第4話 天誅・勝手にお仕置き
「ハロー。ヤーさん。私強盗、金を出せ」
「なんだてめぇ…ッ!?」
「おお!やるね」
門番に斬り掛かったら、なんとギリギリで両腕を犠牲に防がれた。
一撃で倒せないあたり…やっぱりこいつらはしっかり訓練されてる。
しかもダンジョンにも潜ってるから、かなり強い。
「まっ、寿命が1秒延びただけだね」
「がっ―――」
今度こそ首をはね飛ばし、息の根を止める。
しかし、中ではすでに襲撃の気配を察知して警戒態勢が敷かれてる。
まあ、そんな事はどうでもいい。
門を蹴破って中へ入ると、いきなり斬り掛かってきた雑兵2人を両断する。
「バケモンが…」
「アイツ、『迷宮の狂犬』か…?」
「マジっすか兄貴。やべーっすね」
どうやら私のことを知ってる奴が居るらしい。
『迷宮の狂犬』…まあ、間違いではない。
金が欲しけりゃ誰だって襲うし、勝てなさそうな相手にも取り敢えず喧嘩を売ってみようの精神で昔はやってた。
今は強くなって勝てない相手の方が少ないから、雑魚から巻き上げてる。
それこそ昨日みたいに。
「よう。特に恨みはないけけど、これからアンタたらとゴタつきそうだから先に潰しに来たわ。死んでくれ」
自分で言っててもわけの分からない理由で、次々と連中を狩る。
兄貴とか言われてるやつはまあまあ強そうだったけど…私の敵ではない。
他の雑兵と違い、3発で倒せた。
他が2発か1発だから、まあまあ強いと言える。
「ん〜…手応えが無いね」
次々と雑魚どもを蹂躙しながら歩く。
幹部クラスも出てきたけどそこまでの実力は無かった。
無傷のままボスの部屋にやって来ると、いきなり銃弾が飛んでくる。
銃弾は正確に私の眉間を捉え、撃ち抜く――事は無かった。
ちょっと痛かったけど、すぐに軌道がそれで何処かに飛んでいった。
「アンタが『くみちょー』ってやつ?特に恨みはないけど死んでもらうね」
「かっ―――」
有無を言わせずブッコロコロすると、護衛と思しき奴らもすぐに倒す。
私を前に護衛を後に控えさせていた胆力は、組織の長として素晴らしいかもね。
まあ、相手が悪かった。
私は言葉を交わす気なんて無い。
話し合いでどうこうしようとしてる時点で間違いなんだよね。
…それに、作戦も失敗だ。
「見えてんぞ?」
「なっ!?」
気配を隠し、ボスを犠牲にしてでも私を殺す。
そう言う作戦だったんだろうね。
ただ甘い。
私はその程度では倒せんよ。
残念ながら、私に隠密や隠蔽、認識阻害などの情報系の力は通用しない。
全て『嫉妬』が無効化する。
そして、『嫉妬』の力はそんなものじゃない。
「あっ……がっ…ぐぁ…」
「特別大サービス。私の能力『嫉妬』の主要な能力は3つ。1つは無効化、1つは模倣強奪能力、そして最後に…強烈な弱体化効果を与える。要はデバフだね」
「あ……ぁ…」
「ん〜?やっぱり、これを使うと大抵のやつは生存に必要な機能すらまともに働かなくなるから、勝手に死ぬね」
『嫉妬』は神すら殺す能力だ。
人間なんかに使えばデバフで人を殺せる。
それどころか、仮に状態異常無効とかの耐性があったとしても、無効化能力で耐性を消せる。
実に素晴らしい力だと思わない?
…まあ、その対価として一回嫉妬心に駆られるとどうしようもないくらいソレが羨ましくなって、自分でも感情を制御しきれなくなることかな?
でも羨ましいと思わなければいい話。
それか、すぐに模倣強奪能力を使って自分の物にすればいい。
私は無敵だ。
……ん?
「こいつ…くみちょーじゃないな?」
よく考えてみれば、雑魚しか相手してない。
幹部クラスも…下級幹部ばかり。
上級幹部は今コロコロした暗殺者だけ。
仮想敵の情報収集は怠ってないから知ってる。
…身代わり?
……ああ、居たね。
確か影武者が居るとかいう話があった気がする。
くみちょーは…あそこか。
「逃がさんよ。無駄に能力のレパートリーは多いからね。私の探知からは逃れられない」
能力強奪で奪ってきた能力には、当然探知系の能力もある。
それらの能力を使ってくみちょーを探し出し、逃げようとしているのを見つけた。
建物を破壊しながら一直線にくみちょーの所にやって来ると、丁度車で逃げようとしてるところだった。
「どっかーん!」
私がそう言うと、突然車が爆発炎上する。
奪ってて良かった爆発能力。
やっぱり単純な能力は単純に強いよね。
炎に巻かれて護衛の上級幹部も死んだっぽいし、今回は金目の物は奪わずに帰ろう。
…と言うか逃げよう。
爆発炎上と言ったけど、正確には超大爆発超大炎上。
使ったこと無い能力だったから分かんなかったけど…これ、使用者の練度に応じて威力が上がるタイプの能力だ。
そして、私が奪った能力は全て『嫉妬』にストックされる。
私は『嫉妬』の練度がかなり高い。
危険な能力だからね。
その分ちゃんと練習してる。
「捕まりたくないからね。スタコラサッサー」
すぐにその場を離れ、急いで家に帰ってくる。
どうやらすでにニュースになっていて、いつの間にか設置されていたテレビをリョウと一緒にリョウと見る。
「さっきまで無かったよね?このテレビ」
「うん。死体が入って来るのが終わったあたりで増えた」
「ん〜?……『嫉妬』を使った後に増えたかな?」
「能力を使えば結界が強化される…?そんな話聞いたこと無い…」
「私のは特殊だからね。いや、待てよ?」
ふと思い当たる節があったので確認してみると、どうやらソレで間違いないらしい。
『嫉妬』の解放率が87%になっていた。
ちなみに解放率なんて言っているけれど、数値が減るごとに使える力が増えるので、封印率と言った方がいいと私は思う。
「なるほど…リョウちゃんは気にしなくて良いよ。これに関しては」
「そう、なの…?」
「うん。気になるかもだけどね。あと、こういう事は今後もあるかも」
「そうなんだ……で、これってレヴィーのだよね?」
「ん〜?やったのは私だよ」
私達が見ているのは、緊急生中継で流れている能力テロのニュースだ。
…言わずもがなやったのは私だ。
アナウンサーの反応を見る限り…今のところ、警察は暴力団の抗争か何かと見てるらしい。
ただ…何しろ、規模が私が言うのも何だけどバカだ。
車だけを爆発したつもりが、家を十件くらい巻き込んで大爆発している。
被害はそれだけに留まらず、さらに奥にある家に爆炎が津波のように押し寄せ、もう凄い数の家が燃え上がってあら大変。
酷いことをする人も居るものだなぁ…
「火が消えないんだって?そんな能力まで持ってるの?」
「ん〜?まあねぇ?」
火が消えない、か…
爆炎の能力にそんな効果は無かったはず。
…と言うことは、嫉妬の影響を受けた特殊な炎。
嫉妬の炎…いや、悪魔の炎とでも言うべきかな?
略して『魔炎』。
この能力は、これから魔爆炎と呼ぼう!
リョウと一緒に夜ご飯を食べると、その後布団の上に押し倒して『夜食』を堪能した。
ちなみにリョウは家事能力が私よりもあってムカついたので、今日は激しめにいただいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます