第14話 変化と無双
周りで待ち構えていた兵士達が一斉にレジスに向かう。
閉鎖空間での多対一の戦闘。拳銃を使う兵士は居ない。とはいえ、袋叩き状態には変わりない。
剣槍の穂先を突き出したレジスは、迫る兵士に向かって突きを繰り出す。
先頭の兵士の肩口を捉え、すぐに引き抜くと身を翻して剣槍の穂先の反対側、石突を別の兵士の顔面にぶち込む。更に飛び上がって別の兵士の顔面に飛び膝蹴りを食らわせる。
着地と同時に駆け出したレジスは、凄まじい速度で兵士達の間を駆け抜ける。
兵士達の剣撃をくぐり抜け、およそ人とは思えない驚愕のスピードに、ステージで見ていたシャノンの表情が凍りつく。
何だ、あの速さは!? 強化魔法か? にしても速過ぎる!
ステージ上で立ち尽くすシャノンを尻目に、ホールの中を駆け回り、剣槍を振り回して次々と兵士達を打ち倒していくレジス。
そして駆け回るレジスが壁際へと着いた。
その瞬間にシャノンが叫ぶ!
「撃て!撃ち殺すんだ!」
その声に反応した数人の兵士が腰の拳銃を抜いて、レジスに向けた。
いかに速くてもこれだけの数に同時に撃たれれば躱せるはずはない!
死ねっ!レジス!
レジスは左手を前に突き出した。揃えた人差し指と中指が兵士達に向けられる。
ヒュンッ!ヒュンッ!……
レジスの左手から発射された拳大の光弾が、拳銃を構えた兵士達を次々に捉える。
光弾に撃たれた兵士は体を痙攣させ、次々と倒れていく。
何だ、アレは!? メルトスピアか!?
今朝見たメルトスピアとは違う!別の攻撃魔法なのか!?
シャノンが見ている前で、レジスを取り囲んだ兵士達が次々と倒れていく。ホールにいた兵士の半数以上が、既に床に転がっていた。残った兵士達は何とかレジスとの距離を詰めようと試みるが、レジスの光弾の連射がそれを許さない。
数人の兵士が、倒れた味方を盾に拳銃でレジスを狙い撃つが、それを難なく躱して光弾を撃ち込んでいくレジス。
味方の体を盾にしながら、数人の兵士がレジスに向かって突進を始めた。構わず光弾を撃つレジスだが、光弾はその肉盾に阻まれ、突進は止められない。
「ちっ……」
レジスは横に跳んで、直進してくるその兵士の突進を躱す。光弾が途切れた隙に数人の兵士がレジスを狙い撃つ。
キィン!キィン……!
銃弾を剣槍で弾くレジス。
な……何だとっ!?
そんな事が…………!
