第39話 決戦の始まり

「うらぁあああ!!!!!」



 俺は怒りに任せて里ヶ伊を蹴りつける。音速を超えているであろう速度で放たれたそれはいともたやすく里ヶ伊を吹き飛ばした。


 里ヶ伊は駅に吹っ飛び壁を砕いて瓦礫に埋もれる。


 しかし、



「さて、では正々堂々勝負といこうか、奧田タカキ」



 里ヶ伊は当然のように瓦礫をタコ足でどけ、無傷で出てきた。



「お話は終わりで良いのか? ジジイ」



 メドゥーサはケラケラ笑いながら言った。何が楽しいんだふざけやがって。


 俺は怒りに怒っていた。この、ふざけた異常者は殺さなくてはならない。選ばれなかったのに選ばれた人たちを殺すこいつを殺さなくてはならない。


 それがどうやら俺の役目だった。



「ああ、メドゥーサ。君はサハトゥスの方を頼む。どうやら彼が私の宿敵らしいからね」


「ああ、分かった。どの道アタシらの勝ちは決まってる。あいつらはワタシらには勝てねぇよ。どれだけ偉そうに吠えたところでな!!! ハハハハ!!!」



 メドゥーサは鬱陶しく笑っている。だが、そんなことはどうでも良い。こいつらは止めなくてはならない。里ヶ伊は殺さなくてはならない。



「サハトゥス。お前はメドゥーサを頼む」


「ふむ、了解だ」


「お前の能力でここの人たちを逃がせるか?」


「すべては無理かもしれないが、出来る限りはやってみよう」


「頼んだ」



 そう言って俺はラムネの瓶を砕いた。


 中からサハトゥスが、黒いビー玉が出てくる。



「ハハハハ!!! サハトゥス!! そんなナリで何しようってんだ!!」



 メドゥーサはサハトぅスがこんななのが面白くてたまらないらしい。


 しかし、



「あまり戯れるなよメドゥーサ」



 サハトゥスが言った瞬間だった。



───ゴキャ!!!



 すさまじい音と共にメドゥーサごと地面が陥没したのだ。


 サハトゥスの重力制御の能力。このサイズでもこの程度のことはやってしまうらしい。



「このサイズでも君を相手取るくらいは出来る。自信過剰なのは良くないな」


「てめぇ....。ぶっ殺してやる」



 メドゥーサは目隠しを外す。しかし、



「ちぃっ! 空間転移か」



 気づけばサハトゥスは姿を消していた。



「残念だなメドゥーサ。君の能力は相手を視認するのが条件だ。逆に言えば視認できなければ能力は発動できない。こんなに小さな私を君はちゃんと見つけ出せるかな?」



 どこからともなくサハトゥスの声が響く。



「ふざけやがって!!! ぶっ殺してやる!!!! そこか!!!!」



 メドゥーサはリーゼが使っていたような探知の能力でサハトゥスを探し出し、そこを魔法で吹き飛ばした。だが、



「当たらないよ。悪いが私は序列で言えばディアベルと同格だ。君のお父さんならばいざ知らず、まだ子供の君程度に遅れはとらないとも」


「クソッタレが!!!!」


「さぁ、奧田タカキ。君は君の戦いを。こっちは任せなさい」



 サハトゥスがそう言ったと同時にメドゥーサがまたアスファルトごと陥没した。


 どうやら任せても良さそうだ。少し心配だったが、サハトゥスはメドゥーサごときに簡単に負けるようではなさそうだった。


 ついでにその最中でも駅前の群衆がふわふわと浮いて遠くに飛ばされていく。



「おや、人の食事を邪魔するのかね?」



 それを見た里ヶ伊が浮遊する人々にタコ足を伸ばす。



「お前の相手は俺だ!!!!!!」



 俺はそんなことはさせまいと一瞬ですっ飛び、里ヶ伊を殴りつけた。


 タコ足ごと里ヶ伊は吹っ飛び、地面に激突する。



「ふふ、やはりお前を殺さなくてはおちおち食事も出来んか」



 しかし、やはり里ヶ伊は無傷。顔を擦りむいた程度にしか見えない。パンチによるダメージを感じられない。



「残念だが。お前に私は殺せないよ奧田タカキ。何せ私は神なのだから」



 なるほど、どうやら耐久力はとっくに人間のそれを超えているようだ。魔族だってもう少しダメージを負うだろう。確かにこいつを殺すのは容易なことじゃなさそうだ。



「そうかな。まだ始まったばっかりだ。確かに簡単にはお前を殺せそうにない」



 俺はまた地面を蹴り砕いて里ヶ伊に突進する。全力で蹴りをかまし、今度は駅の屋根まで里ヶ伊を吹き飛ばした。



「なら、死ぬまで殴り続けるだけだ」



 まるで効いていないがかすり傷程度は傷を負わせている。なら、ダメージはゼロじゃないってことだ。


 だったら、ずっと殴り蹴り続ければいつかダメージが限界を超えるはずだ。


 そうすればこいつは死ぬ。それまで戦い続ける。それしか方法はない。



「なるほど、確かにこの頑丈な神の体といえどその威力で殴られればダメージゼロというわけではない。続ければいつか私を殺せるかもしれないな」



 そんな俺の言葉に、砕けた屋上からタコ足を使ってゆっくり降りてきた里ヶ伊は言う。



「だが、それは私が無抵抗でお前の攻撃を受け続ければと言う話だ。もうそろそろこちらも反撃させてもらおおう」



 里ヶ伊の白衣の下から何かが、色んな何かがはい出してきた。


 それは黒いエビ、カニ、ウツボやサメ。色んな海の生物が誇張されたグロテスクな姿で現れた。



「さぁ、生き残れるかな奧田タカキ」


「クソ野郎が!!!!」



 俺はそんな怪物の群れに突進した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る