勇者と魔王の最終決戦前に退場した仲間と敵幹部のその後の話

わっしー

第1話 最終決戦

「兄さん!兄さん!!」

後ろからは妹の悲痛な叫びが聞こえる。

「アレックス、俺の妹を頼む。

・・・こんなじゃじゃ馬だが、俺の大切な妹だからな。」

「ケイゴさん・・・。」

「世界を頼む・・・道は俺が切り開く。

だから、お前たちは先に進め。」

「・・・はい!」

「美香・・・勝てよ。」

そして、俺は魔法を唱える。

「付き合ってもらうぞ、魔将軍メーデル!」

「貴様・・・貴様!!!」

(じゃあな・・・皆。)

最後に目に焼き付くのは涙を流す仲間たち。

俺と魔将軍メーデルは閃光に消えるのだった。


魔王と勇者の戦いは苛烈を極めた。

聖都ミスティリアンは、異世界から二人の勇者を招いた。


閃光の勇者 ハヤミミカ

剛剣の勇者 ハヤミケイゴ


2人兄妹の勇者はミスティリアンの先鋭と共に魔王討伐の旅に出るのだった。

最終決戦、魔将軍メーデルとの決戦で剛剣の勇者は自身の命と引き換えに魔王への道を切り開いた。

彼の尽力により見事魔王は討ち取られ平和が訪れるのだった。

剛剣の勇者の名前は未来永劫語り継がれるのだった。


「めでたし、めでたし・・・。」

「うわぁ・・・すごいすごい!」

母親の腕の中で幼子が目を輝かせる。

もう何度も読み聞かされた剛剣の勇者と魔将軍メーデルの話。

「わたしも、いつかこんなふうにぼうけんしたい!」

「そうね・・・アナタなら出来るはリリィ。」

母親は幼子、リリィの頭を撫でる。

「ほら、もうお休みの時間よ・・・。」

「えぇ・・・もっと起きていたいよ!」

「ダメよ、本当に強い冒険者は好き嫌いしないでしっかり寝るっていつもパパも言っているでしょ?」

「うぅ・・・でも・・・。」

「おやすみなさい、私の可愛いリリィ。」

母親はリリィのおでこにキスをする。


夜も更けてランタンの光が揺らめいている一室に夫婦が寄り添っていた。

「・・・リリィは本当にあの話が好きだな。」

「本当ね・・・。

私としては、もう少しおしとやかに育ってほしかったのだけど・・・。」

「血は争えないな・・・。」

夫の脳裏によぎるのはもう何年も会っていない妹を想う。

「ふふ・・・あの子を見ているとアナタの妹を思い出すわね。

きっと、あの子は強くなるわ。

だって、この私を倒した血筋なのだから。」

「そうだな・・・しかし、君とこんな風に穏やかな時間を過ごすなんてあの頃の俺は想像つかなかっただろうな。」

「私だってそうよ・・・アナタとこんな風に愛し合い子を成して・・・。」

「メーデル、君は今幸せかい?」

「・・・とっても幸せよ、ケイゴ。」


これは、魔王と勇者の戦いが終わり数年後の物語。

そして、物語は次の世代へと繋がるのだった。

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