第28話
開かれたカーテンからの太陽の光により、俺は目が覚める。
そこまではいい。いつも通りの朝だからだ。
ただ、一つだけ……いや、二つ? ……まぁ、とにかく、おかしな……本当におかしな点があった。
それが何かというと、まず一つ目はなんで俺がベッドの上にいるんだって話だ。
この部屋にベッドは1台しかない。
だから、俺は床で寝たはずなんだよ。
……いや、そもそもの話をするのなら、ナナミを買うってことは決定事項だったんだから、ベッドが2台置いてある部屋にしておけよって話かもしれないが、正直ナナミがあの奴隷商に来るのはもう少し先だと思っていたし、これで問題ないと思ってたんだよ。
今更部屋を変えようにも、この部屋を借りるために使ったお金は返ってこないみたいだし、今の状況でそんな無駄使いは出来ないと思ったのと、そもそも床で寝ることなんて村では当たり前だったこともあり、俺は確かに床で眠ったはずなんだよ。かなり遠慮するナナミをベッドに寝かせてさ。
そのはずなのに、なんで俺がベッドで寝てるんだよ。……意味が分からない。
そして問題はもう一つあった。
……なんでナナミが俺の隣で眠ってるの?
いや、ナナミがベッドにいること自体は問題じゃないんだ。
俺が昨日寝かせたんだしな?
……ただ、そこに俺がいること自体が問題なわけで……結局なんで俺がベッドで眠ってるんだって話に帰ってきたな。
ということは、やっぱりおかしな点は一つだったってわけか。……って、そんなことはどうでもいいんだよ!
は、早くベッドを抜け出そう。
これじゃあせっかく打ち解けられてきているナナミにも変に思われてしまう。
だって昨日、俺は確かに床で寝るから、ナナミは安心してゆっくりとベッドで眠って欲しいって言ったはずなのに、そんな俺がベッドにいるなんておかしいだろ!?
「ん……お兄ちゃん……」
「ッ、な、ナナミ? お、起きたのか? で、でも、これは違うぞ? 急にベッドで寝たくなったとかじゃなくて、なんか、目が覚めたら──」
「一緒……ずっと……一緒……」
俺の体に抱きついてくるナナミをよく見ると、ナナミはまだ眠っていた。
あ、なんだ寝言か。
「そうだね。一緒だよ」
まだ朝も早いし、昨日はナナミも色々とあったし、もう少しこのままでいることにした。
さっきまで焦ってた俺だけど、よく考えたら、そう焦ることでも無いことに気がついたしな。
だって、ナナミも言ってくれた通り、俺とナナミはもう家族なんだ。
昨日の俺はナナミは色々とあっただろうし、一人で寝かせてあげる方がいい、なんて考えてたけど、よく考えたら、一緒に寝てあげた方が良かったんじゃないのか? という考えまで過ぎってきてしまう。
……そう考えると、昨日の遠慮してきているナナミの瞳に悲しそうな色が浮かんでいたような気までしてしまう。
……明日からは、一緒に寝るように言ってみるか。
もちろん、拒絶されたら俺は大人しく床で寝る。今度こそ、何故かベッドで眠っているなんて失敗はしないつもりだ。
「……お兄ちゃん」
寝起きだからなのか、随分とハッキリとナナミの寝言が耳の中に入ってきた気がした。
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