あの夢を見たのは、これで9回目だった。

杜侍音

あの夢を見たのは、これで9回目だった。


 あの夢を見たのは、これで9回目だった。


 親友が学校の屋上から落ちてしまう夢。

 私はいつも、必死に右手を伸ばすけれども──


 パンッ


 破裂音を目覚まし代わりに目を開く。


 また、あの景色……しかも夢を見るたび、徐々に再生される時間が遅くなっていく。

 これは予知夢なのだろうか。つまりは、親友が命を落とすその時が近付いているのかもしれない。



 親友は、小1で出会ってからずっとクラスが一緒だった。

 中高と同じ学校に進学して、これから先も一緒だなと思った矢先、高校二年生にして初めて別々のクラスとなった。


 お互い部活に入っていないから、登下校する時や昼ご飯を食べる時も一緒だったから、離れて寂しいなんてことはなかったけれど。

 

 ……けれど、夏休みが終わってしばらくして、親友は彼氏ができたと嬉しそうに報告してくれた。

 当時その報告を聞いて、幸せそうな親友の姿に私まで喜んだ。

 だって相手は学年で一番イケメンと称される男子だったから。

 密かに想いを寄せていたのは私も知っていたけれど、それが相手から告白されたらしい。そりゃ舞い上がる。


 それからは毎日彼氏と一緒に過ごしてて順風満帆そうに見えたけども……本当は何か悩み事があったのだろうか。


 付き合って半年。

 彼氏と上手く行ってないかもしれない。

 ここ一週間寝不足なのか目の下に隈ができているし、急にマスクを付けては人と話すことを避けるようになったことを私は知っている。


 ──一度、話をしてみよう。

 親友の私になら正直に話してくれるかもしれない。

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