S級冒険者の息子、父を超えるため死闘を繰り返していたら【狂人】と呼ばれるようになっていたんだが? 〜この男、魔力はないが剣を持たせたら最強です?〜
さい
第1話
「なあ、知ってるか?」
「ん、何がだよ?」
アルカナ冒険者アカデミーの男子トイレにて、二人の生徒がしょんべんをしながら話していた。
「一年に面白え奴がいるって話だよ」
「白髪でテンパのやつだろ? 知ってるぜ」
「ああ、そいつだ。なんでもそいつは、魔力がねえってのにこの学校に入って冒険者になろうとしてるんだぜ?」
「だが、実力は本物なんだろ?」
二人はしょんべんが終わると、手を洗うことはなく、男子トイレから出て廊下を歩く。
「らしいな。ったく、魔力なしでどうやってんだか」
「気になるか?」
「ああ、もちろん」
「ならよ、どんなやつか見に行ってみようぜ?」
二人は顔を合わせて、ニヤリと白い歯を見せ合った。
なんでも、その男はよく放課後の校庭にある一本の大きな木の下で寝ているらしい。
その情報を知っていた二人は、放課後になるとその木の下へとやってきた。
「あいつだよな……?」
「白髪にテンパ……間違いねえ、あいつだ」
木の下に寝転がる一人の男子生徒。
間違いない。
やつだ。
がしかし、覇気が感じられない。
「本当かよ?」
「全然強そうじゃねえよな?」
「な、なあ……」
「なんだよ?」
男子生徒Bは、足元に転がっていた石ころを拾い男子生徒Aに見せる。
「本当に実力が本物かよ、確かめてみようぜ」
「や、やめとけって。本物だったらどうすんだよ、俺たち弱えぞ?」
「そん時はそん時だろ」
次の瞬間、男子生徒Bの持つ石ころがボワっと炎で燃え出した。
「た、確かに気になるし……わかった。やろう!!」
二人は目を見合い、コクリと頷くと、男子生徒Bは心臓をバクバクと鳴らしながら石ころを奴に向かって投げつけた。
石ころは奴の頭部に当たる、直前に火が消え、一瞬にして石ころが粉々になった。
「「え?」」
何が起こったのか分からずに、二人は口をポカリと開けて、驚く。
確かに、木の下には奴がいた。
それは、間違いのない事実だ。
だが、いつだ?
どのタイミングで奴は消えた?
「よお」
気づけば、奴は手に剣を持ち、二人の目の前にいた。
「ひ、ひいい……」
と、男子生徒Aは後退る。
「人の睡眠を邪魔するとは、いい度胸だな」
この瞬間、二人は感じ取った。
魔力による忌々しさではない。
他の何かによる"圧"を。
言葉にすることのできないような、圧巻に二人は震え出す。
「お、お前何ビビってんだよ!! 相手は一年だぞ、俺たちは二年だア!!」
男子生徒Bが男子生徒Aに喝を入れる。
「そっ、そうだけどよ!! こいつは関わっちゃダメな人間だ!! 謝って許してもらおう!!」
「そんなダセエことできねえよ!!」
奴は剣を右肩に担ぎながら、
「許す? んなことするかよバカヤロー。お前らは人の睡眠を邪魔したんだぞ?」
「そそそ、それは謝る!?」
「お前、そんなに怖気付くなよ……ふん、俺に任せろ!!」
男子生徒Bが剣を抜き出そうとしたその時だった。
「あん?」
奴による威嚇により、男子生徒Bは慌てて剣から手を離して、土下座をし出した。
「すすす、すみません!! 調子乗りました──ッ!!」
男子生徒Aもまた、それに続き土下座をし出す。
「おっ、俺もでーすッ!!」
ふんっ、と奴は鼻で笑いながら、欠伸をして言った。
「なら、金よこせ」
と。
「「え?」」
「俺は今、パチンコがしてェんだよ!! 文句あるか?」
そんな奴の名は──ザンバ=ダヒョ。
魔力を持たない代わりに、剣を持つと身体能力が急上昇するそんなスキルを持つ男である!!
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