【KAC20254】ホワイトデーの決意【2000字以内】
音雪香林
第1話 起き抜け。
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
五年前、まだ女子高生だった頃のバレンタインデー。
告白しようと放課後に彼を探していた時、校舎裏にいるのを目に留めて歩み寄ろうとしたけど、すぐ立ち止まった。
彼は学年で一番可愛いと評判の少女からチョコレートが入っているだろう箱を差し出されていた。
彼は照れた様子で頬を赤くしながら微笑んでそれを受け取り、お辞儀をした。
対面の彼女が感激したように口元を両手で覆い、ポロリと涙をこぼしたあと同じように頭を下げていて……私はそっと立ち去った。
明らかにカップル成立の瞬間だった。
私の恋は伝える前に散ったのだ。
ショックだったのか、バレンタインデーとホワイトデーになると必ずこの失恋した瞬間の夢を見てしまうようになった。
我ながらしつこいが、それだけ落ち込んだということだろう。
新しい恋でもはじまれば忘れられるのかもしれないが、社会人になると忙しすぎて恋とかいってられない。
いや、社会人でも恋をして結婚する人もいるので、たんに私にご縁がないだけであろうか。
このご時世、自分で努力してご縁を探さなければ自然に降ってくることはない。
私はどうも恋人を探す気になれないのだ。
五年前の夢にまで見る失恋がトラウマだとか、そういうわけではない。
ただ、合コンなどが肌に合わないのだ。
初めて会う人と一緒に酒を飲んだり食事をしたりが苦痛でしかない。
気を使いながら飲食をするのが嫌なのだ。
同じ理由で高級店に連れていかれるのも苦手である。
マナーを気にしながらの食事なんて味がしない。
っと、こんなことを考えている場合ではない。
出社しなければ。
今夜も残業かなぁ……年度末ツラすぎ。
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