(三)オレは25%中国人アルよ

「ほあぁ~……、一仕事終えた後の飲茶ヤムチャは格別アルな」


 本日の指導が終わり、ただいま飲茶中。それにしても不思議だ。あんな争いが起こったというのに……今は、すっかり穏やかである。色々あったけれど、こうしてゆったり茶を啜りながらおやつを食べられるなんて幸せだ。

 ああ甜点心……中華スイーツ!


「龍ちゃん! 胡麻団子を作ってきたよ!」

「龍ちゃん! 月餅、好きだったわよね?」

「龍ちゃん! マンゴープリンも食べな!」


 やはりオレは、九頭見道場のアイドルらしい……。健康クラスの受講者たちは今日も、オレのために様々なお菓子をくれた。手作りスイーツ、お気に入りのお店の商品などなど……とにかく盛りだくさん。謝謝。


「ほらね。母ちゃんに良いことをしてあげると、良いことが返ってくんの! だから母ちゃんの頼みとか、めんどくさがるもんじゃないのよ!」

「はいはい」


 ちなみに母ちゃんも、おやつを食べている。まあ確かに、母ちゃんも「どうぞ食べてくださいね!」と言われていたしな……。でもオレよりは食べないでいただきたいのが本音。オレがいっぱい食べたいので。


「それにしても、あんた本当に強いわね……。受講者の皆さん、もうキャーキャー言っていらしたわよ」

「えっ? もしかして全員、怖がっていなかったアルか?」

「そうねぇ……。騒ぎに気付いたのは、あんたが1人やっつける前だったし。あんた主演のアクションショーか何かが始まった……くらいにしか思っていなかったんじゃないの?」

「ほあぁ~、さすが人生のベテランたち……肝が据わっているアルね」

「ふーん、そう考える?」

「うん。やっぱり亀の甲より年の功アルよ」


 本当に、そうだと思う。一応オレは九頭見道場の師範代という立場だが、それでも若造に変わりはなくて……。まだ高校生のオレが先生となって、人生のベテランたちに物事を教えているのは複雑だ。それでも受講者の皆さんは、オレを頼ってくれている。ありがたいことだ。恐れ入ります。

 もちろん、こんなガキから何も教わりたくないと思っている人たちもいるが……それもそうだろう。さっきは数人の道場破りが来るなど、オレがナメられることは少なくない。


「……何だか、ややこしいわねぇ。日本の諺を出しながらも、喋り方は中華っぽい……」

「いかにもクォーターのオレらしくてヨロシ」


 そう、オレは日本人と中国人のクォーターだ。父方の祖父が中国人である。そんなオレは日本語だけではなく、協和語も中国語も話す。

 特に協和語は、ちびっ子が喜ぶ。オレが語尾に「アル」や「ヨロシ」を付けると「わー、中国人だ!」と、ほとんどの子どもたちはテンションが上がるのだ。オレもみんなのリアクションを見るのが楽しいから、積極的に協和語で話している……ちびっ子以外の相手にも。


「オレは結構、形から入るタイプだと思うアル」

「まあ、そうかもねぇ」

「分かるアルか、母ちゃん」

「なーんか分かるわよ」


 オレは「ほあぁ~、そうアルか」と返事をして茶を啜る……あ、なくなった。


「あとねぇ龍治」

「はいはい?」

「あんただって、肝が据わっているわよ」

「どこが?」

「この若さで師範代を務めているし、さっきみたいに悪者をやっつけちゃうし……すごいと思うわ母ちゃんは」

「まさかの親バカ炸裂アルね、母ちゃん」

「んもう、かわいくないわねぇ。褒めてんのに」

「哈哈哈」


 母ちゃんは膨れっ面。カップに新しい茶を注ぎながらオレは笑ったが、もし親父が見たらキュンキュンしまくりだろうか。

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