第8話 話が聞けるようになったら
ギフトの制約。それは能力を選ぶ際に、選ぶ能力の強さによっては、制限や条件を付けなくてはならないというものである。
例えば、俺の使う風のギフト。風はそこまでチートと呼べるほどの強さを持たないので、選んだとしても、ほぼ制約無しに使うことが出来る。
しかし、無敵のようなチート級の能力を選ぼうとすると、莫大な制約をつけなければいけなかったのだ。
無敵なんてのは、ギフトをもらった人間なら誰しも思いつく。
俺も一度は自分のギフトを無敵にしようかななんて、瞬間ではあるが考えたりもした。
でも、普通の人間にはそれが選べない。
なぜなら、無敵を選んだ代償として付けなくてはならない制約が、何回死ねば使えるんだというほどのリスクしか無かったのだ。
無敵の範囲を
片手だけでいいなら無敵にはなれるかも知れないが、それだと他の部位は元のまま。
全範囲攻撃などされようものなら、数秒で片手だけ残って終わりなのだ。
「俺が無敵を使える理由か? それを教えるのは……ちょっとな」
聞かれたことはしっかり説明しろと、医療人の心得だと教えられていた俺だが、制約についてはそう簡単に教える訳にはいかなかった。
制約を知られるのはギフト持ちにとって弱点になりかねないことなのである。
俺のギフトに付与された制約を知っているのはごく少数の近しい人間だけ。
それも教えたかった訳ではなく、教えておかないとまずいこともあったのだ。
「無敵が使えるなんて……反則ではないか、魔王!」
ギフトの説明をしている間に立ち直ったのか。
バーミリオンはわめき散らかすのを辞め、砕けた竜殺剣の
そして、竜殺剣の能力『自己修復機能』を使い、砕けた剣を元の綺麗な状態に瞬間で戻すのであった。
「そうか、ズルいか?」
「反則だ、反則。攻撃も防御も出来ないなど、反則と言わずして何だ!?」
バーミリオンは俺を指差し、無敵能力を待つことに怒りを
「じゃあ、1個いいことを教えてやるよ。制約について説明してやらなかった分だ」
「何だ、いいこととは!」
俺はバーミリオンに耳寄りな情報を提供してやることにした。
それをバーミリオンは素直に聞こうとする。
「あれ、そういやお前、魔王の言うことは聞かないって言ってたよな。なら教えなくてもいいのか?」
「なっ、き、貴様!」
さっきまで魔王は悪だ、死ぬべきだと言って俺の話を聞かなかったいたバーミリオンが、弱点を教えると言ったとたんに聞く耳を立ててくる。
都合良すぎ、そんぐらい俺の話を素直に聞いてくれれば血を見なくて済んだのにな。
でもまぁ、言ったからには教えてやるか。
「無敵なのは2番星だけ。俺になら攻撃は通るぞ」
「何!? 本当か?」
「信じるかどうかは、お前の自由だけどな。で、どうする、まだ続けるか?」
俺はバーミリオンを少し挑発する。
2番の攻撃が通じるとわかった段階で、もうバーミリオンは敵じゃ無いと思っていた。
それに、俺自身が無敵じゃ無いと聞いたバーミリオンがどうするのかを見たかったのだ。
もし戦いを辞めて、今みたいに俺の話を聞くのであれば、これ以上争うことはしない。
そもそもは異世界から来た勇者の話を聞きたいから、ここに来てる訳だし。
でも、攻撃が通じるとわかってまだ戦う姿勢をとるなら、やむおえないが、少し痛い目にあってもらって、バーミリオンには反省してもらおうと思う。
「どうする?」
「……ふざけるな」
「はい?」
「ふざけるなと言っているのだ!」
まだ続ける意思があるかを聞くと、バーミリオンは剣を床に突き立て、俺を睨んでくる。
「私の名前はバーミリオン・フルボディー。弱きを助け、強きをくじく、この世界を救いに来た勇者なんだ。この国の弱ってる民のためにも、私は貴様を倒さなければならないのだ!」
バーミリオンは登場した時と同じように、自分の意思を大声で叫んでいた。
「……」
「どうした魔王、私を前にして震えたか?」
震える……そうだな、震えたな。
お前がまだ国民のためとか言ってんのは、震えるぐらいムカついてるんだよ。
俺はバーミリオンを倒す方向で考えることにした。
すると、ギフト発動時に言葉を交わしたクロパチが、頭の中で俺に進言してくる。
〝殲滅するなら5番星を使いますか? 打ち出しは可能ですが?〟
5番は却下、今は必要ない。
俺は『倒す』とは言ったが、『殺す』とまでは言って無い。
俺は自分の角を少し小突く。
〝マスター、痛い、痛いです。〟
俺から生える黒い角は小突かれると、痛いから辞めてくれと言ってくる。
俺の角は『
クロパチは自律型デバイスで、主に星の管理をしているのだ。
能力を考える際にふと思い浮かんでしまったのか、『
「今回は2番と4番だけでやる」
〝了解、マスター〟
クロパチの進言を却下して、俺は2番と4番でバーミリオンを倒すことにする。
「角と
俺が1人で角をいじっているのを見ていたバーミリオンは、戦いでよそ見とは何事だと言いながら、『
「また不意打ちか、でも!」
俺は2番星を指でなぞるように操作し、自分と斬撃の間に置く。
2番星は向かってくる『
「何!?」
「おーい、届いて無いぞー」
「くぅぅ……なら、これでどうだ!」
バーミリオンは『
一瞬で5連の斬撃を飛ばしてくる。
そして驚いたことに、その斬撃は俺に向かって一直線に来るのではなく、
「やるな、ならば!」
俺は2番星を維持しているリングを自分から2メートル離れた位置に配置し、リングをマニュアル操作で回転させる。
周りを高速で回転する2番星は、範囲に入って来た斬撃を全て撃ち落とすのであった。
「悪いな、勇者。俺は痛いのが嫌いなんだよ」
「そ、そんな馬鹿な!? 今のは私の最終奥義だぞ!」
自分の出せる最大出力で放った技を、平然と防がれてしまったバートランド。
トールの2番星を出し抜く策は思いつかない。
「それで終わりか。なら次は俺の番」
「いや、待て、待ってくれ!」
「待たねーよ。人の話が聞けるようになってから転生してこいや!」
バーミリオンは戦意喪失していたが、ここまできたら一発入れると決めていたんだ。
悪いが、痛い目見て、反省してくれ。
「2番星のリングをパージ。4番を出力最大に。バートランド、またどっかでな!」
「や、やめっ」
「
空中に浮かんだ無敵の黒球。それを風の力により最高速で打ち出す。
無敵の球をくらうバーミリオンは、「私は勇者何だぞー」と叫び声だけを残して、壁を突き抜けて謁見の間から飛び出し、遥か彼方へと姿を消すのであった。
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