おお大阪 ~エルフの魔法使い見習い少女が、異世界に召喚されて8年目の大阪に密入国。テレビドラマの出演オーディションに参加するために、官憲の目を逃れながら奮闘するお話~
1-1 大阪の外におる人も応募できますからね
1-1 大阪の外におる人も応募できますからね
× × ×
こんにちは。私は北トルカ村のコミリです。ちょっとだけ魔法が使えます。今はまだ修行中の身ですが、いずれ叔母のような一人前の魔法使いになりたいです。
そんな私にはもう一つ、夢があります。村のみんなには内緒ですよ。実は私、テレビドラマに出てみたいのです。
去年のカナ祭りで手に入れた本が全ての始まりでした。あっ。えっと。カナ祭りは皆さんの言葉だと古本市に近いです。
私が
するとビックリ。おうちの窓に異世界の光景が映し出されたのです。窓の向こうでは短耳族の男女が聞き慣れない言葉を話していました。背景の川辺には無数の灯がともされ、彼らを見守っているかのようでした。涙ぐんだ少女が、可哀そうなことに若者から
やがて老人の甘い歌声が流れ始めると、見たことのない文字が右から左に流れてきました。もうわけがわかりません。
私はあっけに取られてしまいました。
「これが
叔母もビックリしていました。
叔母の話では、近づいたら地元の守衛に追い返されてしまうそうですが、一部の魔法使いは負けじと『異世界受像法』で内部の様子を覗いていたのでした。
それからというもの。私はすっかりテレビの
中でもテレビドラマには心を盗まれたと言いますか。昔話で言うところの「テベリ師のオオモン」ですね。あっ。伝わりませんよね。ごめんなさい。オオモンは日本語だと『自撮り』が近いかもしれません。
とにかく私はドラマが大好きになりました。面白くて、悲しくて、楽しくて、嬉しくて、切なくて、やりきれなくて。
何より。出てくる人たちがみんなキラキラしてて。
私もああいうふうにテレビに出てみたい、素敵な女の子の役を演じてみたいなぁって。自然と思うようになったのです。
「あ……え……い……う……」
私は修行の合間に皆さんの言葉を学ぶようになりました。
叔母の
読む。書く。聞く。話す。
基本を繰り返すのは魔法の修行と変わりません。半年も経たないうちに──あっ。こっちの半年はそちらでいう2年でしたっけ。えへへ。今後はなるべく日本の暦に合わせますね。ともあれ。私はテレビの言葉をかなり理解できるようになりました。
ドラマ以外のニュースやバラエティ番組も楽しめるようになり、私のテレビライフはどんどん充実していきました。
同時に。私の中には焦りが
なぜなら。
あと2年後には、大阪が元の世界に帰ってしまうからです。
准賢者ガラチナ様が魔法連合に誓いを立てたのは『
皆さんの暦で言うところの10年間限定の都市召喚でした。これは私のような魔法使い見習いにとっては天地創造に等しい偉業なのですが、テレビドラマの女優志望者としては心苦しいタイムリミットに他なりません。
あと2年。あと2年で何もかも幻のように消えてしまいます。
早く大阪に行きたい。テレビ局に行ってみたい。でも。
それなのに。今はテレビドラマに出演したいなんて。魔法の修行を後回しにしたいなんて。言えるわけがありませんでした。
ある時、私は気分転換にテレビを
今日の司会は漫才師が務めていました。おそろいの青い背広が似合っています。
『──企画中の新作ドラマ、ついに出演者のオーディションが始まるわけですが。視聴者の皆さんからスターが誕生するかもしれません』
『ぜひぜひ、こぞって。ご応募ください』
『大阪の外におる人も応募できますからね』
『いや、外の人らがテレビ観てるわけないやろ!』
「あわああああああっ!?」
私は叫びました。
全身に火が付いたような気分でした。
善は急げです。タンスからお祭り用のオシャレなモンコジャラ、ええとチュニックに近いドレスをいくつか取り出しまして。姿見の前で自分に似合いそうなものを選びます。持ち主の叔母には内緒です。白地の刺繍入りが良さそうですね。
衣服が決まれば、胸元に見習いの記章を
さあ、いざ行かんや。
叔母宛の手紙を残し、私は密かにおうちを出ます。夕焼けに彩られた地平線の彼方、天空へそびえたつ巨大な塔が並んでいました。
あそこにテレビがあるのです。
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