プロローグ

第1話

「はぁぁ、やべー」



「だから早く寝ようって言ったじゃん! 」




朝からバタバタと走り回る私達。



……昨日の夜

いや、正確に言えば日付は今日


深夜に釣りの特番をやるんだと張り切って


録画して見ればいいのに



『リアタイで見てなんぼ! 』



とか、訳の分からない事を言って


明け方近くまで

テレビにかじりついてた健ちゃん。


そしてそれに強制的に付き合わされた私。



──で、結果寝坊すると言うベタな展開。




「えーっと……。


昨日作った資料

どこ置いたんやったかな……」



ノートパソコンの前で

ハテナ顔で首を傾げてる。



全く仕方ない人



……でもそんなとこが可愛くて好き。




「健ちゃん、自分で鞄に入れてたよね? 」




そう言うとハッとした顔になり




「そうや!入れた入れた!

さすがオレのスイートハニー」




スイートハニーって……。


ニッコリふざけた言葉と顔に

悔しいかな、笑ってしまう。




「ほら、ふざけて無いで!

会議間に合わないよ、川上部長」




もう時間ギリギリ

背中を押して玄関へ。


靴を履くのを後ろから見てた。




「じゃあ、行って来るわ」



「うん、行ってらっしゃい」




微笑む健ちゃんの顔が近付き

唇が触れるだけのキスをして


また慌ただしくドアを開け出かけて行った。




嵐の去った後の静けさ……だ。

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