第18話 知り合い
わたしには「ひとりで家を出るな」と言って、ショータは毎日昼前に出掛けては夕方帰って来る。
行かないと言っていたけれど、予備校に行ってるんじゃないかと密かに思っている。
ショータは、外に出る時は絶対について行くと言って、実際そうしてくれているけれど、一度家に帰って来てから、また出かけるのは申し訳ないと思ってしまう。
玄関のドアが開く音が聞こえて駆けって行った。
「おかえりなさい!」
「ハチ公?」
「ひどい」
「うっそ。どっか行きたいの? 行くよ」
「少し休む?」
「全然元気」
駅に向かって2人で歩いた。
「ねぇ、あれからもう何日も何もないし、もう大丈夫じゃないかなぁ?」
「だめ」
「ショータ大袈裟だよ」
「だめ」
駅前にあるクリーニング店で服を受け取って店を出ると、外で待っていたショータが手を差し出した。
「持つ」
「ありがとう」
来た道をまた戻っていると、スマホを見ながらラーメン屋から出てきた男性とぶつかってしまった。
「あ、すみません!」
男性がすぐに謝ってきた。
「いいえ」
「あれっ?」
その声で隣を歩いていたショータが男性の方を見た。
「やっぱショータじゃん!」
「お前……なんでここにいんの?」
「なんでって、駅の向こうっ側のアパートに住んでるから。ショータはなんで……」
そこで男性は、ショータとわたしを見比べた…
「誰?」
「どー見てもイモだろ?」
イモ?
芋?
「ははっ。マジか」
男性が笑った。
「もう行けよ」
「へいへい」
男性はこっちを見て会釈すると、駅の向こうに向かって行ってしまった。
「ほら、帰ろう」
「知り合い?」
「まぁ、そんなとこ」
こっちに知り合いがいるなんて思ってもいなかった。
予備校の友達だったのかな……
家の近所だったし、クリーニングを取りに行くだけだと思ってたから、メイクはしていたものの、Tシャツにジーンズという格好で、髪の毛はただのポニーテールだった。
もっと、かわいい格好をしていたら、芋なんて言われなかったのかな……
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