夢を売る男

ただのネコ

第1話 男の見た夢

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。

 大きなトリの降臨する夢だ。

 いや、本当にトリと呼んでいいのかも怪しいものだが。羽毛が無い皮膜の翼は3対もあり、中ほどには鋭い爪すら備わっていた。頭には蟻めいた触角があり、長く伸びた嘴からは尖った牙が無数に突き出し、四本の脚は蟲の如き甲殻に包まれている。およそこの世のものとは思えないこのトリが、月光を遮るようにして遥かな空の彼方から目の前に舞い降りてくるのだ。

 最初に見たときはずいぶんと恐ろしく思ったものだ。だが今、寝台の上ではね起きた男の顔に浮かぶのは恐怖ではなく笑みであった。

「やれやれ、また儲かっちまうな」

 男はニヤニヤしながらつぶやくと、洗面台に向かった。

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