第8話 妹
ここにいても暇なだけだしお母さんと
話でもしようかな。
とりあえず高校の件は夕飯を食べている最中にさりげなく言おう。
別に単刀直入にそれを言っても変わらないと
思うが夕飯など場が温かくなっていて食べ物を食べら脳に半分くらい持っていかれるのでなんとなくマヒしてお願い事が通るような感じがする。
(多分誰もがこれ経験したことがあるよね?
確か・・・食事中は幸せホルモン(満腹)が発生するとかなんとかで相手のハードルの壁が少し小さくなるらしい。
昔これを使って親にバスケットボール買ってもらったっけ....)
部屋から出てリビングに足を運ぶ。
リビングにはキッチンで洗い物をしているお母さんの姿があった。素早い手つきで山積みの量の洗い物を片付けていく。
「あらかえちゃんどうしたの?
あ、もしかして喉が渇いた?ごめんなさい配慮が届かなくてオレンジジュースすぐに用意するわね」
手が濡れたびちゃびちゃのまま上の棚に手を伸ばし冷蔵庫からジュースを取り出しコポコポ
と音をたてながら注ぐ。
「あ、ありがとうお母さんもらうね!でも、そうじゃなくてお母さんともっとお話したいなぁと思って来たんだよ?笑」
少し顔を斜めに傾けて笑う
「まぁ!!やっぱり私の息子は天使様だわぁー!」
「ねぇ僕と同じくらいの子ってこの近くにいる?」
「そうねぇ私もここに来たのは最近だからわからないけど安心してねどんな獣が来ようと
私がかえちゃんを守って見せるから!!!」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど暴力はダメだからね!!」
あとそんな理由で聞いたわけじゃないし仲良くなりたいって理由だし!!
お酒みたくジュースを少し飲みテーブルに置きまた少し飲むを繰り返しちびちび飲みながら
談笑をする。
「ねぇ、かえちゃん」少し経ったあとだった。
「んー?どうしたのー?」
テーブルに顔を横に伏せながら
横の空っぽのコップから滴り落ちる雫を見つめ低音のこもった声で返事をした。
「捺希が学校から帰ってくる前に少し話があるのだけどいいかしら?」
皿を洗う手をやめタオルで拭きながらこちらに向かっていき椅子に向かい合わせになるように座る。
さっきまで息子に対してデレデレしている様子とは裏腹に真剣な眼差しで向いている。
悪いことをしたのではないかとシャッキっと体勢を立て直したが少しばかり萎縮してしまう。
「うんいいよ」
「実はね入院中の時は言えなかったのだけど捺希が見舞いに来なかったのはノイローゼ気味になっているからなの。」
「え....?どうしてなの?」
単に忙しくて来れなかったのではない?僕が原因?それとも何か...
「それはね 捺希はかえちゃんがあの時の最初の発見者だったからよ。まだ精神が安定していない年頃だったからかなりショックを起こしてしまってね混乱してしまったそうなの」
「.........」そうだったのか...
前の僕が自殺を図ろうとオーバードーズをした時助かったのは捺希が
見つけてくれたからだったのか。
「私が駆けつけた時には病院の待合室で憔悴しきっていてあとで救急車の方に聞いたら
途切れ途切れの言葉を紡いでその状況を教えてくれたらしいのよでも、焦りと不安で
救助隊の指示通りに応急処置が出来なくてそれがずっと引っかかってるらしいのよ」
お母さんのないとも言えない顔を見ていると霞んでなみだめな目の奥に望んでいるものが見えてるみたいな感覚に囚われる。
「わかったお兄ちゃんはもう大丈夫ってとこを見せないとだね」僕はお兄ちゃんを遂行する!!