シャノンが仮面の下で目を見開く。
銃弾を弾いたレジスは床を蹴り、拳銃を構える二人の兵士を剣槍の射程距離に捉える。
振り下ろした一撃で、二人を同時に吹っ飛ばすと、振り向きざまに別の兵士に向かって光弾を数発撃ち込む。
撃たれた兵士が拳銃を握りしめたまま崩れ落ちる。
左手の光弾(メルトスピア)と、剣槍。
更に人間離れしたそのスピードで次々とホールの兵士を倒していくレジス。
ものの数分で、50人いた兵士はシャノンを含めて五人にまでその数を減らした。
ステージにはシャノンと3人の兵士が、倒れた兵士達の中で仁王立ちしているレジスを見下ろしていた。
仮面で見えないが、兵士達の顔は恐怖に
レジスがステージを見上げながら、弾丸を弾いた時についた剣槍の傷を確認する。
シャノンはレジスを見下ろしながら、
「バケモノめ……」
「ふんっ……」
「いやぁ〜、素晴らしいです!レジス!最っ高です!見ていてスッキリしましたよ!」
パチパチと手を叩きながら、満面の笑みを浮かべるラミーナが、倒れた兵士達を避けながらレジスの背後に近付いてくる。
「魔女、お前の仕業なのか? これは?」
「ありゃら……見てなかったんですか? 全部このレジスが倒しましたけど?」
「とぼけるなっ!」
うふふと妖しく嘲笑うラミーナ。
魔女のその妖艶な笑みに、シャノンと周りの兵士は無意識に後退る。
自分の隣に並び出たラミーナに、肩越しにレジスが声をかける。
「いつ気付いた?」
「昨日の夜です。貴方が私を抱いた時に……」
「抱いた記憶はないがな……」
「ありゃら? そうでした?」
妖艶な笑みを浮かべ、ラミーナがレジスの顔を覗き込む。目を細めてその顔を見下ろしレジス。
「ノリが悪いですね」
「笑えんジョークだ」
「うふふ……、でも昨日の夜というのは本当ですよ。メルトスピアが定着してから貴方の体に変化があったんですよね?」
「ああ」
◇◇
1年ほど前。
魔術書から発現した攻撃魔法メルトスピアがレジスの左腕に定着してから、彼の体には三つの大きな変化が現れていた。
一つは攻撃魔法メルトスピアが使えるようになった。最初の頃は威力を調整出来なかったが、使用しているうちに徐々にそれが出来るようになっていった。
他人に知られると厄介になると感じたレジスは、メルトスピアを使える事は誰にも話さなかったし、魔獣討伐をする時もメルトスピアは使わなかった。
しかし無属性無詠唱で何発も使用出来る攻撃魔法だ。いざという時は使用出来るように、一人で野営をした時に何度も練習をしておいた。
二つ目はその左腕が何かに引っ張られる感覚があった事。最初は刻印が刻まれたことで出来た違和感だと思っていたが、いつまで経ってもその感覚は取れなかった。
しかもその感覚に抗うことは出来なかった。
魔獣ハンターとして、”最果ての地”を探す旅をしていたレジスはその感覚に引きずられるように自らの足を東へと向けていた。
三つ目の変化は身体能力の飛躍的な向上だった。それはメルトスピアが定着して、初めての魔獣との戦闘で気付いた。
強化魔法を使わずとも、魔獣の攻撃がスローに見え、自身の跳躍は魔獣の頭上を軽々と飛び越える事が出来るようになっていた。
筋力もかなり向上していて、その戦闘では力加減が分からず、これまで使っていた剣槍を破壊してしまってほどだ。
結局その剣槍は修復不可になり、また新しい剣槍を購入する羽目になったのだ。
◇◇
「あの時だな……」
「そうです。レジスが私と同衾した時に……」
「…………黙れ」
「次は同衾しても構いませんよ?」
「…………ホントに殴るぞ?」
「そんなに全力で拒否されると、さすがの私も傷付きますよ?」
その二人の様子を見ていたシャノンが苛立ちを抑えた声で話し出す。
「いい加減にしろよ? 魔女とバケモノが……」
シャノンが隣にいる兵士に顎で合図する。すると、側にいた兵士達が慌ててステージ奥の扉へ走り出し、ステージにはシャノンだけが残る。
「ありゃら……お仲間さん、全員逃げちゃいましたよ?」
シャノンがスッとステージの後方へと下がる。すると、入れ替わりでさっきの兵士達がそれぞれの手にボウガンを装備して戻ってきた。
シャノンの表情に冷笑が戻る。
「いかに魔女とバケモノであっても、ボウガン相手に戦えるか?」
「? レジス…何ですか? あれ」
「ボウガンだ!対魔獣用の……。デカい拳銃みたいなモンだ!とりあえず逃げるぞ!」
「えぇ~……」
シャノンの周りに戻ってきた四人の兵士。
それぞれの手に持ったボウガンの銃口が、レジスとラミーナに向けられた。
「よし!撃ち殺せ!」
シャノンの号令がホールに響いた。
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