第18話 金庫番
「事の発端は、セシール王国のポマロ商会の会長がウォーター商会会長に人身売買の話を持ち込んで来た事だった。最初は断っていたらしいが、セシール王国では、人身売買に王侯貴族が絡んでいて、たとえ此の事が明るみになっても処罰されない上、高額な報酬が約束されていたそうだ。」
「でも、この話はセシール王国では処罰されない。と言うだけで、このパルル王国では処罰されるんですよね。」
「そうだ処罰される。所が、ウォーター商会会長が、リガード公爵にこの話を持ち掛けてみると、リガード公爵は大層な乗り気になり、この話を全て仕切る様になったそうだ。」
「欲に目が眩んで、善悪の判断が出来なくなってしまったのでしょうか?」
「今回の取引では、二十人の子供を要求されていたそうだが、攫った子供達が十二人と足りなかったため、貧民街でアマル達を見つけ、この子供達なら高く売れると狙ったらしいが、ロロアに気づかれ失敗した。」
「では、あの時の五人がそうだったんですね。」
「そうだ、工事現場にまたその子供達が集まっている、と言う情報が入り、取引時間も迫って居たために、こちらの状況も調べずに乗り込んで来たらしい。」
「それと、パルル国王はセシール王国の国王に、ポマロ商会会長の所業についての書簡を送り、護送の準備に入ったそうだ。セシール王国の国王はこの人身売買の事は知らなかったようで、パルル国王に謝罪と、関係者の調査と処罰、それと子供達の行方追跡の調査を約束されたそうだ。」
「子供達が一日も早く、救出される事を願うばかりですね。」
「そうだな、リガード公爵家については、爵位降格と財産と領地の没収。公爵家当主と誘拐に加担した者はすべて生涯奴隷落ち、この件に関与していなかった者達は、権限なしの子爵となる。 ウォーター商会も同様の処罰を下した。が商人のノウハと、販路は一暢一旦には行えない。との事で、商会の規模を縮小し、頭主と屋号は替えて残す事にしたそうだ。」
「分りました。」
いつの間にか、オステオ様が部屋から出て居なくなっていた。
「そして没収した財産で、今迄、誘拐された子供達を救い出し、親の元に戻す事にした。」
「そうなのですね、それは、良かったです。彼等の未来に幸多い事を願うばかりです。」
「それから、アマル治療院の金庫番はどうするんだい? もう決まったのかい?」
「それがまだなのです。どなたか、お願いできる方に心辺りありませんか?」
「その事だが、父上からの提案だ、リガード公爵家で表の金庫番をしていた、ミカエルと言う者が居る、とても優秀で、他の貴族のお家事情についても把握しているようだ。アマルに一度会って貰いたい。との事だったが、会って見ないか?」
「私の様な者の手伝いをお願いしても宜しいのでしょうか?」
「構わないと思うが、貴族も相手にするのだ、貴族の見識に長けた者が傍に居た方が、やり易い面もあると思うぞ。今回の件で罪のない優秀な人材は此方で引き抜いて置いた。」
「分りました、お会いさせて頂ければ助かります。」
「今、其方に待たせている。オステオ卿には、もうすでに了解は貰っていたのだが、只、アマルが貧民街の人に頼みたいなら、それも良いだろうと思っていたのだ。」
「お心遣い、ありがとうございます。」
アルノー様が、手を叩くと、扉が開きオステオ卿と一緒に、このお屋敷の執事さんの様な品の良い男性が入って来た。彼は、私の前に立つと、
「アマル様、お初にお目に掛かります、ミカエルと申します。」と、胸に手を当て挨拶してくれた。
私もスカートの両端をすこし引き上げ、あたまを下げ、
「アマルフィと申します。お目に掛かれて光栄です。」と挨拶を交わした。
その後、四人でテーブルを囲みながら、今後私が行おうとしている治療院は、貧民街や庶民を中心とした場所である事。治療費も在って無い様な物である事。
私自信も貧民街の孤児である事や、治癒の魔法が使える事と治癒の魔法を授かった経緯を告げた。
また、治療院を継続する為の資金を貴族や商人の治療費で賄おうとしている事等も話した。
また、この場所では治療院だけでなく、識字率を上げるための学習施設と、炊き出し施設を併設している事、それと、この場所で働くのは、平民を装った一部の警備兵以外は全員貧民街の人達である事や、それぞれ各部署の報酬と手当等を正直に告げた。
「それでも、お手伝いして頂けますか?」
「はい、大まかな事はお伺いしていましたが、正直に全てお話して頂けるとは思いませんでした。私で良ければ、お手伝いさせて頂きたいです。」
「ありがとうございます。」
「それと、識字率と社会に出るための所作の講師をお探しなら、元リガード公爵邸で教育を担当していたフィーネとカリーナがお薦めです。」
「ありがとうございます。でも教育施設と炊き出し施設長を貧民街のマリアにお願いしているのですが、それを嫌がられたりしないでしょうか?」
「恐らく彼女達なら大丈夫だと思いますよ。会って見ると分かるかもしれません。」
「分りました。一度会って頂けたらと思います。」
「では、御呼び致しましょう。フィーネ、カリーナ入っても良いそうですよ。」と、扉に向かってミカエルさんが声を掛けると、扉が開いて女性の方が入って来た。
その女性は、私の前に立つと、スカートの両端を少し上げ、
「初めてお目に掛かります、フィーネと申します。」「カリーナです。」と挨拶をしてくれた。
私も同様の仕草で、
「初めまして、アマルフィと申します。」と、挨拶を返した。
その後、先程ミカエル様に話した事と同じ事を伝え、マリアの事も告げた。
「気分を壊したなら正直に言って下さい。」と言うと、
「そんな事は気になりません。むしろ面倒事を遣って頂けるなら、教育係に専念出来るのでとても助かります。」「私も同様です。」と、言われてしまった。
「では、ミカエル様、フィーネ様、カリーナ様此れから宜しくお願い致します。」
「私達の事はミカエル、フィーネ、カリーナと呼び捨てでお願い致します。」
「では、私の事はアマルと呼んで下さい。」
「「ではアマル此れから宜しくお願いします。」」」
「では、アマル金庫番も無事に決まった事だし、今後何かと入用が増えるだろう。と、父上から、先日の治療費と謝礼金を預かっている。それと私からの治療費と謝礼金だ。ミカエルに預けて置こう。それとアマル、ミカエルとフィーネ、カリーナは治療院が出来るまで、この、オステオ卿の屋敷で世話になる事になっている。」と、アルノー様が何でもない事の様に告げてくれた。
「オステオ様に奥様宜しいのでしょうか?」
「アマル、気にしないで下さい。アマルに受けた物はこんな事では返せませんよ。」
「ありがとうございます。子供達も増えたのに本当にありがとうございます。」
「アマル、そんな事は気にしなくて大丈夫です。それと、治療院が出来るまでの間に、この屋敷に居る子供達の教育をフィーネとカリーナにお願いしましょう。そうすれば、開院後がスムーズになると思いますよ。」と、アンジェの母が提案してくれた。
「分りました。私達にお任せください。」」と、フィーネとカリーナも気安く答えてくれた。
「では、みんなの事お願い致します。」
「では、フィーネとカリーナに皆を紹介し、早速教育をお願いしましょうね。」とフィーネ達を連れて、アンジェの母は部屋を出て行った。
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