第11話 配信チャンネル『花園』 (菖蒲視点)
「こんにちは! パーティ『花園』のフラワーガーデンチャンネルへようこそ!!」
私の名前は
今私の目の前に浮いている配信用のカメラに向けて挨拶する。
今日は週に一度の生配信日の日だ。
:始まったー!
:やっと一週間経ったか
:もう一週間か
:待ってたよー!
:あやめちゃん今日も元気だね
うんうん。視聴者も平日なのに結構来てくれてる。常連さんも所々見かけるね。本当は休日にやりたいんけど、それぞれ色々と予定があるから出来ないんだよね。
それよりも……………。
「……あの〜…みんなも挨拶して。…私が一人だけで盛り上がってるみたいで恥ずかしいんだけど」
私は後ろに立っている六人に声を掛ける。
「まあまあ菖蒲、視聴者は菖蒲の元気な姿が見たいんだよ!」
彼女は
私の肩を叩きながら雛菊はそう言うが、いつも色々と助けてもらって居る。幼馴染だからかなり馴れ馴れしい態度だが、不思議と悪い気がしない。
「ひーちゃん、あやちゃんが困ってるよー」
「ふぁ〜〜〜……眠い」
「
私と雛菊を、『あやちゃん』『ひーちゃん』呼びする彼女は
その隣で欠伸をしているのは
そんな眠そうな小百合を揺らして起こしているのは
:蘭ちゃんはいつ見てもカワイイなぁ〜
:見かけに騙されるな。怪力モンスターだぞこ
の子
:そのギャップがいいんだ
:小百合ちゃん相変わらず眠そうだね
:ちゃんと寝てる?
:夜遅くまで起きてない?
「……大丈夫。……学校で、寝てる…」
「小百合、授業では寝ちゃダメよ」
「テストで高得点取れば…問題ない……先生たちも…怒らない……」
:そういう問題か?
:寝てても高得点とか裏山
:菫ちゃん、もっと注意してあげて
:先生たちはもう諦めてるんだろうな
三人は雛菊含めて、同じクラスの学友で、かなり個性豊かなメンバーだ。
五人の中で、私が一番まともな性格だ。……多分?
「あのー先輩。そろそろ行きませんか?」
「雛、菖蒲ちゃんにベッタリくっつくのをやめなさい」
私を先輩と呼んでくるボブカットの少女は平田
雛菊を嗜めている長身でスタイルの良いポーニーテールの彼女は
そもそもパーティに入った理由も雛菊の両親からお目付け役として頼まれたからである。
「そうだね。そろそろ行こうか」
さてさて切り替えよう。
「今週は下層の55階層を探索して行くよ!」
「最近中層ばっかで攻略出来て無かったもん」
「ねぇ、それひーちゃんが前の装備壊したから資金貯める為に
「……つまり、ひなのせい…ふぁ〜〜…」
「小百合、いい加減シャキッとして」
「お姉ちゃん、黒川先輩の事はもう諦めよう」
「雛、ちょっと後でOHANASIしよう」
:いつも通り仲良いな
:ひなちゃんは少し反省しようね
:小百合ちゃん、そろそろちゃんとしないと菫
ちゃんに怒られるぞー
:蓮ちゃん、君のお姉さんの頭の辞書には『諦
める』って言葉は無いんだよ
:椿さんのOHANASI…ヒェ!(ガクブル
視聴者のコメントもまあまあ盛り上がってきたし、どんどん行こうか!
「それじゃあ、探索開始!!」
そして、私たちは探索を開始する。
:55階層は渓流の地形なんだな
:足場悪そう
:ここ、水中や林の中から奇襲してくるモンス
ターが多いらしい。知り合いの探索者が言っ
てた
視聴者のコメントにもあるけど、確かに足場は悪い。下手したら滑りそう。
「みんな平気ー?」
「大丈夫だよ」
「蘭もへいき〜」
「私も大丈夫よ」
「…ふぁ〜。…大丈夫…ついでに周りにモンスターの気配はない」
「大丈夫です。先輩」
「問題ないわ」
みんな大丈夫みたいだね。
それに小百合が周囲を索敵してくれているから安心出来る。気が利く所は小百合の長所だ。
それからも私たちは探索し続けた。何度か戦闘もしたが、各々の長所を生かした連携で上手く倒した。
そうして約1時間程歩いて、結構広い岩場に着いた。場所は大体川の上流辺りに居るだろう。
「取り敢えず、一旦ここで休憩入りまーす! また後でね!」
カメラを一旦はじに寄せてから、みんなそれぞれ体を休める。私も近くの岩に腰を下ろして座る。
:ここまで何回戦闘あった?
:7回だな
:多いな
ここまで来るのにかなりの数のモンスターと戦った。しかも全て奇襲されての戦闘だ。
:奇襲ばっかで精神的にもキツイだろ
:ここの階層殆どが奇襲するモンスターらしい
ぜ
:えっぐ
ほんとキツイ。流石下層だ。しかももう少ししたら深層だもんね。
ここまで全て上手く戦えたのも小百合の探知のお陰だ。感謝感謝。
……けど、……なんか引っかかるなあ。
「……菖蒲、…なんだかちょっと変じゃない」
「変って、何が?」
菫が私に訊いてきた
「モンスターの数よ。1時間ちょっとで7回も戦闘したのよ。しかも、本来群れない筈の『アサシンフロッグ』が5体で群れていたのよ。可怪しいと思わない? ひょっとして何かあるのかもしれないわ」
「………………そうだね」
菫に指摘されて心の引っ掛かりが取れた。
幾ら何でもこの短い時間でこんなに戦闘するのも、ましてや群れない筈のモンスターが群れてる自体可怪しい。
ああ〜、なんでもっと早く気づかなかったんだろ私!
