第6話

ゆらりゆらりと鬼に近づくに連れ俺の心には憎悪と復讐心、悲しみだけが募っていく。


(主様の居ない世界。ならもう生きる意味もない、最後にアイツを…アイツを殺せるなら俺は悔いはない。)


負の感情に心が蝕まれていくのが分かる。

もう戻ることはできないかもな。

…それでもいい、いっそのことおちてしまおう。


「ふっ野狐一人に何ができるというんだ?」



「黙れ、できるできないじゃねぇ。俺は貴様を殺す、ただそれだけだ。」



それ以降の記憶はなにもなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「っ…!ここは…俺の部屋…か…」

飛び起きるとそこは俺がいつも過ごしている部屋だった。

嫌な夢を見た気がする。

それも長い夢を。

しかしそれはやけに現実的で実際にあった記憶をもとにしたかのようだった。


「ん?あ、目覚めた?五月クン!」

ぼんやりしているとのんきな声が聞こえてきた。

「夢生…?」

「…もしかしなくとも寝ぼけてる?まったくー思い出したいとか言った君が忘れてどうするの!また、姫奈サマのこと忘れるの?あれは夢でカタスナって言ったじゃん。」

「っ…」

ああ、そうだ、あれは夢なんかじゃない。

俺の…俺にとって大切な人とのキラキラした宝物のような記憶だ。

こんな大切な記憶を忘れていたのか…それも姫奈鬼と出会ってからずっと思い出すこなんてなかった。

なにやってんだよ…忘れるなんて、


でも、これで分かったことが一つある。

姫奈鬼を殺した鬼。

あいつはまだ生きている。

俺の憶測が正しければあいつはまた姫奈鬼を狙っている可能性が高い。

だとしたら…あいつを探せば姫奈鬼を見つける事ができる、かもしれない…

なら俺のやることはただ一つだけ。



アイツを今度こそコロス。



「アノー、殺気立っているところ悪いけどさー、五月クンはその鬼のことシッテルワケ?」

未だベッドの上に座っている俺の顔を覗き込んではジト目で見てくる。

「いや、知らない。」

「え?」

「ん?」

こいつはぽかんとしては知らないのかよとでも言いたげな表情になる。

…逆になんで知ってると思ったんだ?

俺とあいつは初対面、名前なんて知るはずもない。

でも格の違いを見るにそれなりに有名な鬼だと思う。

それでも名前とかはなにも知らない。

もしかしてあれか…死んだ後に有名になったとかか?

「無知すぎる…。まぁ五月クンが死んじゃった後にゆーめーになったからね。そいつは靉蘭として名を知られてるけど今はもうチョースーパーウルトラマイナー過ぎて知ってる人ほぼ居ないんダヨー?ちーなーみーにっ!今は人に化けて暮らしてるヨン。」

俺がもんもんと考えているとこいつはため息を付き説明してくれた。

(てか、マイナーなのかよ。)

でも靉蘭?どこかで聞いたような…


ふといつだかの昼休みに聞こえてきた際の会話を思い出した。

『なぁ、知ってるか?三年の先輩に靉蘭 幽鬼って人がいるんだけど、その人。結構な問題児でこないだも人殴って病院送りにしたんだってさ。』

『えぐ、。その先輩ってあれだろ?人じゃないんじゃないかってくらい力とか強くて喋り方じじくさい人だろ?』

『へぇ…怖いな、そいつ。』


靉蘭幽鬼…もしかするとそいつが…。

確かめる価値はある、学校に行って探るか。



俺は今、そいつがいるであろう教室へと向かっている。

教室に着けば軽く深呼吸をし引き戸に手をかけ開ける。

先輩方の視線が集まるもそんなことはどうでもいい。

「靉蘭先輩は居ますか。」

「…我になにか用か、ガキが。」

はっきりとそう告げると一人の生徒が近づいてきた。

そいつは明らかに柄が悪く、目の下には酷いくまができていた。

それ以前にそいつからは不穏な空気が漂ってくるのが分かる。

前世の力を取り戻した今の俺になら分かる。

その空気と同じものをまとっていたのはあの鬼、靉蘭だけ。

つまりこいつはあの鬼で間違いはないだろう。

なら、やることは唯一つだけだ…



「先輩。少し裏庭で話しませんか?」

黒い感情を含んだ笑みでこいつを見てはそう言い放った。

するとこいつは鼻で笑い、俺を見下ろすように低い声で言った。

「…よかろう。我も今貴様に話したいことができたからな。」



…前世と同じ結末にだけは絶対にさせない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る