霊が喰いに群がってきているんです。
今は霊障が鎮静化したように思えますが、まだ危険は拭い切れておりません。」
「それは無理だよ、だって僕は
陰陽師の知識はここまでが限界。
だから脳内施錠を解くには、これしか無い!
「ネクストさん、今から僕が言う事を英訳して!」
『マスターのサポートをします。』
「今、私の前で、あなたの脳の錠が解かれ、この呪いによって封じられていたものがすべて解放される!」
『Before me now, the locks within your brain unravel, this curse dispels whatever remains sealed!
(解錠と浄化に+30%の熟練度増加補正。
浄化熟練度が122%に達しました。
対象の脳内施錠が確定で解除されます。)』
何故か、うまく行く気がした。呪いを解くというのは英語圏でも言霊…フレーズによるものなら、筋が通っていれば、きっと。
「私を置いて、早くここから去った方が良いです。
…あれ、ちょっと待って下さい。
目、が…いや、耳も…?」
これは、これはまさか魔物さん!?
「僕が見えますか、僕の声が聞こえてますか!」
「はい、聞こえています。
久しぶりの聴覚で耳が痛んでしまうほどに。
ですが、これは…」
そう言い、周囲を確認する漆黒の魔物。
「あぁすみません、声が大きかったですかね。とりあえず今は大丈夫…だと思います。
悪霊は多分…これ、この通り…」
少し落ち着いてみれば、自分がふん縛った悪霊。
悪霊。
悪霊。
悪霊、悪霊、悪霊。
だんだん寒気がしてくる。怖い、割と。
「ありがとうございます。
あなたがこなしたのですね。
ですが、このままではいけません。」
そう言うと魔物は、煮込んでいたシチューを混ぜる為に使っていた木をテーブルにコツンと突き立てる。
すると、悪霊は静かに姿を消していった。
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再び話し合う 白い魔物 と 漆黒の魔物
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「さて、鍵を壊したのはあなたですね。
私の鍵を。
私の頭の鍵、そしてこの家の鍵も…」
バレていた。家の鍵をぶっ壊したのも。
「あ…はい、そうです。すみません…」
「家の鍵そのものはともかく、あれには霊を寄せ付けない役割もあったのです。」
うわぁぁ!完全に僕が原因だ今回のコレ!
「あの、すみません…鍵もですけど、あなたのアドバイスを無視して霊に接触してしまいまして…」
「いえ、あなたのおかげで私の脳内施錠も解除されたものだと考えたら、あなたは謝らずに。
そして私はあなたにお礼を言わなければ。ありがとうございます。」
しかし、僕には気になって質問したくて仕方がない事があった。
なぜ、悪霊は僕には一切何もせず、この人を集中して、まとわりつこうとしていたのか…だ。
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【所持スキル熟練度】
ロック解除:12%→42%
運の良さ:2%→12%
浄化の力:32%→92%→122%★
遠視:2%
爆破攻撃:0%
霊感:41%→101%★
クラフト技術:0%
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