【必読】人生を豊かにする方法論・実践
@ambaair
op,雷門から電波塔へ
人生を良いものにする数少ない方法のうちの一つを、皆さんは知っているだろうか?あまり知られていない方法だから、特別に教えて差し上げたい。
それは「散歩」と呼ばれる習慣のことなのだが、もちろん知っている人も賢明な読者諸兄にはいるだろうことも、理解した上で。あえて説明を入れさせていただくと、そのものを目的に含んだ移動のことである、とさせていただきたい。
私はこれを趣味の一つにしている。皆さんは、どうだろうか?道を歩く時、そばの建物の壁に貼っつけられた使い道のないドアを見かけたことはあるだろうか。すれ違いざま世間話に耳を澄ませたことはあるだろうか。あなたの住む街の四季を感じられる香りだかを知っているだろうか。知っているならば、それは幸せなことだし、知らないなら、これから知ることもできる。嬉しいことだろう。
まあ、そんなふうに皆さんのことを気遣うのはここらでやめて、私の散歩を共に感じていってほしい。
ちなみに私は今、日傾き師走の風吹く
この雷門、人が多い。「煮付けが食える出店があるらしい」と消えた友人、名を亀田という。亀田くんを見つけられる気がしない。
亀田くんは消えた。もういない。私の足は石畳を蹴る。踵は雷門を向いている。人力車のやかましい客よせの声が人ごみに溶けるのを味わいながら大きな橋を渡ると川の幅広なことに驚いた。陽光がビル壁に反射して私の目を焼き右手のフェリー、何あれ?ああ、河畔レストラン的なあれね。紅く染まっていて綺麗だ。少し見入ってしまった。
向こう岸に着いたが、人がうんと少なくなった気がする。壁や地面が青い。ビルが太陽に覆い被さっているからか。
あまり特徴のない、チェーンの料理屋とコンビニがひたすら並んでいる。さらに歩く。「おいコラ置いてくなよ」背中で聞く言葉は亀田くんのもの。
「よう、お久」
と適当に返す。いつも二人でこういう流儀でやっているから。
「菓子、買ってきたけどいるゥ?」
食べ物攻めとは、なんていやらしい奴なんだ。
「欲しいですいませんでした」
これもまたライフハック、すぐに謝ったらある程度賢い人には勝てる。
気がつくと遮られずに注がれる日の光が道を明るくしていた。柔らかいオレンジ色の空気の中を並んで歩く。リュックを前向きにからって雷門で買ったらしい菓子を入れ込むところに手を伸ばす。「おかしください」というメッセージが正しく伝わり、流れていまにも胃のなかだ。
「そういえば、金のうんこ像ってどこよ」
「もう通り過ぎたでしょ。近づいて見るもんでもないから気にしなさんな」
「確かにそれもそうか。うんモニュ君「うんモニュ?ああうんこ
思いを馳せつつ、しかし私たちは歩みを止めない。
新たに見えた川に沿って進む。鼻が曲がりそうになった。河辺の店はみんな小綺麗だというのに、何これ。腐った匂いというか、とかく嗅いだことのない臭さがそこらに漂っているのがあまり嬉しくない。ていうかうんこ臭さも少しある。
「うんモニュか?うんモニュが原因なのか?この匂いは」
つい声が漏れた。別に悪いとは思わない。もはやこれくらい漏れたとて、という気持ちがあるからだろう。
「そんなわけないでしょ、風評被害すぎるわ」
少し、反省。
確かに川をのぞくと、魚影が見えるし、鳥も水面に浮いている。川に押される鳥はのんきに羽の手入れをしているようで、これはずっと見ていられる。
川を離れて住宅街へ分け入る。ここらはビル多しとはいえ、この手の建物はよほど凝ってなければ割とどこも同じなのだろう。あまり驚きがない。というよりは。
「「ここどこ」」
場所があやふやになる。これは怖い。それでもずんずん進むと印刷屋なんかの看板も見られる。
「あまり見たことがないので少し気になるが、あえて進む。」
おっと、またもやこぼれてしまった。
「……いや進みなさいよ」
「へい」
あっという間に電波塔へ着いてしまった。楽しい散歩であった。
こういうので、どうだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます