いっぱしの探索者

 「ーーーはい。こちらがDランクの証明となります」


 そう言われてタグを首にかけた。特殊な素材を使っていて、非常に丈夫らしい。あれから帰還して、『青の邪鬼』の真核と武器を売り払った。二つで30万円した。


「こちらが『魔法』についての申請書です。あちらで加入後に提出して下さい」


 "魔法"はダンジョン外でも使える。治安維持の為に、各国のダンジョン庁に該当する組織に情報を登録する。もし魔法を使える人が暴れても、対処がしやすくなるとか。


「そんなことしないけどねぇ〜」


 お隣の国では頻繁に情報を更新する必要があるが、日本は割と緩くて半年に一回で済む。これでいいのか?とは思うが、そういう時間は他国よりも遥かに少ないから問題にはなっていない。


 大体、専門の特殊部隊は噂ではS、Aランクのみで構成されているとか言われてる。そんな地形破壊が当たり前の存在に喧嘩売る奴なんてネットでネタにされるだけだろ。


 書き終えて提出した。改めてDランクで出来ることが簡単に教えられた。ざっくり振り返ると、『地域外のダンジョンにも行ける』、『常時依頼以外も受けれる』、『魔法の講習の参加資格がある』だけ覚えとけばいい。


 Cランクになるとダンジョン外の依頼とかもある。例えば護衛依頼、企業依頼、指名依頼、殆ど無いらしいが国からの依頼もあったりするそう。


 面白そうではあるが、Bランクから受けれる依頼でないと普通に潜った方が稼げるらしい。ただ、スポンサーとかそういう伝手を作るために依頼を受ける人も多いらしい。


 護衛依頼で有名人間近で見てみたいけど。まだまだ先だね。


「ブーブー」


 電話だ。


「ん、はい。もしもし」


「あ、お兄ちゃんダンジョンから帰ってたんだ。タイミング良いね」


「丁度ね」


「今日、お昼外食するからお兄ちゃんにも一応連絡したよ。一緒に食べる?」


「行く行く」


「伝えとくね。そっちまで迎えに行く?」


「お願い」


「は〜い。じゃあね」


 そういえば今日お父さん休みだったな。どこ行くか聞けばよかった。武器を返却して、シャワーを浴びた後に駐車場に向かう途中、ミッチェルさんに声を掛けられた。


「田中さ〜ん」


「はい。ミッチェルさん、どうしました?」


「ちょっと伝え忘れた事がありまして」


「はぁ」


「Dランクからレンタル武器では通用しにくいモンスターが現れます。そこで探索者の方に新しい装備を買う事をお勧めしています」


「そうなんですか?」


「はい。斡旋もしていますので、わからない方があれば専用窓口が御座いますのでご利用下さい」


「わざわざありがとうございます」


「こちらこそ失礼しました」


 そう言って、早足でミッチェルさんは去って行った。


「武器かぁ」


 最初は知識のある人に聞いた方がいい気がする。今度行くか。


 お昼は昼から営業している焼肉屋で食べた。妹が焼いている肉をさり気なく奪って来たので、野菜を肉以上に多く焼いてあげた。


 母から「怜、最近太ってきたからね〜」と言われて明らかにダメージを受けていた。確かによく見ると顔が明らかにふっくらしている。お腹を見たら「太ってないもん!」と殴られた。


 何も言ってないじゃん。翌日から妹が朝の基礎練に参加し始めた。運動着が少しピッタリしているためか、見るからに輪郭がぽっちゃりしていたが何も言わずに、今日は妹に合わせて運動した。






 

 今日は電車を乗り継いで大型ショッピングモールに来ていた。ここは普通の店ではなく、探索者専門店が集まるモールで、県内でも一番大きい場所だ。


 周囲も探索者らしい人が多い。奇抜な服を好む人が割と多いので一目でわかる。漢ビキニアーマーで潜るとか正気か?筋肉は鎧では無いぞ?

 稀に変態が現れて警備員に連れて行かれる人が何人もいた。


 最近、探索者は"変態"と言われている原因を見てしまった。色んな人を見ながら進むと目的の店に着いた。


「ここか」


 本日のお目当ては近接武器大手の『武元』だ。シンプルなデザイン、耐久性に優れ、値段も安めという初心者にお勧めの店と言われている。

 ベテランの人でも愛用する人も多く、前衛に長年愛されている店らしい。


 レンタルしていた武器も『武元』製らしい。


「いらっしゃいませ。本日は何をお探しですか?」


「片手剣を探しに」


「畏まりました」


 実は短剣か片手剣のどちらかで迷っていた。練度で言えば短剣の圧勝だが、将来性を考えると片手剣か両手剣が良い。

 今のダンジョンは人型モンスターが多い場所なので短剣でも通用するが、それでも大型モンスターでは短剣はデメリットが目立つ。


 両手剣も良いが、最初は片手剣の方が扱い易そうなのでこちらにした。短剣は短剣で今後も使う予定なので、余裕があれば購入するつもりだ。


「こちらのコーナーが片手剣が展示しております」


 ショーケースの中にずらりと色んな剣が並んでいた。お、レイピアも有るじゃん。


「ご要望の特徴はございますか?」


「両手剣と片手剣、二つの丁度間くらいの大きさが良いです」


「それではこちらのエリアになります。形状は似ていますが、素材や加工法の違いが御座います」


「Dランクになったばかりで、初めて使うのにオススメなのありますか?」


「そうですね……」


 店員さんが普段の戦闘スタイル、剣の振るときの癖などプロ目線で色々探してくれた。最終的に"鋼鉄"、"骨鉄ボーンアイアン"の二択に絞られた。


 鋼鉄はCランク下位のモンスターまで通じる強度を持つらしい。値段も安く、多くの人が最初は鋼鉄製を購入するらしい。ただ、メンテナンスをしっかりする必要があるらしく、購入した場合はメンテナンス方法を教えてくれるそうだ。


 骨鉄は『鉄のように固い骨』を使用した"モンスター素材"由来らしく、Dランクまでしか通用しないらしい。値段は鋼鉄と同じだが、メンテナンスフリーで、罅が出来たり、折れたりしても鉄粉を使ってすぐに修復できるらしい。


 価格はどちらも50万円する。お金はあるが、どちらか片方しか購入は出来ない。この後の装備を考えると尚更無理だな。


「メンテナンスは必要ですが、ある程度雑に扱っても問題がない鋼鉄。強度は落ちますが、利便性が高い骨鉄。どちらもDランクでは十分にご使用可能です」


 ここまで僅差だと悩むな。だけど、


「骨鉄を買います」


 訓練で沢山使うと考えたらこっちの方がいいだろう。デザインも濃灰色でかっこいい。


 鞘とホルダーは初回サービスで貰った。大金をキャッシュレスで一括払いするのは爽快だな。腰に剣を納めて、装備品を買いに向かう。

 胸当てと脛の装備だけでいいかな。腕は邪魔そうだし。


 今回は『メタルズ』で購入予定。武元の服バージョンに相当する大手企業だ。予算は事前に30万円と決めていたので店員さんに殆どお任せする形で終わった。日常生活では邪魔なのでリュックに入れた。

 

 今度の探索が楽しみだ。


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