第7話 巨大ポコ大暴れ!

 タケルは平和な日々を過ごしていた。

 

 Ω-REXとの戦いを終え、世界は平穏を取り戻していた。


 ──しかし、それは突然の悲鳴によって切り裂かれた。


「きゃあああああ!!」

「怪獣だ!逃げろ!!」


 街中に響き渡る悲鳴。


 タケルは驚き、騒いで騒ぎの方へと駆けつけた。


 そして、驚きの光景を目の当たりにする。


 ビルを破壊し、車を吹き飛ばしながら暴れまわる巨大なハムスターの姿。


「なっ……!」


 タケルの心臓が凍りついた。


「……あれは、まさか……?!」


 信じられなかった。

 

 あの毛並み、そしてあの瞳。間違いなく、それはポコだった。


 だが、彼は明らかに暴走している。


「ギィィィィィ……!」


 操られ、破壊を続ける巨大な相棒の姿。

 

 タケルは歯を食いしばった。


「どうしてだ……?」


 タケルは焦りを感じた。誰かがポコを利用し、暴れさせているのは確かだ。


 ──その時、タケルの脳裏に数日前の記憶が蘇った。


 ──────────────────


 ──研究室にて。


 研究に没頭しているタケルの所へ、研究仲間のDr.ノートンが、歩み寄ってきた。


「タケル・サカモト君。君のペンダントの力を見たよ。何やらとてつもなく強いパワーを秘めているようだ。研究のため、少し貸してくれないか?」


 研究の方に夢中になっていたタケルは、つい貸してしまった。


 ──────────────────


 (しまった!まだペンダントを返してもらってない!)


 慌てて周りを見回すタケル。


「おい、Dr.ノートン!ペンダントの力を悪用しているのは貴様か!と、いうことは、この前のΩ-REXの破片の紛失もお前の仕業なのか?」


「ご名答。察しがいいな、タケル・サカモト君。」


 振り向くと、そこには白衣を着た男が立っていた。


 Dr.ノートンだ。


「ポコに何をした!!」


「私はΩ-REXを超える生命体を作りたかった。そして、その鍵となるのが……君の相棒の魂というわけだ。」


「……ふざけるな!」


「ははは、いいじゃないか。実に美しい暴れっぷりだろう?」


 ドゴォォォォン!!!


 遠くで、ポコが街を破壊している音が響く。タケルは怒りを込め、Dr.ノートンを睨みつけた。


「……ポコは…ポコはそんなことを望んじゃいない!」


 タケルは巨大ポコのもとへ駆けつけた。


「ポコ、お前は本当はこんなことをしたくないはずだ!!!」


 しかし──


 ポコは何も答えない。


 その瞳は虚ろで、まるで生気を失っていた。


「ギィィィ……!!!」


 鋭いパンチがタケルを襲う。間一髪でかわすが、彼の心は深い悲しみに包まれたままだった。


「ポコ……頼む、頼む思い出してくれ……!」


 だが、ポコの猛攻は止まらない。


 タケルは研究室にある光線銃で必死に戦った。しかし、最強巨大ハムとなったポコの攻撃を防ぎきれるはずもなく──


「ぐあっ……!!!」


 強烈な一撃を受け、タケルは吹き飛ばされた。


 その場に倒れ込むタケル。  


「やれ!そいつを始末するのだ!」


 Dr.ノートンは、不敵な笑みを浮かべながら、この光景を眺めていた。


 ポコは、タケルを手で拾い上げた。


 その時──タケルの頬を涙がつたい、ポコの手に触れた。


「……ポコ、頼む……!」


 震える手で、最後の力を込めポコの掌を殴った。


「ポコォォォォォォ!!!!!」


 タケルの叫びが、ポコの心へと届いたのだ。


「……タケル……?」


「戻ってこい、ポコ!!!」


「……ごめん、タケル。ボク……操られていたみたい……。」


「いいんだ、ポコ。」


 タケルは涙を拭って微笑んだ。


「もう一度、一緒に戦おう!」


 ポコがうなずく。


 そして──


「ハムスター・シンクロ・イグニッション!!!」


 眩い光が二人を包み込み、タケルとポコは再び一体化し、元の大きさに戻る。


 最強のハムスター、復活──!!


 「な、なんだと!?」


 Dr.ノートンが驚愕する。


「一度巨大化したら、もう戻れないはずだ!!」


 タケルはニヤリと笑う。


「俺たちの絆は、お前の計算なんかじゃ測れねぇんだよ!!!」


「必殺!ハムスター・グランド・フィナーレ!!!」


 身体中に炎をまとい、猛スピードで突進。

 

「う、嘘だぁぁぁぁぁ!!!」


 Dr.ノートンは爆炎に弾き飛ばされ、空の彼方へ消えていった。


 戦いが終わった。タケルは再び人間へと戻る。近くには、ポコの魂が宿る金属片が落ちていた。それをペンダントに収め、握ると心の中で声がした。


「タケル……ありがとう。君の声のおかげで助けられた。」


「いや、いいんだ。お互い様さ。」

 

 タケルは空を見上げた。雲一つない晴天だった。

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