暫く経ったあと玄関が開く音が聞こえる
急いで駆けつける。正直言ってさほど計画があるわけじゃないただ本心で伝えたいことを伝えるだけそれだけでいいと思った。肝心なのは
行動で示すこと。
「おかえり捺希」『ガゴゴタゴタボタ』
その瞬間手に持っていた荷物が崩れ落ちる。
「....ッッ!!!!お、お兄さん.....???ほ、ほんどに生ぎでいる..ノ....?」
黒と白の綺麗なグラデーションの髪はボサボサで目のハイライトは消え生気がなくふらふらとしている
「ごめんなざい....私のせいで兄さんが兄さんが...」
くしゃくしゃになった顔でうわ言のように言葉を漏らす。
現実世界では妹を持ったことないからどうすればいいのかわからないがこれは多分
兄貴としてこうすればいいと思う。『ギュッ』
「ふぇっ...///!!」力強く抱きしめた
「ごめんな捺希...!!心配させてしまってごめんなこれからはずっと一緒だよ」
「兄さん...!今捺希って...!!私のこと嫌いじゃないの...?」
涙目になる捺希の背中をさすりながら
「そんなことないよ大好きだよ」
それからしばらく捺希は泣き続けた今までの
愛情を再確認するように安堵したような表情でずっと抱きしめていた。途中から私もー!とお母さんも便乗して三人で暫くの間
ぎゅっとしていた。
〜閑話休題〜
「あ、ああ、あちよっと着替えてきます」
我に返り今の現状を把握したのか顔を真っ赤にしてダッシュに近い速さで自室に入ってしまった。
「これで良かったのかな...てっお母さん抱きつきすぎだよー」
「ふふんっ!私はまだ満足してないんだもんもうちょっとだけ...」
ありがとうかえで...さすが我が子ね..とぎこちない手で頭をなでなでしながら小さな声で囁いた。
戻ってきた捺希とお母さんは料理の配膳をした
まだ顔が少し赤いが大丈夫だと思う。
恥ずかしいのか目線をチラッと合わせるとすぐに逸らしてしまうなんと言うか妹を持ったことのない自分からしたら新鮮な気分だ。
あ、もちろん僕一人が王様みたいに何もしないのは違うと思って僕も配膳を手伝いたいと言ったんだけど男がやるなんて絶対にダメ!!とすごい剣幕で言われたので今度勝手にやろうと思います。
数分後にはテーブルいっぱいに色とりどりの豪華な料理が並べられた。
「さぁ!全てを出し切った後はエネルギー補給!!二人ともたくさん食べてね!」
そう言った瞬間に一気に捺希の顔が赤くなる。
お母さん...言い方もうちょっとあったんじゃない?
料理はどれもすっっごい絶品だった。
この人家事・料理・人柄どれをとっても文句なしの腕前を持つオールラウンダーのような人だ。
めちゃくちゃモテたんだろうなお母さん...そういや僕や捺希が生まれたってことは
お父さんもいるってことだよな...?生物的に考えればそうだ。
まぁでもご飯の時に話す話でもないしまた
今度かな。
(かなり昔は男女比率は同じだから料理文化はそこまで味や見た目の変化はなく炒飯は炒飯
焼き鳥は焼き鳥だったかな)
無我夢中で次から次へと口の中に放り込んだ。
「ねぇ二人ともちょっといい?」
料理も全体の半分くらいなくなったらへんで勝負を仕掛ける。
母・妹「どうしたの?{かえちゃん・兄さん}」
「実は志望校が決まったんだよねー」
「もう?!!慌てないで決めてもいいのよ?」
二人の手が止まりこちらを向く
「別に慌てて決めたわけじゃないよ?ここの高校が自分の雰囲気に合っていて
運命を感じたと言うかその憧れちゃったんだよね」
少しの静寂の後お母さんが口を開く。
「そう・・わかったわ私はモンスターペアレントじゃないしかえちゃんの意思を尊重するわ
...いざとなったら私も高校生に変装して...ボソボソ」
「私もです...!!!同じ高校行けるといいな...ボソボソ」
(最後らへんは二人とも聞こえなかったが多分
一人は阻止するべきって僕の脳が叫んでる)
やっぱりこの二人はいつも温かい。幸せホルモンが〜とかハードルが〜とか
考えなくてもこの人たちなら理解してくれたんだろうな...
「二人ともありがとう!!あ、その高校の名前はね葵川って言うとこだよー」
母・妹「「「あ、そこは却下(です・よ)」」」
万事休す2ターン目により僕の死が確定しちゃってるんだけど....??
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