「取り敢えず、みんなを集めて」
「分かったわ」
菫に頼んで、みんなに集まって貰い、さっきの菫とのやり取りを話した。
「確かに変だね」
「すーちゃんの言う通り、群れない筈のモンスターが群れるのは可怪しい」
「お姉ちゃんの予想通り、この階層で何か異変があったのかもしれません」
「…撤退した方がいい」
「小百合の言う通りね。なるべく急いだ方がいいわ」
五人も話を聞いて可怪しいと思ったらしく、急いで撤退する事にした。
「みんな急ごう。魔法組の雛菊、小百合、蓮を真ん中にしてタンクの菫は先頭、左右は私と蘭の二人。椿さんは後ろをお願いしてもいいですか」
「分かったわ」
「お願いします。小百合、一番負担掛けるかもしれないけど、貴女の索敵が頼りよ。私たちは貴女が集中出来る様に守るから、何かあったら言ってね」
「…うん、わかった」
私たちは急いで撤退の準備をする。
:ん? 様子が変だぞ?
:みんなーどうしたのー?
:なんかトラぶったか?
:全員やけに急いでるな
あっ、そうだ配信してたの忘れてた。
「視聴者の皆さんすいません! パーティ内の話し合いで大至急撤退する事になったので、配信はここまでになります! 詳しい事は地上に戻ったらお話します。申し訳ありません!」
:なんかすごい慌ててるぞ!
:え! 撤退!?
:何かあったんか!?
:事情は気になるけど、とにかく急いで!!
:安全第一だぞ!
よかった。視聴者の人たちも心配してくれてる。このまま中途半端に配信が終わるのはアレだけど、今は安全第一だ。
「では、配信を一旦ここで切りま————」
「ガァアアアーーーーー!!」
「「「「「「「!!??」」」」」」」
配信を切ろうとしたら、耳が割れんばかりの雄叫びが聞こえた。
そして、声の聞こえた場所を見ると、とんでもない物が目にはいった。
:なんだ!? 今の雄叫び!?
:うるせぇーーー!!
:何があった!!??
:状況説明、プリーズ!!
今の私は配信の事など頭に無い。
そんな事より無事に生き残れるかどうかも分からない。
見ただけで本能が感じてしまう。コレには絶対に勝てないと。
その怪物は、黒い皮膚と毛で、長い爪を持っていて、三つの頭がある巨体の熊だった。明らかにこの階層に居るモンスターじゃない。
「…イレギュラー」
小百合の言葉にみんなが思った。
頭が三つの熊のモンスターなんて聞いたことない。
「……ッ!! 私が時間を稼ぐ! あなた達は振り返らず走りなさい!!」
「つ、椿姉!!」
椿さんが一人で前に出る。けど、いくら椿さんの機動力でも、時間稼ぎなんて出来るかどうか……。
「シッ!!」
椿さんが熊に向かって走り出す。
きっと、機動力を活かして回避に徹するのだろう。
「ガッ!」
「フッ!!」
椿さんが熊の大振りの手を躱わし、背後に回る。
そして、突きの体制に入り右の頭の熊の喉元目掛けて突く。
「ッ!」
「ガゥ」
「えっ!?」
嘘!? 椿さんの背後からの高速の突きを簡単に躱した!
「ガァア」
「!!」
熊が体を反転させて攻撃する
椿さんがギリギリ反応して後ろに跳ぶ
「うわっ! ……えっ?」
ッ!!?? えっ!? 椿さんの速さに反応してる!! 今の動き、明らかに椿さんより速かった!
「ガッ!」
「ッ!! きゃあ!!」
スパッ
「ッ!」
椿さんの槍の穂先がまるで豆腐の様に爪で斬り落とされた! アレ、結構の硬い素材も使ってる筈なのに!!
「フッ!!」
椿さんが横に跳びながら移動する。獣なら直線は速くても横は苦手な筈。
「グゥ」
「えっ! 嘘!?」
嘘! 横の動きも椿さんより速い!! あの巨体でなんで椿さんより機動力あるの!?
「ガァア!」
「ウッ」
「椿姉ぇーーー!!」
椿さんが吹き飛ばされた! ヤバい、すごい出血してる!!
「!! みんな! やるよ!!」
あの熊からは逃げられない。なら、やれるだけやってやる!
「小百合、菫以外にはバフは最小限で良い。とにかくアイツにデバフを大量に掛けて! 菫、一番キツイだろうけどお願い。蘭と私は左右から攻撃。特に腕の爪の攻撃には注意して! 雛菊、気持ちは分かるけど今は目の前のモンスターに集中して。あなたは魔法で牽制と攻撃をお願い。蓮は椿さんの回復を!」
私は急いで指示を出す。
今私たちが生き残るにはこの状況をどうにかするしかない。
「…『パワーアップ』『ディフェンスアップ』『スピードアップ』『インテリジェンスアップ』『マインドアップ』……『ハイパワーダウン』『ハイスピードダウン』『ハイディフェンスダウン』『ポイズン』『パラライズ』『スタン』『スロー』」
小百合は自分に掛けられるバフデバフを掛けた。これで少しはマシになるよね。
蓮は椿さんのもとに走っている。
後は私達がなんとかしないと。
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