技術編①-2 (2015/4/1)

 薄暗い部屋の中で、パソコンのファンが千切れそうな悲鳴を上げていた。古びたワンルーム、ぐらつく安物の椅子、手垢のついたパソコン。この部屋のどこにもカネの匂はしなかった。


「作業完了しました・・ご確認お願い・・・いたします。」


 辻がフーっとため息をつき、時計を見る。

(今日からM2か・・・)


 飲みかけの発泡酒を呷り、煙草に火をつける。風に乗って、酔った大学生の喚き声が聞こえてくる。心の中で悪態をつく。


(馬鹿な奴らだ。なまじ偏差値が高いのが悪質だよな・・・本当の意味で馬鹿だ)


 エンジニアのバイトをし、貪欲にスキルアップを図る辻からすると、大多数の大学生は猿に見えていた。学歴という鎧を身にまといつつ、学生という免罪符で青春を謳歌する彼らを許せなかった。

 同時に、自分とは異なり、今を楽しむ彼らに対して嫉妬の想いがあること。その事実から辻は目を背け続けていた。それを認めること、つまり、自分を否定すること、その勇気が辻には無かった。


 2本目の煙草を吸い終わり、デスクに戻るとちょうどメールが返ってきていた。作業への指摘と追加の作業依頼。イライラと貧乏ゆすりをする。


静寂の後、タイピング音が響き始める。

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