第2話 我慢は体に毒らしい

ダンジョンで人をぶちコロコロして3日。

死体は案の定見つかって警察案件。

犯人特定の目星は立っていないものの、死体の状況から見て強盗に襲われたと言う方向で捜査が行われているらしい。

実際は私がカッとなってブチ転がしたんだけどね!


まあそんな事より…


「う〜ん…良いね」

「何が良いんですか、この犯罪者」

「ふふふ…そそるねぇ…」

「キモ…」


彼から奪った金目の物を売っぱらって手に入れた金で馬鹿みたいにお酒を飲んで歩いた帰り道。

私は運命的な出会いを果たした。

なんとめちゃくちゃ好みの女が居たんだ!

私は男も女もどっちもイケる。

でも、攻める側でありたいから女のほうが好ましい。

そんな中見つけちゃったんですよ、外見がそれはもう私好みの女子大生。

18歳、私とは10歳差。


「早く解放して下さい。今ならまだ通報しません」

「あらあらお可愛いこと。どの立場でそんな偉そうな事が言えるんだい?お嬢ちゃん?」

「くっ!」


ここは私の結界玉の中。

彼女は鎖に繋がれて自由に身動きが取れない…と言うのは語弊があるか。

正確には、私の世界である荒れ果てた神社と気味の悪い山から出られない状況。

私が許可をしないとこの世界から出られないように制限を掛けてある。

それが、四肢に付けられている途中で切れた鎖の役目。


「大人しくしてるなら痛いようにはしないよ。あと、私には従順でいようね?ワッツ・ユア・ネーム?」

「……東リョウ」

「リョウちゃんだね?うんうん。可愛いね」


ただの女子大生と、腐っても冒険者。

力の差は歴然であり、痛い目に遭いたくないリョウちゃんは、とりあえず私の言う事を聞いて耐える道を選んだ。

従順な子は好きだよ、私。


「男性経験はあるかい?」

「…ない」

「じゃあ女性は?」

「ない」

「私の事、どう思う?」

「死ね」

「あら可愛い」


ツンツンしてて可愛いね。

コレくらい強気な女は大好きだよ。

その上顔もスタイルも良いんだから…妬けるよね?


「う〜ん…今食べちゃうか、後にするか…どっちが良い?」

「解放して」

「それは無理だね。飽きたら解放してあげる」

「サイアク…」


私のことを心底軽蔑している目。

ツンツンするのは良いけど…その目はキライだよ。


私は容赦なくリョウの顔を引っ叩く。

リョウは悲鳴を上げ、床に倒れ込んだ。


「何す――ぁがっ!?」

「私には従順であれって言ったよね?可愛らしい反抗なら見逃すけど…その目はやだね」

「ぐ、ぅ…」


倒れたリョウの腹を踏みつけ、少しずつ体重を掛けていく。

苦痛に歪む顔を見て、私はゆっくりと体重を調整。

涙目になり、助けを求めてきたあたりで足をどけてあげる。


しゃがみ込んでその頬に両手を伸ばすと、まずは一口頂く。

柔らかい唇は、とてもとても美味なもので、これが彼女よファーストならなお素晴らしい。


「これからよろしくね?愛玩動物のリョウちゃん?」

「………」


私のことを睨みつけるリョウ。

その目に軽蔑は宿っていないものの…燃え滾るような憤怒がある。

その火が消えないように、かと言って燃え上がらないように調整しないとね。

…さて、小腹がすいたしお茶漬けでも食べるか。


「私はちょっと軽食を食べてくるけど、欲しいものとかある?」

「自由」

「神社の中は自由に使っても良いよ。山は…迷子になったら私でも見つけられないから、死にたくなったらどうぞ行ってらっしゃい」

「チッ!この変態!」

「性犯罪者って呼んでよ。なんちゃって」


一旦結界玉の中から出て部屋に戻ると、冷凍庫にあるご飯を電子レンジでチンして、お茶漬けの元を掛けてケトルのお湯を注ぐ。

どうせお茶漬けが食べたくなると思ってたから、帰ってきてすぐに沸かしておいたのだ。


ぱぱっと軽食を済ませて私は再び結界玉の中へ。

そして神社の中で大人しくしているリョウを見て…不覚にも心底驚いてしまった。


「…何をしてるの?」

「そういう事がしたいんでしょ?」

「いや…そうだけどさ…何してるの?」


何故か服を脱いで下着だけの姿になったリョウ。

ちょっと理解出来ないね。


「こうしたら、暴力を振るわれずに済むんでしょ?」

「まあね。でも良いの?」

「嫌に決まってるでしょ!?でも…!」


…殴られるよりはマシと。

その反抗的な目は正直だね。

素晴らしい。


「いい覚悟だね。じゃあ、頂こうかな?」


リョウを優しく押し倒し、下着を脱がす。

そして上から覆いかぶさって…私はリョウの味を堪能した。








「もう12時か…じゃあ私は戻るね。布団はある筈だから、それを使ってね」

「…始めから使ってほしかった」

「背中痛い?なら治してあげるよ」


じっくり3時間堪能したために、リョウは背中が痛いらしい。まあ、畳の上だからね。

回復魔法で治してあげると、私は何時までも私を睨むリョウを置いて外へ出る。

明日もダンジョンに行くだろうし、早く寝よう。

布団に飛び込むと、そのまますぐに眠りにつくことができ、3日ぶりの安眠を謳歌することが出来た。

ちなみにリョウを弄ぶ夢を見てしまい、朝起きてすぐに結界玉の中へ行くことになった。


「このっ!変態!」

「朝からこんなっ!こんな!」

「離して!許さない!」

「痛っ!?話と違う!!」

「最低!この人間のクズ!!」


朝っぱらから私に食べられてしまったリョウは、それはそれは実に良い声で鳴いてくれた。

…勘違いの無いように言っておくと、私は罵倒されて興奮してる訳じゃない。

力のない弱者が、必死に藻掻き足掻いている姿に興奮してるんだ。

だから、こうやって無意味な抵抗をしてくれた方が嬉しい。


「…どうしてこんな事をするの?」

「んん?」


たっぷり朝から堪能したことだし、ダンジョンに行こうかと思っていた私に質問を投げてくるリョウ。

答える必要はないんだけど…まあ、答えてあげよう。


「我慢は良くないよ。自分の欲に忠実に!」


我慢は体に毒だ。

やりたい事をやれないのはストレス。

ストレスは体に毒。

つまり、やりたい事をやれない事、我慢は体に毒というわけだ。


「……」

「反応が薄いね?」

「米と何かご飯と一緒に食べられる物を買ってきて下さい」

「え?無視?」

「何故か電気も水道もガスも通ってて、家電も一通り揃ってるけど食べ物は無いので」

「…ホントに気が強いね。好きだよ、そういう所」

「私は大っきらい!」

「わぉ!大きな声」


最終的には私が脱いた服を無理やり押し付けられ、半ば追い出される形で現世に戻ってきた。

精一杯自分は余裕だとアピールしようとするその姿…実に素晴らしいと思う。

この先もそれが変わらないように、面倒だけどお米は買ってあげよう。

空腹で死なれても困るし。

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